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「主人公だけど傍観者で、脇役ですけど?」を読んで下さっている方、……お気に入り登録をして下さっている方、本当にありがとうこざいます。
『不思議な人……』
と、彼は兄様に対して、そう言った。
でも、俺は春馬くんのその言葉に対して、何故?と聞くことが出来ない。
聞きたいのに、言葉が喉を突っ掛かるような感覚に襲われ、俺は春馬くんに、その事を問うことが出来なかった、……まるで、自分は何かを思い出すことを無意識的に恐れているような気がした。
俺は何に対して恐れているんだ……? と、疑問を持ちながらも、春馬くんの手のひらを力強く握り、彼に対して笑みを浮かべながら、俺は彼に言い聞かせるようにこう言った。
「騎里くん? そろそろ、パーティーが始まる時間だけど……、僕が案内するね」
と、ニコニコと嬉しそうな笑顔を見せながら、俺の手を引くので、まるで息子に向ける生温かい視線を向けながら、俺は春馬くんの歩くペースに合わせ、歩き出す。
本当、自分の息子がいたら……、こんな気持ちになっていたのかなと考えていると、ゾワッと背後から、自分へ向けられた殺意を感じ取った。
俺は勢い良く振り返ると、背後には誰もいなくて、不思議と心から安堵した。
…………どうして、こんなに安堵するんだろうと、俺はそう思った。
どうして、こんなに悲しい気持ちになるんだろうって不思議に思う。
そう言えば、何で俺は死んだんだ……?
理由がわからない。
理由が全く思い出せない、……それはまるで最初から無かった記憶のように、俺が死んだ原因が何故か思い出すことが出来ない。
思い出そうとすると、額から冷や汗が止まらず、脚の震えが止まらない。
駄目だ、……思い出せないことは諦めるしかない、無理して思い出そうとしても、……精神的にダメージがくるだけだから。
本当、前世のことを思い出すと、……藤和や兄さんに会いたくなってくる。
◇◆◇◆
パーティー会場に着くと、俺の真っ青な顔をしていることに気が付いた兄様は、俺の元に駆け寄り、俺の頭を優しく撫でた。
兄様は優しい声で、
「騎里……、大丈夫か? ……顔色が真っ青だ。無理しなくて良いんだぞ?」
そう言うと、俺は、
「……大丈夫です。人がたくさん居て、酔ってしまっただけですから……」
と、張りついたような笑みを浮かべながら、兄様の問いにそう答えた後、俺は春馬くんの手を兄様の手に握らせて、こう言う。
「春馬くんを頼みます、人に酔ってしまったので、一人にして頂けると……」
有難いのですが……と、言おうとした瞬間、俺の身体は風に纏われ、風に導かれるように、自分の意志を関係なしに何処かへと俺は運ばれる。
「は!? へ?!」
と、戸惑いのあまりに、俺は言葉にならない声を発しながら、風に抗わずに飛んでいると、ニッコリと笑う男の子が現れ……。
風は男の子の方に導くように俺を運び……、見知らぬ男の子は俺を包み込むように抱き止め、優しい柔らかな声でこう言う。
「いると思ってた。……会いたかった。会いたかったよ、……星和」
見ず知らずの男の子は俺の前世での名前を、抱きしめながらそう言った。
顔も、声も違うはずなのに……、俺は涙が止まらなくなってしまう。
そして、
「藤和……!!」
と、俺は彼だと確信し、彼を抱きしめ返し、前世の幼馴染みの名前を呼んだ。