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腰まで伸びた髪。
雪白のような色の髪。
俺は生きている、大切な人の記憶を持って俺には片翼の羽根が生えている。
「目覚めたかい、少年よ。君はまだ“器”には魂を入れていないんだ。……後ろを振り返らずに聞いてくれるかい」
俺は声を出さず、了承のサインを出す。
……何故かはわからないけど、彼に俺の声を聴かせてはいけないような気がしたから、俺は首を縦に振る事にした。
彼は笑う、所謂苦笑いと言う笑い方で。
彼は言う、
「吃驚した? それが君の魂の姿。人として生きている時の身体は所詮、器でしかない。……だけど“本質”の顔が見られれば、君の存在は消える。まあ、消えない場合もあるけど。
君の“兄様”のようにね、存在は消えてもその世界に繋がっていられる“絆”があれば、意識だけは永遠に生き続ける例外もあるんだけどさ。……彼の場合は罪と償い」
そんな言葉に俺は唖然としていた。
何故、それを俺に話すのか理解出来なかったから、それを甘んじて聞く事しか俺には出来ない。……もし俺が“声”を出したら、何かに縛られるような気がしてならないから。
だから、俺は聞く事しかしない。……相づちさえも俺はうたない事にした。
一部を拒否して相手に期待させるくらいなら、全てを拒否してしまおう。
と、そう俺は考えた。
すると彼は笑う、俺は笑っている意味がわからない。今度は苦笑いじゃなくて可笑しそうに声を上げて笑った後、彼は笑いすぎてひきつったような声でこう言った。
「“兄様”の今を聞いても声を出さないか……なかなか頑固者だな、君は。
君の魂は「傍観者」で、同時に「死を悟る者」でもあり、君は「幻覚耐性者」で「幻覚使い」でもある。だから、君は僕も元へと魂が導かれた」
彼はそう言葉にした。
そして彼は言う、
「やっと会えたね、僕の後継者。……新たな住人の出迎えは、その住人の魂が与えられている「役職」の上司が出迎えるのがルール。……また会おう、今度は器の姿でね」
彼のそんな言葉を聞いた瞬間に、俺の意識は途絶えていくのを感じた。
彼は最後に、
「僕達の役職は「運命」を傍観し、惑わされる事なく「役職」へと導く事。
君の与えられた人生は確かに偽りが多かったけど、全てを否定する事が僕には間違っていると思えた。……それが君の“運命”だと判断した、残酷な判断だろうけどね。
それほど君らは世界に影響力が強すぎた、……最後の人生では良い意味でね」
と、彼がそう言ったのを聞き終えた後、俺の意識は完全に途絶えた。
◇◆◇◆
「なかなかの曲者だな、あの二人。俺達とは背負っていた重さとはまた違った感じだな。……アイツらは俺らとは違う」
「僕達は“核”となった記憶が思い出せた、けど彼らは消されてしまったせいで思い出す事は出来ない。……だからかな、記憶ではなくてお互いに依存し合っているのは。
彼らの力は強くなる、きっと。……だから僕らにあげられる全ての知識を、術を彼に与える。……それが彼らの幸せに繋がる事に、必然な事であると僕は思っているから」
そう誰かが会話する。
そんな会話をしているだなんて、“彼”らが知るのは随分と先の話であるのは、また別の話。




