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エピローグ編1

 天使はとある部屋に向かって歩いていた、魔王に与えられた最後の命令を果たすために。彼はその部屋へと着くと、コンコンッとドアをノックし、住人の反応を待っていた。

 数分間の間、その部屋の前で待っていると恐る恐ると言った様子でその住民はドアを開き、天使の顔を見た瞬間に安堵の表情を浮かべながら、彼を部屋の中に招き入れた。

 そう、その部屋の住民とは……秋和のもう一人の兄である鷹宏である。

「何かご用ですか?」

 と、そう言う鷹宏の声は少しだけ枯れており、良く目を凝らすと目の下が赤く腫れている。……彼は恩恵のおかげか聴覚、視覚、嗅覚に異常に優れている人物だ。

 天使がわざわざ鷹宏に告げる事をしなくとも、騎里と秋和が亡くなった事に彼は気付いていて、和彦から離れる事の出来ない鷹宏はここで一人、涙を流していたのだろう。

 わざわざ、止めを差す必要もないと判断した天使は、単刀直入でこう言う。

「和彦さんは長年、元魔王の魔力を浴びてきたせいで半永久的に生きてしまうと、元魔王はおっしゃっていました。

そして、元魔王である暁さんの代わりに魔王の称号を継ぐ事になるだろうと。

……彼はこうおっしゃっていました、和彦さんには自分のようにはなっては欲しくないと、和彦さんは被害者なんだと。

元魔王の話によると、全てを終わらせた時に和彦さんは目を覚ますとおっしゃっていました。……だから、俺は貴方に選択肢を与えに来ました」

 と、天使はそう言葉にした後、深い深呼吸をして自分を落ち着かせてから、真剣な表情をして淡々とした口調でこう言った。


「和彦さんと共に、“番人”として生きるか。……それとも、和彦さんの側から離れ、普通に幸せな家庭を築き、人として死ぬか」

 と、天使はそう言った後、一呼吸置いて、先程の会話を続けるかのように、相変わらずの淡々とした口調でこう言う。

「……どちらかの人生を選んで頂けます。どちらを選ぶかは貴方の意思次第ですので、どちらを選んで頂いても構いません。

それに俺は鷹宏さんがどんな選択肢を選んでも止めるつもりもありませんし、責めません。ですが、選択肢は一度しか選べません。……なので、後悔しない選択肢を選んで下さいね」

 まるでシナリオを読んでいるかのような喋り方をする天使に、鷹宏は苦笑いを溢した後、直ぐに真剣な表情をして数秒間の間考えるような素振りを見せ、ニッコリと笑いながら彼はこう言った。

「……騎里と秋和にもう会えないのは残念ですが、僕には和彦を放っとく事が出来ません。……元魔王の方の暁にはもう会えないかもしれませんが、彼を見守って居たいんです」

 と、鷹宏はそう言葉にした。そんな彼に対して天使は慈愛の籠った微笑みを浮かべ、優しく柔らかい声でこう言う。

「元魔王もその言葉を聞き、喜びを感じつつも、複雑な心情を抱いていると思いますよ。……そんな元魔王からの贈り物です、受け取ってあげて下さい。お守りのようですから」

 そう天使は言葉にすると、真っ白な羽根を一枚残して一瞬で消えた。

 瞬きする暇も与えないくらいの一瞬の出来事で、驚きのあまり鷹宏は目を限界まで見開き、呆然とした様子で渡されたお守りを握りしめていた。

 そんな鷹宏の手に握られているお守りは、不思議な色合いをした宝石を使われている月と星をモチーフにした、……和彦とチェーンだけが色違いのネックレスだった。


 我に返った鷹宏は不思議な色合いをしている宝石を見て、クスリと微笑んだ後、

「不器用なんだから」

 と、鷹宏はそう言っていたのだった。



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