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 馬車の手入れが終わり、馬車に乗り込んだと同時に俺は再び眠気に襲われる、……俺は“何でこんなにも眠くなるんだろう?”と考えながらも、その眠気に逆らう事は出来なかった。


 俺は懐かしい夢を見た、……藤和が側にいて、俺の顔を見て微笑む、そんな夢を。


 俺が望んでいること。

 それが今日の夢で表現されているような気がした、……藤和の笑顔をもう一度だけて良いから、藤和の隣で見たい……、それが今の俺の願いの一つである。


「藤和……」

 と、俺は寝言で呟いているとは知らずに、俺は眠り続けていた。

 そんな俺の寝言に、

「すまない、……お前を、――を俺は守ることが出来なくて。……必ず、今度こそは“お前ら”を守ってみせるからな……」

 と、悲しそうな、決意した声で彼はそう言った後、その言葉の続きを彼は耳をすまさないと、聞こえないような小さな声でこう言った。

「今度こそは、“お前ら”を守るから」

 と、俺に対して兄様が謝り、今度こそは守ると言う決意表明をしていたことを、眠りについていた俺は知るはずもなかった。


◇◆◇◆


 目が覚めると二人は眠っていて、兄様は俺に寄りかかるように眠りについていた。

 俺はそんな兄様の頬に、涙が伝ったような跡が残っていることに気付き、そんな兄様の姿を見て、何故か俺は胸が苦しくなった。

 俺は何故、胸が苦しくなったのか、俺には理由はわかるはずもなく……。


『今度こそ守って見せるからな……』


 王都に向かう前に言っていた、決意したあの声が俺の耳から離れない。

 ……今、思えば、兄様のあの声は七歳の子供が意図も簡単に出せるような声じゃない、……本当に固い決意をした人の声だったと、冷静になった今は、俺はそう思う。


 もしかして、兄様の前世は藤和じゃないのか? と、俺はそう思っていた時期も一時期も確かにあったけども、……今では自信満々にこう言える。

 もし、兄様が藤和だったら……、転生してから直ぐに「藤和!」と、周りの目を気にせずに、藤和の名前を俺は呼んでしまうことを、わかりきっているから。


 だから……、兄様は“藤和”じゃない。


 幼馴染みの藤和とは自分のこと以上に、お互いの事を良く知っていると俺は思っている。彼とはお互いに信頼し合っていた、……自分が家族の中で一番に信頼している兄さんと、同等に自信満々にそう言える程くらいに。


 そんな俺の兄は、自分の事を多くは語らない人だったけど、俺を大切にしてくれている事はわかっていたし、……俺の憧れの人でもあった。

 責任感があって、何でも完璧にこなして、弟の俺にも凄く優しくて、いつも俺を守っていてくれたって、…………あれ?

 ……意外と兄様と“兄さん”って共通点があるかもしれないな……。

 まさか、な……。兄さんのブラコンは兄様以上に酷くはなかった、とは言い切れない俺が心の中の何処かにいるんだよ、……兄さんは何時でも俺と藤和には優しかったから。


 兄さんは両親には反抗をしていたが、俺だけには優しくしてくれた。

 実は兄さんは高校では最強を誇り、色々な高校の不良をまとめる“番長”だったんだ、……しかも成績も常に学年トップ。

 だけど、通り名が『ブラコン番長』。


 兄さんは基本寛大な心の持ち主で、殴り掛かられ、自己防衛をするための時くらいにしか暴力を振るったりはしない。

 そんな兄さんの唯一の怒りの沸点が“弟である俺と弟分である藤和に何かした時”だけ。


 両親に基本的に俺の面倒を見させない彼は、何処に行くにも俺らを連れて行った結果が、通り名『ブラコン番長』である。

 だから、不良は俺らを見かける度に頭を下げられ、まるでボディーガードのように護衛されながら、自宅に帰ったのも、今では良い思い出だ。

 今、思えば、何故俺に護衛なんて必要なのかと疑問に思うのだが、当時は純粋な小学生だったため、仲の良いお兄ちゃんと一緒に帰っているくらいの認識しかなかったのだ。


 今、思うと俺の周りには特殊な人間ばかりだったなと、考えながら、苦笑いをした。

 もしかしたら、俺も自分自身が気付いていないだけで、周りからは特殊な人間に見られていたのかも知れないな……。

 と、考えているうちに、宿泊する宿についたのか、馬車は動きが停止した。


◇◆◇◆


 俺は誰よりも早く馬車の外へと飛び出ると、思わず呆然としてしまいそうな城が俺の目の前に建ってて、俺は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。


 そんな俺に兄様は、

「……騎里、あれが王城だ。大きいだろう? 今日は俺達は王城に泊まって、明日の王族の主催のパーティーに備えるんだぞ」

 と、柔らかく優しい口調で、俺の頭を撫でながら、そう兄様は言った。


 そんな兄様の言葉に、

「はい!!」

 と、元気良く返事をし、兄様と手を繋ぎながら、父様の後をついて行くのだった。



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