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 今回の話は、とある傍観者?さんの視点となっております、最後に少し主人公視点に戻ります。

 あーうん、一応は一條騎里の視界に入っている者です、今のところは傍観者Aと名乗っておこうか。

 後々関係していくらしーんだけど、自己紹介ってことで今回の話の前半は傍観者A視点で申し訳無いけど勘弁してくれ。

 騎里視点が良かったって? ……そんなわかりきったこと言うなよ、流石の俺でも傷つくから。

 俺の正体も後々わかると思うから、今は傍観者Aとして扱ってくれると嬉しいんだが、……「友愛学園」のシナリオだとさ、俺はそこそこのこの物語の主要人物を乗っ取りをしている訳だから、そう言う訳にもいかないんだよね〜。


 脳内ではふざけてるけど、外面だけはちゃんとした人として演技をしてるよ、“演技”をしている時点で駄目じゃないかって?

 うーん、君には言ったはずだったと思うけど……、俺はただの“人間”じゃないし、君も身体を乗っ取られた訳だから早々に気付いていた訳でしょ?

 あっごめんね。今さ、乗っ取りした身体の本人の魂と話してたんだー、乗っ取りをしているのは彼からも同意を受けているし、何にも問題なしなんだよ!


 いつもふざけてるのに、他人の振りをして過ごすのはきつくないかって? ……君は優しいねー、同意を受けているとは言え、君は俺に自分の身体を乗っ取られているんだよ?

 ……え?

 今は俺の話じゃなく、お前の話をしているんだ、そんなことを気にしてんじゃねーよ、阿呆って?

 君は言葉使いが荒いなー、……でも俺はそんな君が友人として嫌いじゃないけど、まさか俺が人間の友人が出来るなんて思ってもいなかったよ。

 ……どんなに人間に嫌われようと魔王様のためなら構わないって思っていたけど、最近は君だけには嫌われることは嫌だなって思い始めたんだ。

 だからさ、真面目に答えるから……、これから先も君だけは俺のこと嫌いになんてならないでね?

 人に対する嫌悪感が無くなったな、だって? ……無くなった訳じゃないよ、君と魔王様の大切にする人だけが特別、その他なんて嫌悪感は抱かなくなったけど、別に興味は沸いたりなんてしない。


 それだけで進歩だよって? ……君は本当に優しいね。だからかな、君の振りをしていることがさ、辛いなんて感じたことなんて一度も無いんだよね。

 ……でもさ、俺は自分自身の感情だけは鈍感なはずなのにね、何故か“魔王”様が苦しむところだけは凄く辛く感じるんだ、俺。

 でもね、最近は魔王様も一人で悲しいことをためこむことが全く無くなって、辛くて顔を歪めるような表情をしても、“彼”が側に居てくれてるようになってからは、直ぐに魔王様の表情が晴れやかになる。

 だからさ、“彼”の存在は凄く有り難いんだ。……魔王様ってば、“彼”と出会ってから“彼”の前だけだけど、弱みを見せるようになったんだ。何百年も前と比べてさ……。

 俺はさ、魔王様の気持ちがわからないから寄り添って悩むことは出来ないから、“彼”みたいな存在が魔王様にできて凄く嬉しいんだ。

 魔王様が一人で苦しむところを見たく無い訳からね、今は“彼”と言う存在のお陰かな、……そんなことは少なくなったけど。

 だからさ、魔王様のために気紛れな俺がかなり真剣で悩んじゃっていた訳なのよ、お分かり?


 ん? ……魔王様が違う自分じゃない誰かの側に居るのは平気なのかって?

 そうだなぁ~、魔王様の側に俺以外の誰かが居ること、自分が一人の頃は少しだけだけど、流石の俺も良い気分じゃなかったけど、……今は君が俺の側に居てくれるから平気。


 そうそう、君にはまだ話してなかったよね。魔王様にとってさ、俺は凄く扱い難い人材なんだと思う。

 ……君は俺の喋っていることを毎日聞いている訳だから、少しだけは気付いていただろうけどさ。

 でもさ、魔王様は慈悲深い方だからそんな俺にも、苦笑いをしながらもキチンと接してくれる訳、……そんな魔王様を俺がお手伝いを全力でしない訳無いでしょ?

 自分でもさ、かなりの変人だってわかってるからさ、周りの人から見捨てられても何にも文句が言えない訳よ、……だって自分でもかなりの変人だよね俺って思ちゃってるからさ。

 魔王様みたいな人は、凄く貴重な訳。

 結局は自分のために行動している訳だけど、……ここまで今回尽くして魔王様の指示に従っている訳だから、……魔王様も許してくれるよね、苦笑いを浮かべながら。

 多分その事をわかってて、俺を今回の作戦に協力させてくれているんだと思う、……魔王様は。

 前にね、ある人に言われたんだー、「自分より下にいる立場の人に従うなんて、お前トチ狂った?」って聞かれたことがあるんだ、失礼しちゃうよね!


 俺はね、立場が上とか下とか関係ないと思うんだー、従いたいから従った、でもその人は自分よりも立場が下だった、……だったら“その方”を最高に輝かせるために、俺が“その方”の輝きを引き出せば良い……、それだけのこと。

 それが俺が誰かの輝きを引き出したいって思えたのが……、俺の今の主である“魔王様”だった訳。

 そんな魔王様が長年側にしつこいくらいに居続けた“俺”の思惑に気付かない訳が無いでしょー、今じゃ俺は“魔王様”には敵わない訳だし、……俺はもう魔王様以外には従わないって決めたから。

 でも、この身体の持ち主である君とは今後とも仲良くしていきたいなーは思ってるよ、凄く。

 魔王様みたいには無償で力を貸してあげたりなんかは、本当はそうしてあげたいんだけど、魔王様の契約上の関係でそれが出来ないんだよね、その事だけは初めて魔王様と契約したことを後悔したかな?

 ギブアンドテイクだったら君に力を貸すことを許されているんだけどさ、後々考えればそれもまた良いかなって思ったんだよね。

 お前、何を企んでやがるんだ? ロクなこと考えてねーだろって?

 君はたまに俺を酷い扱いをするよね、……でも基本的には優しいから嫌いになれない訳だけど。

 だってさ、何かそう言う関係ってさ、君と俺は親友関係が証明出来る訳で、それが凄く嬉しかった。

 ただそれだけだよ。


 あっ、照れてる?

 隠す必要なんて無いじゃないか、……君も嬉しいって思ってくれているんだよね、それなのに茶化したりする訳無いじゃないか!


「バッ、バカ! 刹那(せつな)、いきなり意識交代なんかすんじゃねーよ、……いつもはずっと《表》に出たがるクセに!

ほんと、寮に戻ると何で意識交代させてくれるのかねー、意味わっかんねぇ」

 と、俺の親友は荒い口調でそう言う。

秘密(ハート)

 そう俺達はそんな会話を毎日、寮に帰ってきたら日課のようにする。

 彼は俺にその事を問い詰めるのは諦めたようだ、形式的にそんな会話を飽きずに言ってくれている。

 彼はきっと、俺がそんな他愛のない会話に喜びを感じていることを、わかってやってくれているのだと思う。


 そんな不器用な優しさに包み込んでくれる君の魂の隣に寄り添って眠ると、安心して眠りにつけるだなんて言える訳がない。


 君は俺の親友。

 俺は君の身体を借りる者、……そして君のちょっと変わった親友。


 ねぇ? 親友?

 君のお陰で少しだけ、一人だった時の寂しいって感情がわかるようになってきたんだよね、有難う。

 どんな忠誠を誓った相手でも運命自体を変えることが出来ないんだ。でもね、俺一つだけ出来ることを見つけたんだー。

 全部、君のお陰でね?


 俺が人間の中で、自分の意志で守りたいと願うのはこれからも、この先ずっと君だけだよ、親友。

 どうでも良い相手にさ、俺が自分の名前を教えたりすると思ってるの、親友。


「普段はふざけてるけど、お前が妙なところでは律儀なことくらい知ってんよ」


 ……俺も。

 言葉使いは荒いけど、君は不器用なだけで本当は優しい奴だってことくらい、俺も知っているよ?


◇◆◇◆


 中等科三日目。

 何か、視点乗っ取りをされたよーな気がするのは、俺の気のせいかな?



 別視点になるのはこの話だと、両手で数えられるぐらいだと思います。

 基本的には主人公視点です。

 今後の展開に重要な人物なので、傍観者Aこと刹那くんの視点で中等科9話目を書きました。

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