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 中等科三日目、実力テストが行われた。……ここは秋和から聞いていた極秘恋愛ルート通りだなと考えながら、俺は解答を書く手を止めることはなかった。

 四時間ぶっ通しでテストだったから、俺はもうヘロヘロだったと思う。

 何で自分のことなのに、不確定な言い方をするのかって? ……それはね、目の前で秋和と久夜様による言葉の攻防戦が行われているからだよ、いくら止めたって久夜様を構う秋和を俺は止めることが出来なかったから、思わず現実逃避をしていたんだ。

 ほらほら、食堂でいつものじゃれあいと言う、喧嘩と言うより攻防戦を繰り広げていたら、俺達は傍観者であることを望んでいるはずなのに目立っちゃってるでしょ〜?

 ……現実逃避もしたくなるのはおかしくないよね、周りの人からの視線が凄く痛いんだもの……。

 諦めた俺を除いて唯一、彼らの攻防戦を一生懸命に止めようとしているのは春馬くんだけだよ、……彼は本当に健気でいい子なんだよ、本当に。

 だからね、そろそろ春馬くんも怒っていいと思うのは、俺だけだろうか?

 俺だけではないことを祈っとくよ。

 だって彼らの攻防戦を止められるのは、兄様しかいないんだもの。


 そんなことを考えていると、俺が噂をしたことを勘づいたのか、良いタイミングで兄様が現れた。

「また懲りずに仲良く喧嘩をやっているのか、アイツらは。しょうがない奴らだな、全く……」

 と、兄様は口許を緩ませながらそう言って現れたが、絶対に秋和達のことを“しょうがない奴ら”なんて思ってはいないだろう。

 きっとアイツらは本当に見ていて微笑ましいな……くらいにしか考えていないだろうなと考えながらも、俺はその事を敢えて言葉にすることはなかった。

 兄様が俺や秋和、春馬くんや久夜様を弟のように思ってくれていることは言わなくても皆、気付いていることだと思うから。

 だから、敢えてこれから起こることを止めたりなんかしないんだよ?


 兄様はだらしなく緩ませた口元を引き締め、真面目な表情をした後に攻防戦をする彼らの元へと気配を消して近付いて行き……。

 スパコーンと言う良い音が鳴り響きそうなくらいに勢い良く、動きが素早く隙が無さすぎて何処から取り出したのかわからない“ハリセン”のような物で、純粋でとてもいい子な春馬くんを困らせる彼らの頭を一発ずつ叩いた。

「痛ぇよ、暁さん!」

「何をするか、暁。お前じゃなかったら不敬罪だったぞ! ……まあ。俺らが今回は騒ぎ過ぎてしまったのがいけなかったかもしれないが……、“ハリセン”で叩くのはあんまりだろう!!」

 と、若干久夜様に反省のような言葉が聞こえたものの、……二人からは兄様に対する抗議の言葉の方が多いような気がした。

 が、俺がツッコミを入れたい所は兄様に対する抗議ではない。……彼らが抗議する理由は、ただ兄様に構って欲しいだけな事は、“兄様以外”の周囲の生徒は多分、何となくは気付いているのだろうと思う。


 だけどね、久夜様!

 王族にハリセンで叩いて、兄様が不敬罪にならないのはどんなルールか教えて頂きたい、……そして春馬くんすらも疑問を抱いていない様子なのは何故?

 久夜様ルールなの?!

 おかしいと思うのは俺だけなのかな?!

 と、困惑しながら、そう考えていると秋和は満面の笑みで俺に近付いてきて、俺の方に手を置いた。

 そして秋和は、

「何なんだろーな、アイツの訳のわからないあのルール。……兄様は不敬罪にならないとか、あれだけは俺にも理解出来ねー」

 と、彼は俺の心を読んだかのように、俺の戸惑いについて同意してくれた。


 後々、久夜様に兄様が“ハリセン”で叩いても不敬罪にならない理由を聞いてみると久夜様は、

「まるで弟のように接してくれたんだ、……今更の話だろう? 騎里」

 と、言っていた。

 そんな優しい言葉に俺は思わず久夜様に抱きつくと、彼は俺を微笑ましそうな笑顔で見つめながら、俺の頭を優しい手付きで撫でてくれたのだった。



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