7
確かに恋愛イベントは起きたハズだったと、秋和は今まで聞いたことの無いくらいに声が震えていて、とても動揺をしているようだった。
一方、兄様はそのことさえも想定内だと言わんばかりに落ち着いていた。
性格自体は彼らは多分変わっていないと良い切れるだろうが……、隠れヒロインが現れたと言うのにイベントが“シナリオ”通りにならないと言うことは、この世界が“友愛学園”のパラレルワールドだからと言う説が一番可能性があるからだろうか?
“アクマ”と言う存在は俺達をどうしたかったのか、俺にはわからない。
純粋に俺達に生きていて欲しかったのか、……それとも気まぐれなのか。
もしかすると、……誰かの復讐の為?
あの女の子が“アクマ”と言ったその人は、誰の味方なのだろうか?
俺達の味方か、……それともあの女の子の味方なのかな……?
……でも。……どうしてだろうか?
彼女が言った“アクマ”と言う存在を、俺は誰だか“知っていた”ような気がする。……“アクマ”が誰だか正体を俺は知っていたハズなのに、今は誰が“アクマ”と彼女がよんでいたのか、俺にはわからないままでいた。
何か、見落としているような気がする。
重要な何かを、女の子が言っていた言葉から聞き逃しているような気がしてならないんだ……。
彼女の狂気ばかりに気を取られていて、その時の俺は重要なヒントを聞き流していたかもしれない。
◇◆◇◆
その後の授業をぼんやりと過ごし、俺は秋和と共に学生寮へと帰った。
その帰り道も俺はずっと、まるで蟻地獄に埋もれていくかのように、“アクマ”のことについて俺は考えていた。
俺は根拠のないけど、何でか確信していた……、あの女の子が言っていた“アクマ”と言う存在が、このことに関わっていると。
だが、考えても考えても真実はわからない、……まるで“記憶”と言う糸が何本も何本も絡まっているような感覚が俺の頭に過ってきた。
思い出そうとすればする程に“記憶”と言う糸は、他のたくさんの“記憶”と絡まっていくかのように、俺が求めている真実には辿り着かせてはくれない。
ねぇ? “アクマ”?
君は一体誰なの?
俺はどうしても君を忘れてはいけないような気がするのは何故かな?
ねぇ? “アクマ”?
俺は君が敵のようには思えないんだ。
君のことを思い出せないのにおかしいかな? ……でも俺さ、この勘だけは絶対に俺だけは信じていなければならないような気がするんだ。
なあ、“アクマ”?
君を忘れたくないと。何故かな、心の何処かで望んでいる俺がいる。
その“俺”は、本当は俺ではないような気がしてならないのは、俺のおかしな勘違いなのかな……?




