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 俺は秋和に謝った後も疲れている振りをしていると、白衣を着た教師が俺達に近付いて来て、

「お怪我はありませんか? 二人とも」

 と、教師は言う。そんな教師の言葉に俺は黙りし、秋和は無表情で淡々とした口調でこう言った。

「見てわかるでしょう? 怪我している訳ないじゃないですか、……騎里の場合は疲れている振りをしているだけですし、俺達のことは気にせずに他の生徒を治療されては如何ですか」

 秋和のそんな言葉に俺は無表情のまま、何も喋らずに教師を見つめていた。

 そんな俺らに教師は苦笑いをしたまま、

「僕、何か君達に嫌われるようなことを致しましたか? 異様に態度が冷たいのですが……」

 と、そう教師は言葉にした。……その後、教師の目は若干涙目になっていたのは気にしないでおこう。

 ほんと、『友愛学園』のイケメン達は残念な人が多いなぁ〜……と少しだけ思ったのは、俺だけの秘密にしておくとしよう。


 だが、どうしよう。

 ショボくれているこの教師が、どんどん主人に怒られたワンコに見えてくるんですけど……、これは幻覚ですよね!!!

 惑わされちゃ駄目だ、俺!!!

 俺は犬より猫派であるハズだ……。

 ここでこの教師を撫で回してしまえば……、俺達の傍観ライフ計画が台無しになってしまう!!

 と、俺が悶々と考えていると、そんな俺を見かねた秋和がこう言った。

「……安心して下さい、嫌っている訳ではありませんので、今は俺達に構っているよりも他の生徒を治療して下さいと俺達は言いたいのです」

 そう秋和は言葉にして俺の手首を掴んだ後、まるで引きずるように秋和は足早に歩き始めた。

 この方向にあるのは食堂か……、何時もなら弁当で済ますんだけど、秋和が食堂に向かうと言うことは多分、誰かの攻略イベントが始まるのか……。


◇◆◇◆


 食堂に向かっている途中、秋和は小さな声で早口で彼はこう言った。

湯川夏見(ゆかわなつみ)、養護教諭の先生にして、元々は騎士団の隊長格だったと言う設定だ。

性格はヘタレで、ワンコタイプのイケメンなのだが、騎士団に所属していた時には鬼教官と言われる程、戦いになると性格が変わると言う設定だったと思う」

 と、そう言葉にした後に秋和は、

「傍観者を願うお前にとっては一番強敵になる相手だ、あんまり関わるなよ」

 そう彼は言う。

 やはり、内心に思っていたことをばれていたかと考えながらも、取りあえずはコクコクと縦に頷いておく俺に、秋和は引きつったような笑みを浮かべる。


 やっべー、結構撫でたくなっていたのが秋和にバレちゃっているよー!

 春馬くんとか、湯川先生のような性格の人と親しくなりたくなっちゃうんだよねー、幸い春馬くんは攻略対象じゃなかったから、秋和はあんまり咎めるようなことを俺に言われなかったけど、湯川先生と仲良くなってしまえば隠れヒロインと遭遇する確率が増えてしまう。

 まあ。秋和も、久夜様と仲良く?は良いんだけどさ、彼の場合は久夜様の方が秋和のことを苦手意識を持っているし、俺達と関わってきた影響のせいか、俺様ではあるものの、ゲーム程に俺様な性格ではなくなっている。

 それにゲームでの彼と、今の久夜様は全然違う。……だから、彼は隠れヒロインに攻略をされる訳がないと俺は信じている。


 そんなことを考えていると、秋和が今思い出したようにこう言った。

「ちなみに久夜様の最初の攻略イベントは終わったみたいだが……、久夜様は全然気にしてないみたいだぞ。……本来の攻略イベントでは隠れヒロインが失礼なことを言って、怒鳴り散らすんだけどさ。

久夜様さ、営業スマイルで「そうか、すまなかったな。以後気を付けよう」と言って、怒った様子一つも見せなかった。……俺が構うと面白いくらいに怒るのにな、不思議だよな〜」

 と、そんな秋和の言葉に俺は安堵した後、彼を見つめたまま、こう考えていた。


 それはですね、貴方が一番の久夜様のライバルだからなのもあるし、自分よりも三枚くらい上手な秋和に負けたくないと思っているからだと思うよ?

 と、考えながらも俺は言葉にすることはなかった、……久夜様は多分、絶対に秋和に敵うことはないと俺はわかっているからだ。

 秋和はこれでも俺と同じく中身はオッサンだからな……、たった十二〜三年しか生きていない子供に言葉で負けるハズがない。


「久夜様も不憫だな」

 と、俺はそう呟く。

 表上は仲が悪くても、本当は秋和の能力を認めているのに、彼は人の心情の変化には敏感でも、自分に対して抱かれている感情に関してだけは鈍感だから。

 言葉にしなくちゃ伝わらないことくらい、俺が一番良くわかっている。

 そんな俺の呟きに、

「え? どうしてだ?」

 と、首を傾げながら、不思議そうな表情をしながら秋和はそう言った。

 そんな秋和の様子に俺はクスリッと小さな声で笑った後に、俺はこう言う。


「秋和はわからなくて良い話だよ〜」


 と、そう言葉にした後、俺は彼の歩くペースに合わせながら、食堂へと向かうのであった。



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