2
俺と秋和は同時に、数秒で後ろへと振り返られるように足を踏み変え、とある窓の方向に俺達は視線を向ける。
俺はアイツの気配に八年前のあの記憶が鮮明に、脳内に映像として流れ込んでくる、……そんな記憶に俺の古傷にグリグリと抉られるような痛みが走った。
次々と血が流れるあの感覚、あの女の子の狂ったような声に、表情。
……そんな彼女に対して抱く恐怖心に、自分の心が壊れそうになる心情。
欠落した前世の記憶を思い出そうとした時の、あのトンカチで思いっきり殴られたような頭痛……、あの時感じた全てが鮮明に思い出す。
俺は恐怖を通り超して、自分がどんな感情を抱いているのか訳がわからなくなり、パニックを起こしかけていた。
「あっ、あき……、秋和ッッッ……」
そんな俺は秋和にすがり付くように、彼に助けを求めるために秋和の名前を呼ぶと、彼は俺を安心させるためか一瞬だけニコリと微笑んだ後、真剣な表情へと戻り、こう言った。
「すまない、騎里」
と、そんな秋和の言葉に俺は絶望しかけたその瞬間、俺のうなじに彼は手刀をし、俺は意識が飛んだ。
俺が気絶する直前、
「……すまない。こうすることしか思い付かなかったんだ、許してくれ」
彼は俺にそう言った。
◇◆◇◆
重たい瞼をゆっくりと開けるとそこには、俺の手を両手で優しく包み込むように手を握り、その手に額をくっつけている秋和の姿があった。
ここは何処だろう?
と、俺は考えながら目だけを左右に動かし、この場所について観察をする。
棚には必要最低限の薬品に、病院にあるようなベッドがあると言うことは、ここは保健室か。
確か、フラッシュバックの症状が出て……、パニックを起こしかけた俺を秋和が気絶させたんだよな。
先程の八年前の事件の記憶がフラッシュバックした恐怖心が抜けきらないせいか、若干心臓が活発に動いているのを感じながら、俺は彼の名前を呼んだ。
「…………秋和」
と、俺は彼の名前を呼ぶと秋和はゆっくりと顔を上げ、俺を心配そうに見つめ、俺の手を強く握った。
そんな秋和の手のひらに俺は安心したのか、徐々にゆっくりと鼓動の早さが通常通りに戻っていくのを感じながら、秋和の手のひらを強く握り返す。
秋和には言葉はいらないと信じてる。
俺が伝えたいことを彼は少しの動作で気付いてくれると、知っているから。
と、俺は考えながら、視線だけを彼の方向へと向けると秋和は安心したような表情を浮かべていた。




