表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/45

12

幼少期編終了です。

今回の話はヤンデレが出てきます。

残酷描写があります。



 夜になり、五人で見回りをしていると何時になく、邪悪な気配がした。

 そんな気配に兄様は顔色を変えて、

「早く逃げろ!騎里、秋和!鷹宏も早く逃げるんだ、屋敷へ早く!」

 俺はそんな兄様の叫び声に咄嗟に、屋敷の方へと全速力で走り出したと同時に、俺は腹部に激痛が走り、うずくまった。

 俺は血が身体の外へと流れているせいか、心臓が早く血を作り出そうとしているのか、心臓が壊れそうと思ってしまうくらいに鼓動が早くなる。

 俺は次第に体に力が入らなくなり、腹部を庇うように倒れ込んだ後、闇夜の空をぼんやりとした視界で眺めていると、脳内に誰かの声が響き渡る。


【パパぁ、これで邪魔者はイ・ナ・ク・ナ・ッ・タ・ネ。これでパパは……、ボ・ク・ダ・ケ・ノ・モ・ノ・だよね?】


 と、可愛らしい笑顔を見せながら女の子は、……血塗れの顔を此方の方へと向いて、死んだ魚のような目でこう言った。


【アレェ~、まだパパの近くにお邪魔虫がいるね、パパはボクのなのに。

また、あの悪魔がボクのケイカクを邪魔したんだね。大丈夫だよ、パパぁ。ボクがね、もう少ししたらムカエニイッテアゲルカラ】


 俺は脳内に響き渡る声に思わず、胃液が逆流しかけたのを感じた。

 この女の子は俺のことをパパだと言った。……だけど、何で娘なのに覚えていない? あの悪魔って誰のことなんだ?

 と、考えた瞬間、トンカチで頭を殴られるような頭痛がし、俺は体をガタガタと震えるのを止められなくなってしまった。




 思い出したくない。




 思イ出シタクナイ。




 オモイダシタクナイ!




 と、俺の思考が、彼女を拒否する。

 腹部の痛みよりも、彼女への対する恐怖が俺の脳内では勝っていた。


「兄様! 助けて!」

 俺は必死にそう叫んだ後、……掠れたような声で声が枯れるくらいに、

「たっ、助けてぇえッ! 兄様ぁあッ!」

 俺は叫ぶ、……誰かに助けを求めて。




【ネェ? ドウシテ? ドウシテ、ボクを頼ッテクレナイノ……?】




 やめろ……、




【ネェ? ドウシテ?】




 やめてくれ……、




【ドウシテ、ボクじゃなくてアイツらばかりを頼ッテイルノ……?】




 やめてッッ!!




【ド・ウ・シ・テ?】




 やめろォオオッッ!




 プツンッ!!

 と、音を立てて俺の意識は遠退いていった、……彼女の笑い声を聞きながら。



【アヒャヒャヒャハハハッッッッ!!】




◇◆◇◆


「はぁはぁはぁ……。夢、か……」


 ガタンッと音がベッドから鳴るくらいに、俺は勢い良く飛び起きた。

 パジャマは汗が搾れそうなくらいに、俺は冷や汗を掻いていて。

 自分でもわかるくらいに頭から血が下がるような感覚に陥った。

 …………………………きっと俺の顔色は真っ青を通り超して、真っ白になっているだろうと自分でもわかるくらいに。

 思い出したくもない夢を見た、見回りの時に刺された、あの時の夢を。

 …………あの事件が起きてから、あれからもう八年も経ってしまった。

 この傷を見るたびに、俺は彼女の狂った声を、表情を鮮明に思い出してしまう。

 この傷が癒えて直ぐ、自分の顔が写るような物は全てを殴って壊して回ってた。

 自分の手がガラスの破片で怪我する痛みよりも、彼女への恐怖心の方が勝っていたから、その時は不思議と痛みを感じることすらも出来なかった。


 自分の顔があの女の子と重なったように見えて…………、狂ったように歪んだような表情を浮かべているように見えて、当時は自分の顔が怖くて怖くて堪らなかった。


 今でも鏡は見れない。


 ズキッと一瞬、古傷が痛んだような気がして思わず傷口を押さえた後、俺は窓から見える満月を、ベッドに座りながら眺めていると、起こしてしまったのか秋和が俺の隣に座り、俺をまるで包み込むように横から抱きしめた。

 あともう少しで中等科に入学だと言うのに、秋和や兄様に頼ってばかりで申し訳ないと考えながら、俺は秋和の温かさに溢れる涙が止まらなかった。





初等科を飛ばし、次は中等科編です。

中等科編の後半辺りから、ダークファンタジーになっていくと思います。

よろしくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ