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少し書き直しをしました。

 最低限の馬車の整備点検をするための休憩を挟みながら、行きの時よりも速いペースで馬車は屋敷へと向かって行く。

 俺は周りの景色を見ながらも、長時間の間座っている状態が続いていたせいか、馬車が揺れるたびにお尻に痛みが走る。

 俺がその痛みと格闘していた、その一時間後に一条家の領地内へと入った。


 一条家の領地は広い。だから、領地内に入ったとしても、一条家の屋敷へと到着するまでは一時間半は確実に掛かる。

 あと一時間半も馬車に、乗らなきゃいけないのかと考えながら、俺は若干涙目になりつつ、レンガ造りの店や家が多い街並みを、俺は馬車の窓からしばらく眺めた後、眠気に誘われるまま、目を閉じた。


◇◆◇◆


 俺は誰かに運ばれたのか、自室のベッドに横になっていた。俺は目を覚ましたと同時に俺の専属執事である青陵(せいりょう)に、声を掛けられる。

「お早うございます、騎里殿。昨日はお疲れのようでしたから、失礼ながら騎里殿の自室へと私が移動させて頂きました」

 と、青陵の言葉に俺はニッコリと微笑みながら、上半身をベットから起き上がらせ、お茶の準備をする彼にこう言った。

「お早う。ありがとうね、青陵。俺をベッドに運んどいてくれて、助かったよ。」

 そうお礼を言うと、

「それが私の仕事ですから、貴方をサポートし、貴方の力となるのが……、騎里殿な執事であり、契約をする“精霊”の役目ですから。……ですが、私は一条家の守護神のような存在です、離れた場所からでも力を貸すことは出来ても、騎里殿のお近くでサポートが出来ないことが何よりも、悔しい限りでございます」

 と、青陵は淡々とした口調で俺にそう言うと、お茶を用意し終わった後、彼はすかさず俺に着替えを差し出した。


 そんな青陵の言葉に、俺はそんなに気に病むことはないのに……と考えつつも、それを言葉に出すことはなかった。

 青陵は精霊の中でも、主人に対して忠誠心が強い方の精霊らしい。

 そんな彼に、俺はそんなことを言えるはずもなく、俺は彼の手から今日の着替えを受け取り、素早く着替え、青陵の淹れたお茶を少しずつ飲む。

 久しぶりの青陵の淹れたお茶だぁ〜……と考えながら、ほっこりとした気分になりつつ、いつの間にか側に用意してある本を手に取り、のんびりとした時間を過ごした。


 俺は一時間ほど、途中からは軽食を摂りつつ過ごした後、俺は科学武器を手に裏庭へと早足で向かい、鍛練を開始する。

 時より青陵の力を借りながら戦う練習をしつつ、三時間ほど鍛練を続けていると、やっと兄様達が姿を現し、鍛練をする俺の姿に苦笑した。


「相変わらず早起きだな、騎里。今日は何時間くらい先に鍛練をしていた?」

 と、俺は兄様に聞かれ、満面の笑みで、

「三時間ほど前からだと思いますが?」

 そう俺が答えると、兄様は更に困ったような笑みを深め、こう言った。

「鍛練を重ねるのは良いが、無理は禁物だぞ。怪我をしては大変だからな」

 と、そんな兄様の言葉に俺はこう言う。

「無理はしているつもりはありませんが、父様と鍛練を一度一緒にしてしまうと、何時間続けて体を動かさないと気が済まなくて、適度な運動に済ませるつもりですから安心して下さいね、兄様」

 そう兄様に俺は言う。


 そんな俺の言葉に、

「三時間ぶっ通しの運動は、適度な運動とは言えないと思うのだが、お前の体力だとそれもそうだな。夢中になりすぎるなよ?」

 と、兄様は俺にそう言って裏庭の奥の方へと、足早に去って行った。


 そんな兄様の姿が見えなくなるまで、彼の向かった方向を眺めていると、後ろから俺は誰かに自分の肩を叩かれた。

 俺は後ろへと振り返ると、そこには爽やかに笑う秋和と、穏やかで柔らかい笑みを浮かべている鷹宏さんの姿があった。

 そんな二人の笑みにつられるように微笑むと、秋和はこう言った。


「流石は騎里と言ったところか、……鍛練を始めて三時間経った今でも、余裕の笑みを浮かべられるとは恐るべし、一條兄弟」

 と、構うような口調で秋和にそう言われると、俺は拗ねたようにこう言う。


「……恐るべし、と言う言葉は秋和だけには言われたくないよ。春馬くんに久夜様と同等の“完璧”で、久夜様よりも上手だと言われた秋和だけにはね」

 と、そう言うと彼は、

「そんなツレないこと言うなよー、騎里」

 そう言って、秋和は俺に抱きついた。

 そんな俺の様子を、まるで子を見守る母親のような優しく柔らかな笑顔を浮かべながら見つめた後、兄様が向かった方向へと歩いて行ってしまった。


 そんな鷹宏さんの背中を見守りながら、

「本当に仲が良いよね、鷹宏さんと兄様」

 と、秋和に話しかけると、彼は、

「ん、そうだな。鷹兄上は暁さんのことを信頼しきってるからな〜。……それに鷹兄上にとって、一條家は過ごしやすい空間みたいだ、悪霊もほぼ居ないし、外に出ていても過ごしやすいって鷹兄上、凄く喜んでたよ」

 嬉々とした声でそう俺に話す、……そんな秋和の言葉に俺はこう言った。

「多分、一條家の領地内には悪霊はほぼいないんじゃないかな? 悪霊の気配を感じれば、実戦経験の場数を増やすために即座に俺達が退治しているからだと思うよ、実戦経験を積むために一條家では毎日見回りしてるんだよ、領地内を」

 と、そんな俺の言葉に、秋和は苦笑いをした後、呆れたようにこう言う。


「お前が戦闘狂になるところなんぞ、俺は見たかねーぞ? つか、なるなよ」

 と、俺は秋和に釘をさされ、俺は拗ねたような声で彼にこう言った。


「なるわけないじゃん、戦闘狂なのは兄様と父様だけだよ。俺が毎日鍛練をして、見回りに参加しているのは体が鈍ると言うのもあるし、精霊遣いの力は使いこなしづらいから。……だから安心して、俺は戦闘狂になった訳ではないから」

 そんな言葉を俺は言うと秋和はあからさまに安堵の表情を浮かべた後、

「……今のうちに言っておくけど、その見回りに俺達も参加させて貰うからな、特に鷹兄上の力は役に立つと思うから。

それに鷹兄上も、今回は自分の意志で見回りについて行くって決めたみたいだからさ。だったら、俺も見回りについて行こうかなーって思って。

それから言っておくけど、鷹兄上は普段はオドオドしているけど、本当は凄い人なんだぜ。……数学だけの能力だったら俺よりも高いし、家事全般も得意なんだぞ?」

 と、秋和は俺にそう言う。


 秋和が凄いと言う、鷹宏さんが見回りでどんな活躍をしてくれるか、今から楽しみになってきた俺なのでした!!


 だが、俺はまだ知らない。

 俺は見回りの時、鷹宏さんの活躍が見える程にそんな余裕がない事態が起こるとは知らずに、俺はのん気に鼻歌を歌いながら、科学武器で素振りをしていたのだった。



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