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2.もう勝手にヤッてろ

 月明かりの下で『うほっ! ガチムチだらけのボディービル大会』。――これぞ、オレが求めていたものに間違いない。

 ザザァと、オレは露天風呂から立ち上がった。


「きゃああああ」


 その途端、黄色い悲鳴がいくつも重なる。

 エリリンはボヨヨンとその豊満すぎる胸を揺らし、シスター・リサは鼻から口から、穴という穴から赤い液体をまきちらしながら吹っ飛ぶ。

 水の中に首元までつかったミストローゼ(服は着用。)は両手で顔を覆っているが、しっかりと指の間からこっちを凝視しているし、シオンはため息をつきながらフイと明後日の方に顔を向けた。


 一糸まとわぬオレの姿が、月光のもとあらわになったとしても、そんな些細なことはどうでもいい。

 華麗でビューティフルな筋肉を持ち合わせたマッチョな兄貴たちが、サイドチェストやアドミナブル・アンド・サイのポージングをしながらオレを待っている。

 見上げれば、今日は絶好の月夜。ぐずぐずしては、いられない。

 いても立ってもいられなくなったオレは、移動のための魔法をすぐさま発動させた。



   ◇  ◇



 チート能力つかって、意気揚々と西のプロテイン王国にある秘密の薔薇園にきたものの。

 オレは目の前の光景に、呆然となっていた。


「何もない、だと……!?」


 咲き乱れる薔薇の楽園はどこだっ!? オレの求める筋肉はっ!?

 オレの運命の兄貴は、どこにいるんだぁあああああっ!?


「勇者様~、なんかここに立て札があるよ~」


 オレがだだっぴろい草原の真ん中で頭を抱えながらうずくまっていると、エリリンの明るい声が耳をうつ。

 顔を上げると、オレの2メートルほど先にこれみよがしに立てられた茶色の立て札。その周りに、女たちが興味津々と群がっていた。


「これは、妖精フェアリー言語ね。なになに? ――『放送コードにひっかかるような内容になってきたため、自主規制することにします。長らくのご視聴、ありがとうございました』だそうよ」


 なにぃ……!?


「どこが……、どこが放送コードにひっかかるって言うんだ!?」

「とりあえず服を着た方がいいと思うよ、アベル」

「シオン」


 ガシャン。放り投げられたのは、オレの装備一式。

 そういえば、さっきのところに置き去りにしてきたんだったな。すっかり忘れていた。


「ちょっとエリリンさん、あなた勇者様の裸をジロジロと見すぎじゃございません? はしたないですわよ」

「ええ~っ! エリリンよりもミストローゼさんの方がぁ」

「フフ、知るということに限界はないのよ」


 女たち三人が騒ぎたてながら、いつしか掌から気功破を出したりバズーカや魔法をぶっ放し始める。相変わらず、うるさい連中だ。

 それに比べて、こいつの物静かなことといったら。オレは、隣に並ぶシオンにチラと視線を向けた。


 シオンのことは、別に嫌いじゃない。気がきくし、いつでもオレを影でサポートしてくれる。なんだかんだで、この世界に召喚されてからもずっとオレに付き合ってくれているしな。

 はあ、とため息をつきながら、シオンに手を伸ばす。

 こいつがなあ……、もっと筋肉ムキムキのマッチョだったら、オレも――。


 ムニュ。


 ……ムニュ?

 指先に当たった感触に、オレは首をひねった。

 おかしい。確かにそれほど強調するものはないが、普通の男だったら、この部分はもっとまったいらで、そこそこの硬い筋肉が――。


 ムニュ、ムニュ、ムニュ。


「や、やだ、ちょっと……! だめっ、らめぇええええええ」

「って、おまえも女だったのかぁあああああ――!!」


 女だったのかぁ、女だったのかぁ、かぁ――……。

 オレの悲痛に満ちた絶叫が、その場一帯になぜかエコーつきで響き渡った。



 勇者阿部ルの冒険はまだまだ続く。そう、理想の兄貴を求めて更に更に続く! ――かもしれない。

 いやもう、強制的に終わります。てか、終了させてください。うん、無理ゲー無理ゲー。

 そんなわけで――、お疲れ様でしたッ! <完>

そんなわけで、完結です。迷走しまくりで、どうもすみませんでした。

結局何が書きたかったのか、今でもよくわかっていません。勢いって怖いですね。

次回作は、スタートダッシュを間違えないようにしたいと思います。

お付き合いくださり、本当にありがとうございました。

では、また。


byりんか@筋肉はそこそこでいい細マッチョ好き

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