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神の頬に触れるような気持ち  年代記第七章  作者: ヌメリウス ネギディウス


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ライフェン再訪 3

 やはり銅像のまわりが商売をするには一等地のようだ。まわりの民家も軒先を貸していたり、そのまま自らの農作物などを売っていたりするようだ。さっきとった宿屋も年間通して客が来るわけではないようでロックタイト島と同じく一階が改装されて食事ができる小さな酒場のようになっていた。夜は町の連中の溜まり場にでもなっているのだろう。

 商館はどの町には必ずあって、ギルドが古物の取引の管理をしている。ギルドは商工業者の間で作られた組合のようなもので、ギルドが発行する古物認可書を持っていないと商売することはできない。自由に取り引きできなくすることで互いの利益を守るための自治的な団体だ。一般人が市で露店を出すのは場所代を払えば可能だが、ギルド内で行われる競売(オークション)交換(トレード)、プロのみの市に参加するときは許可証が必要となる。

 商館の入り口は二階にあり、階段を登る。商館の中は広く、そして薄暗い。大理石の床に足音がよく響いた。古物取引のカウンターは端にあり爺さんが居眠りをしていた。私が近づくと気配を察したのか目を覚ました。

「起こして悪いがいくつか聞きたいことがあるんだが」

 爺さんは場長で暇を持て余していたらしく獲物が来たとばかりに満面の笑みで迎えた。

「さぁさぁそこに座りなさい」

 そう言って椅子を用意する。私は名乗り挨拶をすませるとさっそく本題に入った。

「古い本を探してるんだが、この町にはあるかな? ジャンルは問わないんだが」

 私は聞いた。

「本? この町に本屋はないな。この町の連中は本なんて読まないからね。図書館が北の門のところにあったんだがな、今は閉館しちまったよ。正確に言うと廃館か」

 かつての図書館は今は誰も管理していないらしい。

「本は全て運び出されて塔の上が見張り台になっているからね、そいつらの待機場所になっているよ。誰も図書館があったことさえ覚えちゃいないだろうな。たしか閉館した際に全て地下の蔵書庫に詰め込んだと思うが傷んだものは捨ててしまったがな。そのままだから蔵書庫に大量に本が残っているはずだ。そこの本ならいくらでも持って行ってもらっていい。ちょっとは減って片付いたら逆に皆には喜ばれるだろうね。まぁ期待に沿えるものはまずないと思うけどな」

 場長は立ち上がって確かあったはずだ、と呟きながら背後の棚をかきまわした。あった、あった、と大きな鍵を取り出す。無くしようがないほど大きな鍵だ。この町の鍵はどこのものも大きい。

「これが蔵書庫の鍵だ」

 と言いながら渡してくれた。

 それからは町の話をきいた。場長はいくらでも教えてくれた。私は必要なことはメモを取った。

「本なんか探して町のことを知りたいだなんて郷土史でも書くのかい? 偉い学者さんかね?」

 私は頭振った。

「ただの買い出し人だよ。歩荷もやってるからそのためさ」

 私はそう言ったが、場長の中では私は学者と決めつけて話は聞いていないようだ。いつか私の旅をまとめて出版できればそれはどんなに素晴らしいことかとは思うけれど。場長は自分の話ができればそれで満足らしくこちらにあまり興味はないようだった。詮索され根掘り葉掘り聞かれるよりはずっと良い。その後ひとしきり場長の波瀾万丈の人生を語られたのを話半分で聞き流す。英雄譚並みに誇張されていたので苦笑しそうになるのを我慢するのに苦労した。

「あ、この商館の奥の中庭の倉庫にガラクタがあるからあんたが探しているような物があるかもしれん。好きに見てくれていいぞ」

 場長の話を切り上げ、蔵書庫へ向かおうと立ちあがるとそう言われた。これは期待できるかもしれない。思わず笑みが浮かぶ。

「あ、あとレイディ家の人を探しているんですが、ご存知ですか?」

「レイディ家?」

 場長はしばらく考え込んでいる。

「町はずれの墓守りの家のばあさんか、レイディ家なんて気取って言うからわからなかったよ。町の北西の墓地を管理している家だよ。最近はあまり顔を見せないね。今はばあさん一人だから気にはかけているんだけどね。あんたは親族か何かかい?」

「いや、届け物があるんで…」

 場長は納得した顔で何度もうなずいた。

「そこのキャラバンのファノ兄弟のところに昔からよく来ていたように思うよ。ばあさん、一人息子が王都に行ってからはかなり元気がなくなってしまってね、まぁその後もいろいろあってね、こちらからもよろしく頼むよ」

 場長は良かった良かったと再びうなずいた。

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