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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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僕は魔法少女になった 4

「行こう。もう一人の魔法少女の元へ」

 決心した私はラボを後にする。どうせ研究は今夜には結果は出ない。その分明日頑張れば良い。そんな風に考えると不思議と心が軽くなる。なんでだろう?


 他にも残業している人がいるはずなのに今のところ幸か不幸か誰ともすれ違っていない。むしろすれ違った時のどうしようかなんて思いでがワクワクが止まらない。

 幾つかのセキュリティに魔法を使ってみる。といっても自分のことが全然分からないからアニメ的な感じでステッキで触れてみると簡単に解除されてゆく。


 私は普段は立ち入り禁止になっている『極東製薬株式会社』の屋上へと出て、使っているところを見たことのないヘリポートの真ん中に立った。


 南風がほんのり頬を翳める程度に吹いている。心地いい。

 

 これから夜空を飛ぶ。魔法を使って。


 誰もが体験したい夢を私は魔法で成し得ようとしている。自分の中に忘れていた童心が騒ぎだす。大きく深呼吸をする。

「これでいいのかな?」

 私はステッキを両手に持って、空を飛びたいと強く強く思う、いや願う。


 うっすらと足元が光った。体が軽くなる。目線はどんどん高度を増していく。どんどん、どんどん高くなってゆく。なんだか航空写真を独り占めしているみたい。


「う、浮いてる。飛んでる。やったよ私。ジーア、見てる?」

 返事はない。けど見ていてくれているような感じがする。見守られいる。


 さて、これからは?

 一体どっちの方角に魔法少女がいるのだろうか。三百六十度意識を集中してみる。

「どこ?どこにいるの?答えて」私は強く念じてみる。テレパシーってこういう感じなのかな?


 割とすぐに返事が返ってくる。


「もしかして、わたくしと同じ魔法少女ですか?」

 大人びた落ち着いた声が聞こえる。


「き、聞こえた。あの、初めまして。私、今なったばっかりなの。よろしくお願いします」

「あなたが。そう、新人さんね。聞いてますわ。わたくしはグロー。あなたは?」

「私はジーア。」

「ジーアね。よろしくお願いしますね」

 こんな風に会話ができるのだって魔法少女になったから。ますます興奮してしまう。


「今どこにいるの?会いに行けって言われてるんだ」

「わたくしなら新宿御苑です」

「御苑ね。近いからすぐ合流できると思う」

「そう。なら早くね。最後のトドメには間に合うかしら」

「最後のトドメ?」

「そう。わたくしの目の前には今まさに敗北を期そうとしているドリーチェがいますの」

 きた!早速のドリーチェ。聞いただけだと何のことか分からない。これは確かめないとね。

「わかった。すぐだから。待っててお願い」


 私は方向を新宿御苑に定める。今は浮いているのがやっとだよ。

 この感覚って初めて自転車に乗ったみたい。補助輪なんてないから落っこちさえしなければ大丈夫だよね。

 用心しながら気持ちを行きたい方に向けてみると体は意思のままに進めることが出来た。意外と簡単かも。しかしまだ楽しんでいる余裕はない。だが補助輪状態はクリアした。段階を引き上げよう。今度は出来るだけ速く飛ぶことに集中する。ギアを1から3くらいに引き上げてみる。うん、いい調子。もうちょっと慣れたらもっとギアを上げられる。

 私って上手いじゃん。なんか自信出てきた。


 そう言えばドリーチェって何だろう。戦う相手ってことしかジーアは教えてくれなかった。さっきは自分も詳しく聞かなかったしそんな余裕はなかった。まあ、グローに会えば分かるか。


 新宿御苑になんとか到着。時間にして10分もかかっていない。

 ここは元々夜は閉園するから園内に外灯なんてものは一切ない。上空から見ると真っ黒な森しか見えない。池に反射する高層ビルの灯りだけが頼りになる。それくらい暗いのだ。都内ではなかなかお目にかかれない光景である。

 集中して目を凝らしてようやく何やら蠢くものが確認できたし、近くでは薄らと青い光に包まれている魔法少女らしき姿も見えた。

 あれがドリーチェ?暗くてよく分からない。もっと近寄ってみる。そして重大なことに気がついた。

 

 降りる時ってどうやるの?未経験の私は自転車のブレーキを思い浮かべる。

「ゆっくり・・・そうそう・・・ゆっくり」 

 地面に向かって順調に降りているつもりだった。暗いせいもあったのだろう。


 ドーン!


「きゃん!」

 距離感がいまいち取れなくて思いっきり顔から地面に突っ込んでしまう。その弾みで眼鏡が吹っ飛んだ。


「・・・いたた・・・あっ、め、眼鏡・・ど、どこ?眼鏡、眼鏡」

「驚かせないでくださる?・・・大丈夫?」

 その声って魔法少女・・・グローだっけ?

「驚かせてごめんなさい。あ、あの眼鏡探してください。あれがないと何にも見えないの。ないよ〜どこ?」

「あなた、魔法少女なのに近眼なの?」

「そうだけど・・・近眼と魔法少女は関係ないよ。それより・・・」 

「はいはい。眼鏡ね」

 グローはジーアの頭に手をやった。

「もっと落ち着いて探しなさい。ほら、頭に引っかかってる」

 ジーアは慌てて頭を触った。

「あ!あった。よかった。こんなとこにあった。ありがとう」

 ジーアはようやく眼鏡をかけることができた。

「よかった・・・・あっ、片方割れてる。うそ?この間新しくしたばっかりなのに」

「(クスクス)あなた面白いわね。思わず笑ってしまったわ。片方でも見えます?」

「・・・見える・・・それより心のショックの方がおおき・・・」

「ちょっと待って」

 グローはそう言うと急に振り返って

「ご希望通り、あなたが来るまでトドメを刺すのを待っていたのよ」

「あ、うん・・・トドメ・・・」

「いいこと。よく見てなさい。これがわたくし達の相手、ドリーチェよ」

「これが・・・ドリーチェ・・・」


 ジーアは片方しかないレンズを通してグローが指し示す方を見る。視界に飛び込んできたものにジーアは釘付けになる。

「な、何あれ?あれがドリーチェ?」

「そうよ。突然この世界に現れては暴れている。破壊が目的な野蛮な存在」

「破壊?」

「何のための破壊なのかわからない。ただ破壊するだけ。そんな意味のない行為はわたくし達魔法少女によって排除される。見てなさい」

 グローは両手を大きく広げて「はっ」と声を出す。どこからともなく沢山の水泡が集まってくる。その数というか量はドンドン増していき、更に小さな水泡はそれぞれが合わさって大きな水泡に変わる。

 グローが胸元にあるブローチに触ると体を包んでいた青い光が一層強くなる。水泡達は矢の形に変り更にカチコチに凍る。周りの気温が少し下がった。急激な気温差で眼鏡が薄らと曇る。ジーアは急いで指で曇りを取る。次に見えたのは沢山の氷の矢がドリーチェに向かって狙いを定めているところだった。

 グローは右手の人差し指をドーリーチェに向けて

「終わりです。Action!」

 ドリーチェに向かって一斉に飛んでいく。それもドリーチェの体から顔を覗かせている赤い物の一点に集中していた。


 ドカドカドーン!たくさんの水蒸気で目の前が翳んで大きな音が響く。


 水蒸気の煙の中からうめき声のような雄叫びのようなとても不快な音がして赤い物は粉々に砕け散った。


 パリーン!

 視界が晴れると同時にドリーチェは消えた。この場所が持つ本来の静粛が魔法少女達を包んでいた。

「終わり。ちゃんと見てましたか?」

 グローは振り返える。ジーアはあまりのことにキョトンとしていた。

「ジーア、起きてますか?」

 グローはジーアの目の前で手をヒラヒラと振ってみた。ジーアは我に返って

「・・・放心してた。あれがドリーチェ・・・あれなんなの?見たことないよあんなの。顔がお腹にあって足の先はタコみたいにニョロニョロしてて・・・頭から上はなくなってて分かんなかったけど、絶対不気味な姿をしているのよ。あんなのと戦っているわけ?」

「そうよ。わたくしも初めて見た時は同じこと思ったわ。でも慣れるのよ。ドリーチェってあんな姿ばっかりだから」

「そうなんだ・・・」

「姿はいつも違うけどドリーチェには違わない」

「ねえ、ドリーチェって何なの?」

 ジーアはじっと目を見つめた。グローの赤い瞳をじっと。

「ゔ!」(笑)

「?なんで笑ってるの?」

「・・・ご、ごめん・・なさい・・(クスクス)」

「??どうして笑ってるの??」

 グローは何とか笑いをこらえようと努力した。しかしジーアの顔を見ると笑いのツボが刺激された。後ろにクルッと向いてから喋り始めた。

「コホン・・・失礼しました。その・・・あなたの片方しかない眼鏡で迫られたら可笑しくって」

「私のせいじゃない。ひどい、そんなことで笑ってたの?」

「オホン。眼鏡、外してもらってもいいかしら」

「・・・わかった。何も見えなくなっちゃうけど笑われるよりマシ。はい。取ったわ。これで大丈夫でしょ?」

 グローは振り返えるとジーアのホッペを抓ってみた。グリグリ。

「いったぁい!急に何するのよ」

「どの位見えないか試したのよ。ほんと何も見えないみたいね」

「だからそう言った。それよりこの壊れた眼鏡、魔法で直せないの?」

「そうね。ドリーチェによって壊された物なら直せるけど、自分で壊した物って魔法では直せないの」

「え〜そうなの?魔法って言うから何でも出来ると思ってた。でも何で?」

「さあ?わたくしに聞かれても分からないわ。ジーア本人に聞いてみたらどうかしら?」

「本人に?」

「そう。わたくしが知ってることは魔法はドリーチェに対して有効ってこと。ドリーチェ相手なら魔法は成立する。興味本位での私利私欲のためには使えない」

「意外と不便。じゃあドリーチェがいないと私達は魔法が使えないってこと?」

「さあ?どうでしょう?さっきも言ったように」

「分かってる。ジーア本人に聞いてみるわ」

「そうしてもらえると助かるわ。わたくしも魔法少女になってまだ二週間しか経ってないのよ。わたくしだって知りたいことは山ほどあるの」

「そうなんだ。二週間・・・ねえ、グローの魔法ってどんなの?属性とか」

「ジーアこそ何ができるのですか?」

「じゃあ私から。私はこのステッキを使えばいろんな原子を集めることができるって聞いてる」

「原子?それって凄いのですか?わたくしの魔法属性は『水』っていってもただ単に水だけじゃなくて液体になる物質なら合成できる。あと、さっき見てたでしょ。凍らすことは出来る。けど沸騰させることは無理です」

「それって魔法で出すの?」

「ううん。何も無いところから出すことはできない。現物が必要。大気に含まれている水蒸気を集めて水を造ることなら出来るけど湿度に影響される」

「そっか。例えば私が水素と酸素を大量に集めれば水に変えることってできるの?」

「できると思います。なるほどそういうこと。理解しました。原子を集めるって凄いことできるんですね。わたくしはジーアの魔法で素材を集めてもらえばいいのですね」

 

 なるほど。ジーアが言ってたことって、こういうことだったんだ。理解した。


「複数の原子達を反応させることが私には出来ない。ジーアが言ってた。これからもっと魔法少女がこの世界に来るって。私に代わって化学反応させることが出来る仲間達が」

「他にも?魔法少女って何時の時代も一人しかいないって聞いてます。だからわたくしが選ばれた時、世界の平和を影から守るって決めていました。でもなんで今回に限って複数になるのかしら?」

「さあ?ジーアは何も言っていなかったわ」

「そう・・・これからね」

 これから・・・今は始まったばかり。この先にどんなことが待っているのだろう。

 ジーアは空を見上げる。星達はいつものように優しい光を地上に向けて瞬いていた。


お付き合いいただきありがとうございます。

長い長いと思っていたのに削ることができなくなりました。

今年もあと二ヶ月。

クリスマスも大晦日もお正月だって妄想を止めることは無理です。

次回もよろしくお願いします。

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