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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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僕は魔法少女になった 2

「どうかしら、味の方は?」

 彼女は笑みと一緒に聞いてきた。

「美味い。こんなの初めてだよ」

 僕は素直に思ったことを答えるとさらに笑顔になった。瞳のキラキラが増したようだ。


「これ魔法なの」

「魔法?」

 急にそんなこといわれてもピンとこない。夢みたいな話だと思う。

「あなたの心の望みを私が魔法で見せている。この場所は夢に近い。でも夢じゃない」

「心の中?これは全部ここにはないもの。それに夢のようで夢じゃない」

 言っててよく分からない。僕は夢を見ている、わけじゃなさそう。でも現実とは言えない。ならここはどこなのだろう?今出来ることは彼女の言葉を待つことだけだ。


「初めまして。私はジーア。魔法少女の一人よ」

「まほうしょうじょ?・・・あ、こちらこそ初めまして。神谷 仁です」

 反射的に名刺を出そうとしたが、あいにくポケットの中には何も入っていなかった。

「知ってる。私は仁って呼ぶ。仁はジーアって呼ぶ」

「僕はジーア。で、ジーアは仁」

「そうよ。その調子」

 ジーアと名乗る魔法少女は僕の前にステッキを出すとケーキもコーヒーも紅茶もなくなっていた。

 僕らは椅子にすら座っていない。お互い1メートルと離れず向かい合って立っている。ただ事態を呆然とみているしかない僕は差し出されたステッキを受け取った。引き寄せられるような気がしたからだ。

 ピンク色と黄色がソフトクリームミックスみたいに絡み合っている。先端は星の形のモチーフがある。


「ありがとう」

 僕を見上げるジーアの視線はさらにキラメキが増したみたいだ。あまりにも可愛らしくて思わず抱きしめたい衝動に駆られる。この歳でなんてことを思ってしまうんだ。僕は立派な大人だろ。そんなトキメク青春は遥か昔に失っている感情なんだ。

 葛藤している僕に構わすジーアが僕に抱きついてくる。いきなり過ぎて体が硬直する。おまけに心臓がバクバク音を立てるし体温が上昇していく。息すらまともに出来なくなる。こんな気持ち・・・中学生かよ。


「怖くないの?」

「・・・怖い?何に対して?」

 ジーアの顔は僕のお腹辺りに埋まっている。絶えず感じる吐息がくすぐったい。怖いなんて思わない。自分にもまだこんな気持ちが残っていたことに驚いている。自分が少年だった頃を思い出す。


「仁は私の依り代。私の代わりに私の力を使ってドリーチェと戦うのよ」

「依り代?ドリーチェ?戦う?」

 抱きしめている手の力が一瞬強まったと思ったらフッと軽くなる。また僕達の間には少しだけ距離が生まれた。ジーアは手を差し出す。僕も自然と手を差し出した。握手。

「よろしくね。世界はこうやって守られてきた」

「世界が?」

「そう、私達魔法少女によって。仁はその使命を引き継いだの。これは誰にも出来ることじゃない。私達魔法少女と波長の合った者だけ。この世界にはもうすでに魔法少女がいて彼女が戦っている。それもたった一人で」

「たった一人・・・。じゃあジーアは二人目」

 軽く頷く。ピンクの髪が揺れて、笑顔が消えて真剣な眼差しで僕を見る。

「あとからまだブリオングロードを通ってやってくる」

「ブリオングロード?」

「うん。この現実世界と私達の住んでいる世界アルガトネオルとを繋ぐ道」

「ジーアはその道を辿ってここまできたのかい?」

「そう。でも通れるのは意識と仁と私を繋ぐこのステッキだけ」

「よくわからないな。なんで意識だけなんだ?じゃあ今の君の体はその、なんだ、君の世界、ええと、アルガ・・・トネオル・・・にあるってことでいいのかな」

「その通りよ。私達の肉体はこの世界に来ることが出来ない」

「それって何で?」

「ここは現実の世界なの。魔法は存在しない世界なの。人々が魔法を信じていない世界だからなの。人々は心の中では魔法を信じるけど、それは自分の都合にだけなの。だから信じていないのも一緒。だけど、だから意識は通過できる」

「魔法を信じていない世界か。確かにね。僕も子供の頃は魔法とか神様とか信じていた。けど大人になるとそんなこと忘れてしまう。忘れてしまったことすら忘れてしまう。ジーアの言う通りかもしれない。でもステッキは?」

「これは依り代となった者との絆よ。これが私達の魔法を使って精一杯。それに魔法の存在を信じてもらえないといけないの」

「と、すると、このステッキをこんな風に振れば何でも魔法で出来るってこと?」

 僕は昔テレビアニメで見た記憶をたどって振ってみる。ジーアはにっこりと微笑んで

「まあ、そう簡単に何でもってわけにはいかないの。私達魔法少女だって属性というか、出来ることが限られているの。だから何人も存在する」

「属性?」

「そう。私の魔法はこのステッキを使って原子を集めることができる。あと仲間同士心の中で話すことも出来るし、空だって飛ぶことが出来る」

 僕はそれを聞いてステッキをよく見てみる。

 原子を集める?

 そのことで出来ることって一体何だろうと考えた。原子。物質全てはこの原子によって構成されているのは周知の事実である。しかし魔法と上手く繋げることが出来ない。そうジーアに言う。すると意外そうな顔で僕のことは覗き込んだ。

「仁、あなた確か科学者よね。そんなこともわからないの?あきれた」

「科学者っていうほど大げさじゃなくてただの研究員だよ。まあ理系には違いないけど」

「だったら分かるんじゃない?物質にはそれぞれ特性があるのよ」

「それは分かるよ。今時の小学生にだって分かる」

「利用するのよ。それを」

「利用?」

 ジーアは急に白衣を纏う。なんだか化学教師にでもなったみたいだ。これも魔法?それとも夢?

「だから、例えば生き物は酸素を吸って二酸化炭素を出すわね。酸素ってそれ以外にも火を燃やすことにも必要でしょ。他にもちょっと過激だけど、例えば固体のナトリウムを水と反応させたらどうなる?はい、神谷仁君」

 気がつくと僕自身学生服を着ている。こんなの何年、いや何十年振りに着たんだ?

 僕は知っていることをそのままに話す。

「どうって・・・普通に考えれば危険極まりない行為だよ。ナトリウムは水と無理矢理に反応して自身をナトリウム陽性分子になろうとして大量の水素を発生させる。更に自身の反応している時に出る熱によって水素に引火して大爆発してしまう・・・あ、そういうことか」

 僕の解答に納得したみたいで、うんうん、と頷いて

「正解。よくできました。わかってきたみたいね。あなたの知識は私の魔法に条件が合うの。わかった?」

 お互いまた元の姿に戻っていた。

 ジーアはまた僕の目を覗き込んだ。あんまり近いとドキドキしてしまう。


「じゃあ、こんなことも出来るのかい?例えば酸素と水素を反応させて水にするとか、あとは炭素とカルシウムで炭酸カルシウムにするとか」

 なんとなく思いつきで聞いてみる。ジーアは一歩下がって

「・・・無理なの。私には出来ないの。出来るのはあくまで単体の元素に限られている。他の元素同士を反応させることは出来ないの」

「・・そうなんだ。結構制限があるんだ。元素単体だけだと出来ることがかなり狭くなるな。今思いつくのは・・・さっきのナトリウム、それからアルミニウムあとは重水素とか・・・あ、窒素なんかも・・・うん、まだあるぞ、それから・・・・」

 思いつくことは出来るが、実際に魔法って考えたらやっぱりまだよくわからない。


「だから他に仲間がくる。彼女達の力を使えば他の元素同士だって反応させることが出来る」

 ジーアの言葉を僕は黙って聞いている。他の仲間?それから更に話を続ける。

「まだ半信半疑でしょうけど、私の力、甘く見ないでよね。考え方によってはとても危険なんだから」

「危険?」

「そうよ。この世界を構成している物を支配し操れるのよ。望めばウランだってプルトニウムだって手に入れられる」

「ウラン・・・確かに」

「でもそこまでの重金属を集めるには『魔法力』をたくさん使うことになるの」

「魔法力?」

「分かり易く言えば体力みたいなもの。使えば使うほど減っていく。でも安心して、時間が経てば体力と同じ様に回復する。けど限りがあるのも確かなの。それからもう一つ。私はあなたの体を通して私の力をこの現実世界で発揮する。けど体はあくまで、仁、あなたのもの。本来の私の体ではない。だから力をフルに発揮することはできない。せいぜい頑張って七割くらいがいいとこなの」

「七割・・・それがどれくらいのものかは分からない。けど君はこの世界に来ることはできない。だから仕方ないと言えば仕方ないということか」

 あれ?どっかで聞いた風だな。仕方ない・・・・ことなのか。

「僕にはまだ全然分からない。今が魔法で創り出された世界なのか、ただ夢を見ているのかだってわからないのに」

「期待してる」

 そんな視線。ずるいじゃないか。潤んだ瞳はなんて強力な武器なんだ。

「私を信じて。とにかく信じないと魔法は使えないの。仁ならできる。だって私と波長が合ったんだもん」

「まあ、選ばれたのは光栄とでも言ったほうが良いのかな?せっかく声をかけてくれてんだ」

「だったらOKってことでいいのね」

 僕はまだ了承していないのにジーアは満面の笑みだ。ま、楽しい夢を見ているってことだよな、絶対。

 本当に魔法が使えるなら一度くらい使っても面白そうだ思う。でもきっと目が覚めたら忘れてしまうんだろうな、そう思うとずいぶん気が楽になってきた。


 いいでしょう。闘いますとも。その、なんだ、ドリーチェ?って奴と。もちろんジーアの魔法を使って。

「こうなったら仕方ない。やってもいいよ。それがジーアの望みなら」

「ありがとう。やっと分かってくれたみたいね。さて、じゃあそろそろ行こっか」

「行くって?どこに?」

「先ずはこの世界から出ましょう。現実に帰るのよ」

「OK」

 やっぱり夢だったか。なら起きて仕事の続きをしないとな。

「それは分かったけど。どうやって帰るんだ?やっぱり魔法で、とか?」

「起きるのはこれが一番」

 ジーアはそう言うといきなり僕の頬に平手打ちをした。

 あの・・・星が目の前に舞っている・・・・・

辛抱強く長い文章を読んでいただきありがとうございます。

こんな調子で進めていく予定です。

次も根気強くお付き合い頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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