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初めまして魔法少女です 5

 いつもの日常が目の前にある。世界は相変わらず人々のペースで流れてゆく。

 ドリーチェの脅威がない世界。でも決して平和な世界だというわけでもない事実の世界。それでも魔法少女達の今夜の活躍は終わった。


「今日は終わった。帰ろう、みんな」

 大きく呼吸をしてからジーアがなんとなしに言う。それが口火を切ったのかみんなそれぞれ動き出す。

「あ〜なんか今日って最悪。魔法少女ってこんなんだっけ?帰って酒飲むわ、バーイ」

 ティーナは飛んで行ってしまう。やっぱり速さは魔法少女の中でピカイチだ。あっと言う間に見えなくなってしまった。

「わたくしも帰ります。少し頭を整理したいわ」

 ティーナの姿が完全に消えてからグローは飛んでゆく。その後ろ姿には本当に疲れているみたいにジーアの目には映っていた。

「あたしも。じゃあね」

 ミアンも行ってしまう。きっと帰ったら風呂だよね。そんなことを残された二人は思っていた。


 みんな無事に帰ったのを見てジーアはどこかホッとして

「ねえブーア。途中まで一緒に帰らない?」

「そう言うと思って待ってた。ジーアの話に付き合おうか」

「そうだったんだ。ありがとう。じゃ、私達も行こう」

 空には相変わらず鎌のような鋭い三日月が浮かんでいる。そのせいなのか、いつもより星がたくさん見える。2人は普段より高度を上げて飛んだ。


「きれい。空も地上も宝石をちりばめたみたいにキラキラしてる。これが私達の世界」

 こんな景色、魔法少女になってなかったら絶対に見ることなんてできない。宇宙から見た地球は美しい青い星に決まっている。それも今なら見ることができるんじゃないのかな。

でも今はこの世界の未来のことが気になってしまう。みんなの未来は私の未来でもあるんだ。


現実と非現実の間を生きているみたい。


「昔はもっともっとたくさんの星が見えたもんだ。地上にいたって天の川が見えたのに、今じゃ空気も汚れ、街の光が異常な位明るい。星自体見つけるのが大変だ。でもだからどうしたってことじゃない。時代は進み世界は発展して便利な世の中になった。というかみんなが頑張って今の世界を作ったんだ。これからますます空気は汚れ、街は明るくなるだろうな」

「ブーアってやっぱ時代を見てきた人だよね。私はこれが当たり前だと思っている。生まれた時にはもうカラーテレビがあったし、車だって。スーパーには大体物が揃っている。便利が当たり前。でも魔法少女になって少しだけ考え方が変わった。もしかしたら私が子供の頃にだって私達じゃない魔法少女達がこの世界を守ってるって思ったら、ほんとの世界って一体どんな姿だったのかなって」


 そんなこと考えるのだって私が魔法少女をしているからだ。


「なかなか興味深い話だね。でもさ、昔は昔で、今は今なんだ。どういうことか分かる?」

「過去の事に縛られて物事を考えてもしょうがないってこと?」

「さすがジーア。感がいいね。あたいが言いたいのはこういうことさ。つまり今を何とかしなきゃ未来はないってこと」

「未来・・・・」

「そう。あたい達の後から生きている人達の為に世界を守るの。もう残り少ない人生。あたいは他人の為に生きたい。ジーアだってそうだろ。この世界がどうかなってしまったらあんたの子供の未来だってないんだよ」

 私達が生きていることは常に未来があること。未来にだけ生きるという衝動は向かっている。

「うん、そうだよね。私だって世界を守る為に魔法少女やってる。きっと私達が子供の頃だって私達の未来を守るためにどこかで魔法少女達が戦ってくれていたんだ。だから今をこうやって生きている。私達は引き継いでいるんだ。そして未来にも。けど・・・・」

「けど?さっきの奴かい?」

 あのドリーチェの顔がはっきりと思い出される。笑ってた。ずっと笑ってた。

「うん。今までのドリーチェとは明らかに違う。彼らには目的意識がある。ただ現れて暴れるだけじゃない。頭を使ってくる。簡単には倒せないような気がする」

「確かに強敵かもね。あいつ言ってた。『やっとこの現実世界に来ることが出来た』って。ということは今回が初めての出来事かもしれないねえ。確かにやっかいだ」

「でしょ。つまり私達は今までにない敵と対峙することになる」

「でも戦わなくちゃならない」

「そう。未来のためにというよりは今この時のため。あいつらは何か目的がある。それは何か分からないけど確実に私達人間にとって悪い事だと思うの。だから」

「だから一層私達は力を合わせなくてはならない、でしょ?」

「そう。でもあの二人・・・」

「大丈夫。ジーアが心配しなくてもきっと大丈夫だから。あの二人だって冗談で魔法少女になったわけじゃないだろうから」

「そう信じてる。あ、ごめんね、付き合わせちゃって。私ん家こっちだから。ありがとう愚痴聞いてくれて。ブーアにはいつも助けてもらってるね」

「いいよ、愚痴位。いくらでも言いなよ。溜めるのって毒だからさ。あたいでよかったら何時でも遠慮なく言っていいから」

「うん、ありがとう。じゃあ、またね」


 ジーアは急降下していく。

 

 ブーアは大きく手を振って飛んで行ってしまった。見送ってからジーアは窓から自分の部屋にそっと入った。真っ先に鏡を前にして大きく深呼吸する。そして鏡に映っているジーアに話しかける。


「ジーア、どう思う?」

 鏡の中のジーアは眼鏡を掛けていない。そこに映っているのは本物のジーアだから。私達はこうすることでお互い顔を合わせて会話することができる。

 やっぱり同じように動揺しているのが分かる。


「あんなの今までいなかった。今回が初めて」

「そうなんだ。・・・やっぱりあいつも活動時間帯は夜だけなのかな?」

「・・・・分からないわ。しばらくは向こうの出方を見た方がいいかもね」

「・・・・そうね・・・ジーアの言う通りにする。魔法力結構使った。それに精神的にも疲れたかも。またねジーア。それと何か分かったら教えて欲しい。今はゆっくり休んで」

「お気遣いありがとう。仁もお疲れさま。あなたこそゆっくり休んで。じゃあまたね。おやすみ」


 言い終えるとジーアの姿は消え本来の姿に戻っていた。

 あらためて深呼吸をする。


 『神谷 仁』

 

 僕の名前。鏡には僕の本当の姿映っている。おじさんと呼ばれて当たり前の42歳である。おまけに厄年でもある。いつも思う。いつからこんなに疲れた顔しかできなくなったのだろうと。正直この歳で鏡を見るのは凶器を見ているみたいに感じる。僕はホントに歳取ったんだって否応なく突きつけられる。それが心のどこかに小さな傷を付ける。


 それにしても今は何時なのだろう?

 街中はとても静かだ。家の中も。もうみんな眠ってしまったのだろうか。


 一人で暗い部屋にいると世界の流れからはみ出してしまったみたいに感じる。でも間違いなく今いる場所は現実だと言い聞かせる。

「あ〜〜〜〜〜〜!」

 大きな欠伸が疲労の度合いを表しているみたいだ。

 これがいつもの世界なら明日は仕事だ。だから仕事に行く前に休む必要がある。明日は早いのだ。


 パジャマに着替え、眼鏡を外す。

 そのままベッドに滑り込むと、あっと言う間に眠りがやって来る。夢を見たような見ていないようなそんな眠りだった。でも眠りの中で思う。これから魔法少女として他の仲間と共に本当の戦いが始まる。 

 本当の戦いって何のことだろう?答えは眠りの中の闇に見えなくなっていった。


 アラームが鳴る。朝がやって来た。いつものように止まることなく。そして始まる新しい一日。

 ぼんやりとした意識で思う。もう娘の綾は学校に行ってしまったのだろうか。最近会っていない。話もしていない。距離がどんどん離れていっている様に感じる。

 僕は眼鏡をかけベッドから起き上がる。カーテンを開けると抜けるような青空が広がっている。


 平和な世界


 自然と昨夜のことが頭に蘇ってくる。この世界の平和を守らなきゃな、と思う。


 携帯が鳴る。メールだ。差出人は『水無月 有栖』。グローの依り代であり魔法少女のリーダー。


『おはようございます。朝早くにすみません。急ぎなもので。昨日の事当然覚えているかと思います。あまりに急な出来事だった為、未だに頭の中が混乱しています。グローとも話したのですが、やはり初めてのことだそうです。私達の前に今、新たなる敵が現れたのです。対策を考えたいと思い連絡しました。このことについてどうお考えでしょうか?一度みんなで話し合った方がいいと思うのですがいかがですか?連絡待っています。それでは失礼します。水無月 有栖』


 グローからは想像できない丁寧な文面である。彼女は魔法少女に変身してしまうとどうやら性格が変わってしまう。それが欠点なのどうかは分からないが、きっと将来車の免許を取ったら確実に豹変するタイプと言えるだろう。間違いなく。

 僕は簡単に返事をする。


『おはよう。メール見たよ。確かに緊急事態に変わりない。今日は十八時には仕事を終える。それからなら可能です。場所は『くま屋』でどうかな?』

 送信。直ぐに返事が返ってくる。


『度々申し訳ありません。実はその、お願いがありまして。他のメンバーには神谷さんから連絡していただけないでしょうか?水無月 有栖』


 なるほど。昨日の喧嘩か。まったくこれだから子供はしょうがないと思うも断る理由もないので引き受ける事にする。再度メール。そして返信。早い。やはり現代っ子だ。


『ありがとうございます。それでは今夜よろしくお願いします。水無月 有栖』


 やれやれ。本当の戦いなんて始まらなきゃいいのに。頭の中には未だ答えというものが存在していない。


 現実を実感しないとならない。僕は朝食を摂るために部屋を出る。コーヒーの香りが僕を現実に戻してくれるはずだ。


長々と読んでいただきありがとうございます。

これくらいが妥当かどうかなんて分かりませんが

自分のペースで続けていこうと思います。

次回も読んでもらえたら幸いです。

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