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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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魔法少女の夏休み 6

 いよいよ魔法少女だけの夏休みが幕を開けた。


「早速着替えて、ビーチに行こう!」

 この一言はもちろんティーナだ。

「みなさん。着替えはこちらでいたしましょう」

 言われるままグローの後についていく。


「へぇ〜結構でかい別荘だな。やっぱグローはすげえな」

 廊下を歩きながらティーナは感嘆の溜息を付いていた。

 ジーアも同じことを心の中で感じていた。自分の家の廊下は20歩も歩けば終わってしまう。貧富の差以前の問題だと思う。人にはそれぞれ分不相応というものがあるのだ。

「ティーナ、誤解ないよう言っておきますが。わたくしがすごい訳でなく、わたくしの両親、両祖父母、それにずっとこの水無月を守ってきたご先祖がすごいのであって、わたくしなんてまだまだなんです」

「そうだろうけど。私達から見たらグローだってすごいって見えるんだよ」

「まあ・・・その辺にしておきましょう。こちらの部屋です。わたくしたちはこちら。ジーアとミアンはそちらでお願いします」

 ここは見事に分断される。確かに正解ではあるのだが・・・


「え〜何で?あたしとジーアだけこっちなの?」

「だって、あなた達、男性ではありませんか」

 グローは当たり前のような顔をして言った。ミアンは頬を膨らませて

「今は違うもん」

「まあまあ、ミアン。グローの言う事もありかな。私達はこっちで着替えよう」

「まあ、そうなるのが普通か。しかし同じ魔法少女なのに仕方ないか。じゃあな、また後で」

 グロー、ティーナ、ブーアは右の部屋へ。ジーアとミアンは左の部屋に入っていった。


「あたし達が男だからって冷たいよ」

 プンプンしながらミアンは服を脱ぎだした。

「わ!いきなり過ぎるから・・・ちょっと待ってよ」

 ジーアは恥ずかしそうに両手で顔を覆ってしまった。ミアンは何ともないふうに

「ミアンの裸なんて見慣れたって。だから別にいいのに。そう思わない?」

「まあ・・・でもさ、やっぱり仕方ないよ。っていうかこの服って脱げるんだ」

「脱げるよ。知らないの?ジーアって自分の裸見たことないの?」

「な、ない、一回もない」


 確かに一番最初の頃はちょっとだけ、嘘、すごく興味があった。けどドリーチェと戦ったり、みんなと一緒にいることでその気持ちがだんだんなくなってきた。自分が魔法少女でいることがすごく自然になっていた。ジーアになっている時だけ不思議と普段の自分を忘れがちだった。

 だから今、すっごく緊張してきた。どうしよう。魔法で着替えた方がいいのかな?


「ほら、ジーアも早く脱いで」

「ちょ、ミアン、もう着替え終わったの?」

「そだよ。どう、あたしの水着。可愛いでしょ。これ買うのに二時間もかかったんだ」

 ジーアはミアンの姿を指の隙間を通して視線を足から顔になめていく。ミアンは満面の笑みをしている。


 白いセパレートで腰には同じ白色のパレオがついた水着がミアンのエフェクトによってさらに眩しい。


「どうかな、ジーア」

「う、うん。可愛いんじゃない。その水着はさ、どっちが買いに行ったの?」

「どっち?」

「ミアンで行ったのか、鏡一郎で行ったかってこと」

「鏡一郎で行った。恥ずかしいったらないよ。ずっとミアンと交信しながら、あれこれいろいろ見て、ああでもない、こうでもないって。店員さんなんか最初は変な顔してたけど、妹が留学先から帰ってくるってことにしてサプライズだって言い訳まで作ってさ」

「うわ〜、大変だったね。思うんだけどさ。ミアンのわがままって相当だよね」

「かもね。でもあたしミアンのこと好きだからいいんだ。それよりあたしのことはもういいよね。ジーアも早く着替えなよ」

「う、うん」


 その時だった。ドアの外側から声がする。


「お〜い、まだか?私達終わったぞ」

「ティーナ、分かったから、その、先に行っててくれない」

「何だ、まだなのか?ジーア、私が選んだ水着、着かた分かる?」

「た、多分。大丈夫だから、だから、すぐ行くから」

「へ〜。ジーアの水着ってティーナが選んだの?ねえ、どんなの?早く見せてよ」

「うん・・・私が決められないでいたらティーナが任せろって。だからまだちゃんと見てないの・・・・これなんだけど」


 ジーアは水着の入った紙袋をミアンに渡した。ミアンは水着を出すと不可解な表情になる。


「うわ〜、何これ?水着?ヒモにしか見えないけど」

「嘘?」

 ジーアは急いでミアンから水着を取り上げて自分の目でちゃんと見てみる。

「な、何これ?ほとんどヒモじゃん。隠せるとこ小さい!ちょっとティーナ!なんでこんなの選ぶのよ。恥ずかしくて着れないじゃない」

「安心しろ。それもれっきとした水着だ」

「・・・・。ティーナに任せた私が馬鹿だった。そうだ。ねえミアン、これと取り替えない?」

「え〜やだ。あたしとミアンで選んだんだから。ジーアはそれ着なよ」

「着なよって・・・随分簡単に言ってくれるじゃん。人ごとだと思って」

「だって人ごとだもん。ティーナを信用したジーアに責任あるんじゃない。大体、ティーナがまともなの選ぶなんてあたしだったら思わないもん」


「おおい、私達先に行ってるからな。早く来いよ」

「ちょっとティーナ待ちなさい!責に・・・ん、あ、あれ?」

 ジーアが扉を開けた時、もうそこには誰もいなかった。

「うそ?いない・・・どうしよう・・・・」

「どうすんの?さっ、あたしも行こっと。あ〜、早く泳ぎたい。海が呼んでる」

「ま、待ってミアン・・・分かった、着るから・・・だから手伝って」

「え〜、そんなの分かんないよ。ジーアだったら大丈夫。じゃあ、行ってるね。きゃあ〜海、海。みんな、待ってぇ」


 ミアンは心のまま飛び出して行ってしまった。一人取り残されるジーア。もう一度あらためて水着を見て思いっきり溜息をついた。


「・・・どうしよう。こんなの着れないよ・・・そうだ。このまま海に入らなくたって・・・」


 鏡に映っている自分を見ていて思い出す。夢。そうだ。私、ジーアに約束したんだ。思いっきり楽しむって。ジーアにも海を楽しんでもらいたい。今はその気持ちだけで進んでいるんだ。


「駄目。しっかりしろ私。ジーアのためにも着ないといけない・・・約束だから・・・ジーアは楽しみにしている。約束守るよ。海の思い出一緒に作ろうね。ジーア」


 ジーアは固く決意して服を脱ぎ始める。最初に手を掛けたところで


 パサァァァァァァァァァァ・・・・・・・沈黙。


☆★★☆


 海はどこまでも青く、波は穏やか。風はそよそよと、夏の日差しは申し分ない。

 おまけに遠浅のビーチが広がっている。

 三人は別荘から延びているウッドテラスに出て一望出来る海を見ていた。先にある三段ほどの階段を下りればすぐにでも砂浜が待っている。

 

 ティーナは思いっきり深呼吸をして、

「すっげ〜、これ全部、グローん家の?」

「そうです。気に入って頂けたかしら」

「おまけにもの凄くきれいな海。伊豆の海ってこんなにきれいなんだな」

「この場所は下田の中でもトップクラスの透明度を誇っています。シュノーケリングも楽しめますわ」

「いいねえ、いいねえ。もうテンションMAX。それよりさブーアのそれって水着かい?」

「何か変か?じーさんが使ってたの持ってきたんだ。うちのじーさん、体がおっきかったから。もしかしてって思ったら、サイズピッタリ。どうだ?似合うだろ」

「こう言っちゃなんだけど。それって昔の人が着てたやつだろ?古い映画とかで見たとある」

「何を言う。若いから知らんだろうが、これはクラシックゼブラスタイルと言って、水着っていったらこれのことだ」

「・・・クラシックゼブラスタイル?まあいいや。それよりブーアって泳げるのか?」

「侮るなかれ。女学生の頃は平泳ぎで一等賞取ったことあるんだ」


 ブーアは白と赤のボーダー柄の水着で自慢げに腕組みをする。


「女学生?なんとも時代を感じる話ありがとな。ところでグローは何でスクール水着着てんのさ。ばっちり『水無月』って名前入ってるし」

「有栖とグローはサイズがほぼ一緒でしたし、わたくしはまだ中学生です。あまり肌を露出するのはハシタナイと判断してのことです」

「ほんとお嬢様だな。でもそれはそれでイケてる。ある種の人達には受けるよ、うん」

「ある種のってどういう意味かしら?まったくあなたも女性なら、もう少し気品というものを身につけた方がよろしくてよ」

「その考えがまだまだ子供だって言うんだ。大人になれば分かるよ」

「また子供扱いですか。心配しなくてもあなたのような大人になる予定は持ち合わせていないので」

「なんだって?どういう意味?分かり易く教えてもらえないかな」


 グローとティーナはお互い火花を散らし始め顔を見合わせた。


「おいおい、いい加減にしないか。今日はもう喧嘩はなし。せっかくの旅行台無しするつもりかい」

「・・・そ、そうだった。・・・グロー悪かった。私はただ水着が意外と似合ってるって言いたかっただけなんだ」

「だったら最初からそう言えばよかったのですわ。わたくしだって喧嘩なんてしたくありませんから」


 グローはジーア達を目で探し出す。しかし未だやって来る気配がない。


「分かればいい。ところであの二人遅いな」

「ほんと何やってるのかしら?」

「しょうがない。ちょっくら見てくっか」

 みんなの視線の先にミアンの姿が見えた。なにやら慌てているようだ。

「ミアン、やっと来たか。あれ、ジーアは?」

「た、大変、大変。ジーアが、ジーアが」

「ジーアがどうしたって?」

「きっとティーナのせいだよ。あの水着のせいだよ、絶対」

「だから落ち着けって。ジーアがどうしたって?」

「タオル忘れてあたし取りに戻ったの。そしたらジーアが血を出して倒れて・・・だから」

「何だって?おいおい、ジーアの奴なにやってんだ」 


 急いでジーアの様子を見に戻った。

 そこでみんな見たものは確かに鼻血を出して倒れているジーアの姿だった。

 まだ服を着ている。一体に何に対して鼻血を出したのか見当も付かなかった。

 ブーアが傍に行ってジーアを抱きかかえた。


「おい、おい、ジーア、しっかりするんだ」

 ブーアが体を軽く揺するとジーアはゆっくりと目を開けた。

「・・・あ・・・ブーア・・・・」

「どうしたんだ?何で鼻血なんか出した?」

「あ・・・」

 ブーアの質問にジーアの顔がほんのり赤くなり、モジモジし始めた。


「わ、私・・・・・・その・・・びっくりしちゃって・・・」

「びっくり?何に?」

「だ、だから・・・」

 ジーアはとても言い辛そうにしている。ゆっくりと深呼吸して

「だ、だから・・・着替えようと服に手をかけた・・・」

「うん、それで?」

「私、自分の体見るの初めてだったから。慣れるためにまずブーツと靴下を脱いだの。次に上着を脱ごうとしたら・・・・・したら・・・・」

「したら?」

 ジーアは更に顔を赤くしながら一息に、

「ジーアったらノーブラだったの!いきなり胸が目に飛び込んできたの!」

「それでか」

 ジーアは真っ赤なままコクンと頷いた。

「もうこれ以上前に進めないよ。また鼻血出しちゃう・・・どうしよう・・・」

「なるほどな。事情は分かった。だったらあたいに任せな。みんなは先に行っててくれ。あたいがジーアを着替えさせて連れてくから」

「着替えって・・・どうするの?」

「こうするのさ」

 ブーアはそう言ってジーアの眼鏡を外した。


「なるほど。その手があったか!」

「よかったわね、ジーア。視力が悪いの役に立ったわね」

「じゃあ、先に行ってるね。ジーア、待ってるから」


 ジーアとブーア以外はビーチに行ってしまう。ジーアは眼鏡をしないで視界がぼやける中、ブーアが着替えを手伝っていった。外とはウラハラにとても静かに時が流れる。


「大丈夫かい、ジーア」

「うん、これなら平気。ありがとうブーア」

「気にするな。それにしてもこれくらいで鼻血出してるようじゃ。純情なんだね」

「純情・・・・・・ジーアならそれでいいけど、中身を考えるとかなり複雑」

「そんなことないよ。いくつになっても純情っていうのはなかなかないもんさ」

「そう言ってくれるのはブーアだけよ。他はそんな風には思わないと思う」

「いいじゃないか。他人が何と言おうと自分は自分だ。最後まで自分を見失わないことが大事じゃないか。常に自分の足元を見ているのが一番いい生き方だと思うな。人ってさ、大体が足元を見失って転落していくんだ。自分をちゃんと持つってのは結構大変なんだ。だからと言って頑固になってはそれはそれでよくないけどさ。はれ?これってどうやって着るんだ?」

「ねえ、分からないでしょ?ヒモよそんなの。よくも私にそんなの着せようって思ったわね。なんかだんだん腹が立ってきた。ティーナめ、どうしてくれよう」

「ああ、わかった、わかった。これがこうで、それからこうなって。よし、ジーア分かったよ。そのまま立ってな。動くんじゃないよ。まるで知恵の輪だよ」


 すっかり裸になったジーアは言われた通りそのまま立って、じっとしていた。ブーアはゆっくり、しかし確実に水着をジーアに装着していく。


「ブーア」

「ん?」

「さっきのこと。純情。私、そう思っていいのかな。ほんとにそうなのかって考えたら分からなくって。仕事のことだって、家族のことだって。逃げてることが多いような気がする。私、純情っていうよりは弱い人間なんだって思えてくる」

「強い人間ってどんな人間だい?」

「ん・・・・・・よく分からない。私みたいなのじゃないのがそうなのかな」

「この世界に自分の事を強いなんて思ってる人間はいないよ。あたいはそう思ってる。もしそう思ってる人間がいたら、あたいならこう思うね。自分の弱さを隠す為に自分で自分を偽ってるってね。自分の弱さを認められない弱い自分。偽ることでしか生きていけない弱い自分。人の強さなんて他人が決めることであって自分で決めることじゃない。だから自分の弱さを素直に認められる人間は純情だって言いたいんだ」

「私が自分のこと弱い人間て認めてるだけで?」

「まあ、これはあたいの持論だから。でもねジーア、あたいはあんたのことはそう思ってる」

「・・・・そう」

「さ、できた。何だ、案外可愛いじゃないか。ティーナを恨む程じゃあないと思うな。見てみるかい?」

「ほ、ほんと?見たいな。ブーア、眼鏡取ってくれる」


 ジーアはブーアから眼鏡を受け取ってかける。そして鏡の前に行き、恐る恐る目を開けて自分の姿を見てみる。今度は鼻血を出すことはなかった。


「・・・意外・・・ヒモだと思っていたけど・・・うん、悪くない。似合ってる」

「じゃあ行こうか。みんな待ってる」

「うん。ところでさ。ブーアの水着も結構面白いっていうか懐かしいっていうか。私の、っていうか仁のおばあちゃんがそんなの着ている写真見たことあるよ」

「ジーア、元気出てきたじゃないか。そうだろ。なかなかイカスだろ。けど他はこのセンス分かってくれないんだ」

「まあ、みんな若いからね。仕方ないよ」

 二人はクスクス笑いながら部屋を後にした。

 その先には眩しすぎる太陽が二人を出迎えてくれる。みんなもジーアを笑顔で迎えてくれた。

皆さま。三連休のご予定は立ててますか?

読んでいただきありがとうございます。

私ですか?もちろん仕事です。朝から晩まで(トホホ)

しかし物語の中でバカンスを楽しんでいます。

やっと出てきた水着。しかもベタな展開。

この先どんな冒険が待っている?

その答えは次回?いやもうちょっと先かな。

それではまたお会いしましょう。

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