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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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魔法少女の夏休み 4

 一歩外に踏み出すと太陽の光がとても新鮮にジーアの青い瞳には映る。

 今までと同じ世界なのに何かが違って新しい世界に足を踏み入れたような感覚がする。

 自分が違う人生を歩んでいるように感じる。まるで何も知らない子供の頃に返ったみたい。

 何もかもが新しくて輝いていて。小さな手には希望と可能性が掴み取れないほど溢れている。


 サービスエリアの混雑は混沌に変わっていた。それはトラックだけじゃなく普通の車も数も増えていて駐車場も施設内も人でごった返していたからだ。


「うわ〜・・・なんだこれ。人増えたね。おまけに暑苦しい」

 ブーアは腰のタオルで汗を拭いだす。

「あの二人どこにいるのかしら?」

「ほんと全然見えないね。それもだけど私達もはぐれないようにしないと」

 三人はそれとなく周りを見回した。エンジンの音、アスファルトを踏むタイヤの音、そして人々の話し声が混ぜこぜになっている。そんな中から売店の方からティーナらしき声が聞こえる。


「あれってティーナの声・・・だよね?何大声で言ってんだろ?まさか・・・・何か面倒な事起こしてなきゃいいけど。あっちみたい。行こう!」

 いち早く気がついたジーアは走り出した。


 そして

 目の前の光景を見て思わず絶句した。ジーアは眼鏡越しにじっくりと見る。そこにはさらに密度のある人混みが出来上がっていた。

「やっぱり。この声、絶対ティーナだよ」

「大きな声で・・・品が無さ過ぎます」

「それよりなにごとだ?おおい。ティーナ・・・もっと前行かないと。ちょっとごめんよ、開けてくれ」

 ブーアを先頭に人混みをかき分けていく。ティーナの声が鮮明に聞こえる。


「ちょっと!何で売ってくれないわけ?」

「だってお嬢ちゃん未成年でしょ。お父さんとお母さんはどこにいるのかな」

「だから子供じゃないって!二十歳過ぎてるのよ。ちゃんと税金だって納めてるの」

「だから・・・・・・困ったな。君にこれ売ったら、俺、クビになっちゃうよ。もう向こう行ってくれないかな。頼むよお嬢ちゃん。ここでこいつを売るのって今日しかないんだよ。ご当地名産フェアでたった一日の大事な日なんだからよ」


 ジーア達はやっとティーナに辿り着くことができた。

「ちょっとティーナ!何やってんのよ。あとミアンはどこ?」

「あ、ジーアいいところに来た。ちょっとさ、こいつに説明してくれない?ぜんぜん分かってくれないの」

「説明って・・・一体何したのよ?あ!・・・これって」

「あんた達このお嬢ちゃんの連れかい?商売の邪魔だから連れてって欲しいんだけど。頼むよ。今日だけなんだ。俺達が造ったビール売っていいのは。もちろんお土産用だからドライバーにだってそう言い聞かせてる。でも未成年にはどんな理由だって売れないんだ。法律で決まっているんだ」


 ジーア達はビールを買おうとしているティーナを見て肩を落とした。

「あのさ。駄目だから。おじさん、ごめんなさい。さ、ティーナも謝って」

「はあ?何で?いい天気だから飲みたくなったんだよ。一本だけ!見てみろご当地ビールなんだ。サービスエリアで普通お酒なんてないんだから記念だよ」

「一本も何も駄目だ。行くぞ。済まなかった、迷惑かけて」

 ブーアは軽々とティーナを抱えた。その光景を見ていた回りのギャラリーが『おお』と声を上げる。

 グローは身体が震えていた。多分怒っているのだろう。微かな音でピリピリが聞こえる。


「ちょ、なに、ブーア離してって」

「どこの世界にお酒を買おうとする魔法少女がいる。朝っぱらから」

「ここにいる。ジーアからも言ってくれよ」

 ごねるティーナの前にグローが立ちはだかる。髪の毛には微かに放電が見受けられた。

「ティーナ。お遊びが過ぎるんじゃなくて?わたくし達は確かに遊びに来ています。しかし。節度を守って頂けないなら、このまま帰ってもらうことになります」

「そうだぞ。楽しくなってきたとこじゃないか。このままここでお開きにしてもいいのか?」

「そうだよ。はしゃぎ過ぎだって。それにもうちょっとしたらビーチに着くでしょ」

 みんなから言われ少しだけ口を尖らせてティーナはブーアから降りた。

「・・・ごめん。悪かった。だからやめようなんて言わないでお願い」

「だったらそう言わせないようするべきですわ」

「グロー・・・ごめんなさい。ブーアもジーアもごめんよ。私、おじさんにも謝ってくる」

 ティーナは人混みをかき分けると走って戻って行った。


「まったく。見に来て正解でしたわ」

「ほんと。あの勢いだったら何しでかすか分からなかったね」

「まあ、嬉しいんだろうよ。普段はいろいろ大変みたいだから。なあグロー今回は大目に見てやってくれないか。あたいからもお願いする」

「ブーアまで・・・分かったわ。でも次はなくってよ」

「ありがとな。さあ、あともう一人の『困ったちゃん』はどこだ?」

 ジーア達が探そうとしたら向こうからやって来た。両手には買い物した袋をたくさん持って。

 しかもさっきよりジーア達を取り巻く人が増えているみたい。


「みんなも散歩?」

 呑気な笑顔だ。ミアンは気が付いているのだろうか。自分の後ろにはたくさんの取り巻きがいることを。

「散歩じゃなくて探索。それより何買ったの?」

「ジーア知らないの?海老名に来たらこれ買わないと。名物メロンパン」

「メロンパン?さっきご飯食べたばかりじゃない」

「みんなの分も買ったから車の中で食べようよ」

「聞いてないから。こっちはこっちで・・・まったく、あなた達から目が離せないよ」

「何で?」

「もう何ででも。それより・・・・・・」


 ジーアが喋ろうとした瞬間、あちらこちらからカメラのシャッター音がしてきた。思わず振り向くとカメラのレンズや携帯、スマホが向けられていた。


「ちょ、ちょっと一体何?なんなのこの人達」


「あの〜、写真いいですか?」

 人混みの中からそういった声がしだす。人が人を呼んでどんどん集まってくるようだ。

「写真?何でっていうかもう勝手に撮ってる人いるし、やめてください」

「かわいいね。みんなは何の集まりなの?この中じゃ君の眼鏡。いいね」

「何のって・・・め、眼鏡?・・・」

「君たちって新人のアイドルかなんかなの?」

「アイドル?」

 その手の言葉が怒濤のように押し寄せて来た。ジーア達はお互い顔を見合わせて

「だから言ったじゃん。目立つのよ、この格好」

「困りましたね・・・そろそろ戻らないと春日が心配します」

「写真?いいよ」

「ミアン。そこは違うから」

 そんな大変な状態の時にティーナが戻ってきた。彼女の後ろにも当然のように取り巻きがついていた。


「おいおい。なんか凄いことになってるな。おおい、みんな!ちょっと通してよ」

 無理矢理人混みをかき分けてティーナが加わる。その手にはなぜかラムネが握られていた。

「どうしたのこれ?」

「ああ、うん。謝ったらなんかくれた。『これで我慢しろ』なんて言ってさ。ところで何でこんなにことになってるわけ?」

 グローが溜息混じりで

「わざわざ入ってこなくてもよかったのに。余計暑くなってきましたわ」

「はあ?だったらこれでも飲んだら、ほら、ラムネ。よく冷えてるよ」

 誰のせい?みたいな視線がグローとティーナの間で炸裂しようとしている。

「ちょっと〜・・・喧嘩はやめてよね。それより今を何とかしないと・・・・・・」


「ねえねえ、君たちこれ全員?だったら写真いいかな?」

「写真?なになに、ジーア、どういうこと?」

「だから・・・仕方ない・・・」

 ジーアは密かにステッキを取り出すと小さな声で原子に呼び掛ける。

「マグネシウム達よ。お願い。私の元に集まって」

 そして小さくステッキを翳す。『Mg』という文字が浮かび上がるとだんだん増えていきジーア達の周りを取り囲んだ。

 周りの一般の人には『Mg』の文字は見えていない。マグネシウムは十分に集まっていた。


「ティーナには協力してもらうわよ」

「え?私?何すればいいんだ」

「私が合図したらマッチくらいの火を起こして」

「ええ?この暑いのにさらに熱くしてどうすんのさ」

「いいから。そしたらここから離脱できるわ。いい。これはあなたの名誉挽回のチャンスなのよ」

「わ、分かった。そういうことなら。ほんとにそんな火でいいんだな」

「ええ。じゃあいくわよ。3、2、1、今よ」


 一部始終を人々はじっと見ていた。

 そして次の瞬間『ポン』と音が鳴ると真っ白な煙が一面に立ち昇ったと思ったら目の前の魔法少女達の姿は消えていた。

 人々は何かのアトラクションと思ったのだろう。『おお』と歓声を上げている。


 そんな合間を縫うようにリムジンはひっそりと走り出していた。


「やったな。こっちには気付いてないみたいだぜ」

「・・・ほんと・・・・・・よかった」

「まったくあなた達のせいですわ。でも。今回の名誉挽回は成功した。でいいでしょう」

「確かに朝からビールはまずかったけど。そんなことより人前で魔法使ってよかったのか?」

「誰も魔法なんて思っちゃいないさ。余興か何かかと思ってるだろ。それにああしなきゃもっと大変なことになってたかもな。だから正しい判断だったんだ。ティーナもありがとな。さすがジーアだよ、咄嗟にあんな機転きくなんて。おかげで少し魔法力使わせちゃったな」

「ううん。あれくらいどうってことないよ。ブーアだって凄いじゃん。私達四人を抱えてあっと言う間に飛び立ってくれたんだから」

「力が自慢だからな。それからもう一人のこと忘れちゃいけない」

 ブーアの言葉でみんなの視線が一人に集中する。


「そうだね。ありがとう春日さん。タイミングバッチリでした」

 ジーアが真っ先にお礼を言う。

「状況を見てれば大体分かります。お役に立てて光栄です」

「春日に任せて正解でした。わたくしからもお礼を言います。ありがとう春日」

「そのようなこと。お嬢様もったいないです。ワタクシは執事として当然のことをしたまでです」


「さあ!いよいよ海に向け出発!だね」

 

「ミアン。あなたも春日さんにお礼くらい言ったら?」

 ジーアの言葉にミアンは考える。そして運転席に近づくと


「ありがとう春日さん。お礼。チュ♡」


 ミアンはいきなり春日さんのホッペにキスをした。

 さすがの春日さんも動揺したのだろうか。ハンドルが大きく乱れた。

 ジーアは予想外のことにびっくりして

「ちょ、ちょっとミアン!やることが大胆なのよ」

「そう?だってお礼っていうから」

「だからってそんなお礼ありなの?大体、鏡一郎って変身するとミアンの影響受け過ぎなのよ。少しは自覚したら?春日さんビックリしちゃってるじゃない」

「ええ!そんなこと言ったってこれが普通だし。それにさ、こんな可愛い娘からキスされたら嬉しいでしょ絶対」

「あんたね、そう言うけど、元々は男の子なんだからね」

「今は違うもん。ねえ、春日さん、嫌だった?」

「ははは」

 笑って返すと春日さんは運転に集中した。ジーアは溜息をつく。ミアンはニコニコしながら今度はゲームを取り出して遊び始めた。


「やれやれ・・・これから先が思いやられる」

「ほんとですわね。けどやっと旅行っぽくなってきましたね」


「さあて、あとどれくらいで着くんだ?」

「そうですね。このまま空いていれば二時間ちょっとくらいですか」

「え!そんなにかかるの?結構遠いんだ。まあいっか。お腹もいっぱいになったことだし少し寝る」

「寝るって、本気?ティーナ」

「だってブーアを見てみなよ」

 ブーアは既にウトウトしていた。気持ち良さそうに車の揺れに合わせて身体が揺れている。ティーナはブーアに身体をもたれかけ目を閉じるとあっという間に眠ってしまう。


「・・・しょうのない人。まあ静かになっていいですけど。ジーアも眠たかったら寝ても構いませんわよ」

「え!いやいや別に眠くないから。私よりグローはどうなのよ」

「わたくしも別に眠くありません。他人に寝顔を見せるなんて品の無いこと出来ませんわ」

「そっか・・・お嬢様って大変なんだ」

「それはグローと言うよりは有栖についてのことかしら?」

「う〜ん、そうなるのかな?」

「今のわたくしは魔法少女であってお嬢様は有栖のことですから」

「・・・なんか面倒・・・・・じゃあさ、有栖のこと聞きたいな」

「有栖のことなんか聞いてどうするのです?もしかしてジーアは有栖のこと好きだったりするわけ?いわゆるロリコンっていうことでしょうか」

「ロ、ロリ?ち、違うよ。ただ・・・なんていうか・・そう!世間話」

「世間話?ほんとに?世間話と言われても有栖は仁さんの娘さんより一つしか年上なだけです。親子の会話くらいにしかならないと思いますが」

「・・・確かにその通りかも。けど最近のあんまり話してなくて。それに普段って何話せばいいか分からないの。距離ばっかり離れていっていく感じ・・・・・・だから」

「だからわたくしから今の女子中学生の実状を知りたいと」

「う〜ん、そういうつもりじゃなかったけど。グローが嫌じゃなければそれでもいいかな」

「・・・・仕方がないことですね。でも少しだけにしてください。有栖のプライバシーには極力踏み込まないという条件付きですが」


 それから束の間。ジーアとグロー。というよりは神谷仁と水無月有栖の会話は始まった。

 

 今は同級生の間ではどんな事が流行っているか。音楽とかファッションのこと、学校行事のことや将来のこと。

 有栖が通うお嬢様学校と公立の学校とは多分勝手が随分違うのだろうけど根本は同じ中学生じゃないか、と仁は思って会話をしていた。

 所々ついていけなかったが中学生が考えていることは把握出来たような気がした。あくまで理解ではなく気がしただけだった。


「それでね・・・・ん?あ、あれ?もしかしてグロー寝ちゃった?」


 ジーアはこのままグローも寝かせておこうと言葉を閉じた。

 他人に寝顔、なんて言っていたけど。寝ている顔はどこにでもいるあどけない少女そのものだった。

皆さまが思い浮かべる夏の音楽とは何ですか?

読んでいただきありがとうございます。

ポップな曲もあればしっとりした曲もありますよね。

どれも夏を楽しんでいたり憂いていたり。

でも後悔の曲って知らないな・・・←知識不足

夕陽を見ながらビール。最高です。

ずっと飲んでいられます・・・私。

あ、そんな話をしたいわけじゃなくて

もっと夏感を出して今の季節を乗り切ろう、なんて思いで書いてます。

もっと夏の核心へ。

次回もよろしくお願いします。

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