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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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魔法少女の夏休み 1

「温泉行きたい!汗流したい!あと美味しいもの食べたい!」


 唐突にミアンは言った。けどこの一言から全てが始まることになる。


 今夜のドリーチェは今までで一番呆気なく三分とかからなかった。しかしそれ以上の問題が魔法少女達を悩ませていた。

 今年は例年にないくらいの劇的な猛暑が日本全体に襲いかかっていた。そのせいでみんなはあっという間にみるみる汗だくになっていた。頭からは本気で湯気が出ているみたいに感じる。


「温泉?この暑いのに?頭沸騰してる発言にしか思えん。普通は海とかプールだろ。でも美味しいものには賛成だな。ビーチに寝転んでビールって最高だよなあ。どうよジーア。たまには」

 ティーナはジーアの肩に手を回す。ジーアは大急ぎで振り払うと

「暑い!離れてよ!何でいっつも私に振るのよ。それと、私が下戸ってだって何回言ったら分かるのよ。しつこいんだから・・・・・・ただでさえ暑くてイライラしてるのに・・・」

「随分なご挨拶だね。今時のサラリーマンは付き合いが悪いねぇ」

「サラリーマンって言わないで!!今はジーアなの。私はれっきとした魔法少女なんだからね」

「ジーアってほんと変身すると性格変わるよな。ウケる。からかいがいがあるってもんだ」

 ティーナは笑っているがそれを見ていたジーアは『あなたこそ頭沸騰してんじゃん』って思っていた。


「そうだぞティーナ。あたい達は今は魔法少女なんだ。公私混同はよくないな」

「あらブーア。なにそれ?公私混同?私達ってお給料貰ってるわけじゃないのよ。いいじゃん別に。あはは、ブーア、顔から汗が滴り落ちてる。見てるだけで余計暑くなるっつうの」

「しょうがないだろ。今夜は風もないしな。日本中蒸し風呂みたいだ」

 ブーアは腰に付けていたタオルを取って顔を拭いた。

「なあ、ブーア。そんなとこにタオル付けてたら戦う時邪魔だろ?」

「何を言う。実に便利だぞ。畑仕事の時は必需品だ。ティーナこそ人のこと言えるか。ほら使え」

「うわ〜、これって今拭いた奴じゃん・・・まあいいか」

 ブーアから使用済みタオルを受け取るとティーナは躊躇なく顔を拭く。

「はあ・・・さっぱりした。サンキュウ、ブーア」

 一部始終を見ていたグローもおでこには汗が滲んでいるし顔も少し赤くなっている。

「まったく・・・しょうがない人達ね」

「何か?またチャチャ入れるつもり?グロー」

「あなたこそ変身したら少しは性格変わるとか無いのかしら?」

「私とティーナは似た者同士なのってこれも何回も言ってる。あ〜それにしても暑すぎだろ今年の夏は。去年以上じゃねぇ?」

「はぁ・・・暑さのせいかしら・・・聞いたわたくしが愚かでしたわ」

「あ、自分だけ?」

「それが何か?」

 グローは扇子を出して顔を仰ぎ始めるが当たる風はきっと熱風に違いないとジーアは思っていた。

 ティーナがいきなりスカートをバサバサ仰ぎだす。

「別に。それよりこの服。夏仕様ってないのかな?もっとこう『クールなんとか』みたいな感じでさ」

「私もティーナの意見に一票。絶対生地が多いって」

「だよなジーア。魔法少女の衣裳って何でこんなにゴテゴテしてんだ?前々から思ってたけど」

「さあね。魔法少女らしさを追求した結果なのかな。私なんか背中の羽根っぽい所がみんなより多い気がするし・・・・・・えい!」

 ジーアも同じようにスカートをバサバサ仰ぎだした。さっきよりはマシ?なのかな。いつしかグロー以外はみんな同じようにスカートをバサバサさせていた。とても魔法少女らしからぬ光景になっていた。


 しばらく魔法少女達の間には無言の凪があって、暑さと汗についてそれぞれが悶々としていた。


「ねえねえ。やっぱり温泉行こうよ」

 ミアンがまた同じことを言う。ジーアは面倒いけど聞いてみた。

「どうしていきなり温泉が出てくるの?」

「それさ、ミアンってお風呂好きでしょ。この間テレビで『夏休みの温泉特集』ってやってて、ミアンがどうしても行きたいってごねるんだよ。だからさ、行こうよ」

「夏に温泉特集って・・・余計暑くなるだけじゃない。よくそんな企画が通ったものね。それで?お家のお風呂じゃ駄目なの?」

「ジーアは聞いたことない?アルガトネオルに温泉ないんだって」

「ないよ・・・だからって・・・何時またドリーチェが現れるか分かんないんだよ」

「だ、か、ら。ドリーチェって基本夜じゃん。朝から行けば全然大丈夫だって」

「朝?無理よ。だって私、仕事あるし。みんなだっていろいろあるんじゃない?鏡一郎は夏休みだからいいだろうけど・・・・・・夏休み・・・」


 ジーアは『夏休み』という言葉の響きに懐かしさを感じていた。

 小学生の頃の夏休みは楽しかった。宿題はたくさんあったが自由もたくさんあった。夏の恩恵を素直に受け取る純粋な気持ちで溢れていた。

 もうあの頃には戻れない。戻れるものなら一回くらいはもう一度あの時の夏に戻ってみたい。

 ジーアは月を太陽に見立てて見上げてみる。本物の太陽なら眩しくて見ることなんてできないかもしれない。

 もしかして今って貴重な夏を過しているのではないだろうか。


「だったらわたくしも今は夏休みですわ」

 グローの言葉でジーアは我に還る。

「そっかグローも・・・中学生だもんね」

「あたいは年金暮らしだ」

 ブーアもそんなことを言う。

「そっか。ブーアは年金・・・だよね」


 またしても考えるジーア。自分が年金を貰うまでにはまだ二十年近くある。その頃一体何をして余生を過しているのだろう。いつの時代も年金貰える貰えない問題が発生するが、今現役の自分が払っている税金がくまさん達の役に立って、有栖達が現役で働いている時にはこっちがお世話になるんだよね。

 お金で尺度が決められる世の中って不思議な世界だよね。命は一緒なのに。


「私は、まあ・・・どうにでもなるかな」

「ティーナも急になに言い出すのよ」

 いつの間にかジーアはみんなの真ん中に立たされていた。


「え?なにこの状況。ちょっと、なになに、みんな・・・・・・もしかして行きたい、とか?」

 四面楚歌的状況。聞かずともみんなの意思が伝わってくる。


「ちょうど下田に別荘がありますわ」

 グローの言葉を皮切りに怒濤の会話が展開してゆく。

「え!話進めちゃうの?」

「だって楽しそうじゃないですか」

「おっ!グローほんとか?ビーチは?」

「話に食いついてる?行く気満々?」

「ありますとも。プライベートビーチですからそんなに広くはないけど海は目の前です」

「続けなくていいよ!さらっと凄いこと言ってるし」

「プライベートビーチ?さすが生粋のお嬢様は育ちが違うねぇ。ブーアはどうよ」

「ブーアは冷静だよね。この話はもう終わりって言ってよ」

「あたいは浜辺に行くなんて何十年振りだろう」

「え?・・・なんでそんなキラキラ瞳で私のこと見るの?」

「ねえグロー。温泉は?」

「ミアン。当然ありますわ。天然温泉。おまけにオーシャンビュー。最高の一言ですわ」

「すごいすごい!ねえ、ジーア行こうよ」

 さっきよりも近い距離で囲まれてしまうジーア。身動きは取れないし、真夏の我慢大会に参加したいわけじゃない。


「ちょ、ちょっとみんな待ってよ。この暑さでおかしくなってるって」

ジーアは肉団子状態から飛び出した。

「おかしいのはそっちだろ。これだけお膳立てされて迷う方がどうかと思うな」

「ティーナ・・・そうじゃなくて。そんなに行きたいなら、あなた達だけで行ってきたらいいでしょ」

「分かってないなあ。ジーアって会社でもそんななの?」

「なんで会社が出てくるの?会社は関係ないでしょ」


しかし

ティーナの言葉にジーアは、仁はドキッとした。


 今までを振り返ってみる。

確かに会社の行事に今まで積極的に関わったことがなかった。どちらかというと仕事以外での付き合いは避けてきたと思う。


『仁ならそうかもしれない。もしかしたらジーアは違うの・・・かな?』


ジーアとして今の気持ちを考え直してみると、だんだん行ってもいいと思えっている自分がいることに気がつく。


「さあ。もう一度聞くよ。ジーア行こう。私達が魔法少女として出会ったのが偶然の縁だとしたら少しくらい魔法少女としての楽しい思い出があったっていいと思う。それにもしドリーチェが現れたら私がひとっ飛びして倒してくる。だからさ、行こうよ。みんなだってそう思ってるって」


 あらためて言われると気持ちはかなり揺り動かされる。今はジーアとして素直になってもいいよね。


「・・・・・・そうだね。行こう・・かな・・・・」


 ジーアが言った瞬間。一斉に歓喜の声を上げみんなで抱き合った。

 暑さは増したし黄色い声に思わず耳を塞ぎたくなる。それなのに困惑していたジーアの顔には笑顔が溢れていた。


 『魔法少女としての思い出』とジーアは思う。


 私達はいつか時が来たらこの力とか記憶は消えてしまう。

 魔法少女としての役割が終わった時。それって何時なんだろう。その時が来たら私どうなってんだろう?どうしたいのだろう?私は何かを選択することができるのだろうか。


「では、明朝六時に新宿駅に集合してください。わたくしが車を用意します」

「あ、明日?急すぎるって。みんなそんな簡単に都合着くわけないじゃない」

「善は急げ。ですわ。ジーア、みんなの顔よくご覧になって」

 ジーアはみんなの顔を見る。そして。

「また、私だけ?」

 溜息をついた。そんなジーアを尻目にグローが更に付け加える。


「みなさん、分かってると思いますが水着は魔法少女のサイズに合わせること。変身は現地に着いてから。そうしないと余計な魔法力と使うことになっていざという時役に立たないと困りますから。今はまだ19時です。お店はやっています。ということでどうかしら?」

「魔法少女のサイズ?」

「どうしたのジーア?」

「そんなの魔法で何とかすればいいじゃない。わざわざ買うなんて」

「これも魔法力の節約を兼ねています」

「だからって・・・女物の水着を買うなんて・・・・出来ないよ」

 ジーアは顔を真っ赤にしながら言った。

「だったら今から一緒に行ってやる。私も買わないと」

「ティーナも?」

「そう。私とティーナじゃサイズが違いすぎるからな。そうだ、ミアンも行くか?」

「あたしは平気。実はもう買ってあるんだ」

「まじか。行く気満々じゃん」

「ミアン本人に言ってよ。おかげでソフト買うために取っといたお年玉使ったんだよ」

「分かった分かった。で、グローとブーアはどうする?」

「あたいは大丈夫。ブーアは身体が大きいだろ。確かいいのが家にあったと思う」

「ふーん。グローは?」

「わたくしのことなら心配ご無用です」

「ま、聞くまでもなかったな。じゃあジーア行くか」

「え?本気で?・・・・・・・・・分かった・・・・行く」

「そうこなくっちゃ。じゃあ解散でいいか?」

「ではみなさん。明日。忘れないように」


 三人を見送った後。ジーアとティーナは街中の裏通りに降り立って変身を解こうとした。

「ジーア、ちょい待ち」

「?」

「そのまま動かないで」

 ティーナはいきなり服の上からジーアの身体全部を手で撫で回す。

「ちょ、ちょっと、なんなの?」

「いいから。うん、うん。大体分かった」

「だから何が?」

 ジーアは顔を真っ赤にしなから言う。

「ジーアのサイズは大体把握した。どうせ仁さんのことだからジーアの裸見たことないと思って」

 ジーアの顔はさらに赤くなる。

「あ、当たり前のこと言わないでよ。そんなことしたらジーアに失礼だし」

「やっぱり。自分のサイズも知らないで水着買うなんて無理でしょ。私に任せて」

 確かにティーナの言うことも一理ある。元に戻ったらそれこそサイズなんて分からない。

「じゃあ、行こうか」

 こうして二人は元の姿に戻って繁華街に繰り出していった。


本日は節分だよ。豆撒き、恵方巻き。用意はできてますか?

読んでいただきありがとうございます。

明るいエピソードは必要不可欠ですよね。

けっして思いつきで書いているわけではないです。

しかし。

読み返してみると時系列がめちゃくちゃですね。

読み難くてすみません。

勢いとノリで書いているところもあるのでご了承ください。

まさに妄想の極み。

夏の曲をBGMにして読んでもらえると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

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