仲間だから 6
シャハトは遥か上空から地上を魔法少女を見下ろしている。視線の先に映るのはグロー達が水を吸った煤の中に体を横たえている姿だった。煤によってみんな真っ黒に汚れていた。
「ククク。どいつもこいつも弱すぎて話にならないわ。こんなことならアルガトネオルだって一気に攻め落とせるんじゃないかしら。さて、これからどう料理していこうかしら」
グロー、ミアン、ブーアの三人はシャハトのスピードについていくことが出来ず不意打ちを食らってしまっていた。
ブーアが一番最初に意識を取り戻す。
「・・・・あだだ・・・ありゃ、あたい何でこんなことに・・・おっと敵がいるならのんびりしている余裕はない・・・おい、おい、二人とも目を覚ますんだ」
急いでグローとミアンを起こす。二人とも直ぐに目を覚ました。
「うわ〜、何これ?泥だらけじゃん」
「あなただけではありません。わたくしだって・・・それよりどこにいるのです!出てきなさい卑怯者!」
グローが声を荒げてどこにいるか分からないシャハト向け言う。しかし何も返事は返っては来ない。
「落ち着けグロー。とりあえず二人とも無事か?」
二人は自分達の身体を確かめる。どうやら怪我はしていないようだ。ただ攻撃を受けた箇所には微かな痛みが残っていた。
「平気みたいです。なんだか遊ばれている気分がします。不意打ちとは・・・許せません。大和撫子精神が欠けています。所詮はドリーチェということでしょうか」
「あたしも怪我はないけど。この泥だらけだけは絶っっっっ対、許さないんだから」
ミアンは怒ると瞳の色が黄色から銀色に変わったことに本人は気がついていないようだ。
「まあまあ、そんなことより何時またあいつが襲ってくるか分からないから集中しよう」
ブーアの言葉に二人は黙って頷いて周りに神経を集中させる。
しかし攻撃が仕掛けられる様子はない。それがかえって不気味さを呼び、余計な不安感に襲われる。
「一体どうしたんでしょう」
グローが静けさに耐えられず口にする。
「今度はあたしがお返ししてやるんだから」
ミアンは『赤短鮮血』を発動させた。カードはミアンの気持ちを表しているのか苛立った動きをしている。
「あれくらいでやられるようなあたい達じゃないことぐらい分かってるはず。どこかで見ている。あたい達のこと」
ブーアは全身に力を溜め身体の色が変化し始める。
「みなさん、準備はよろしくて?わたくしも十分過ぎる程、稲妻が高まっています」
グローの逆立った髪からはパリパリと音もするし身体全部が押さえることができないほど帯電している。うっかり触ったら感電必須であることは誰の目にも明らかだった。
神経を集中させる。そして
「見つけた!」
三人は一斉に空に向かって飛び上がる。それから三角形に分かれてシャハトを真ん中に構える。
シャハトは特に迎え撃つ様子もなく
「おやおや。随分のんびりとしていましたね。待ちくたびれて欠伸が止まりませんでした」
クスクス笑ってシャハトは一人ずつ顔を見て廻る。が、身体はそのままなのに首だけがグルリと一周どころではなくグルグル、グルグル回転を始める。
「うわぁ・・・何あれ、気持ち悪い」
ミアンの言葉にシャハトの首はピタッとミアンの前で止まり
「お前か?俺のこと気持ち悪いって言ったの」
その姿その声は変化したシャハトだ。一気にミアンの目の前まで来ると
「そうか。お前が言ったのか。そうなんだろ」
ミアンは目の前のシャハトの姿にビックリして身動きが取れずにいた。
「ひぃぃぃぃ」
「いい答えだ。もっと聞きたいなあ」
シャハトはミアンの頬を自身の手で撫でていく。その感触はとても冷たく感じたミアンは銀髪が逆立って
「い・・・いやぁぁぁぁ、や、止めて」
「ほうほう。いいねぇ。次。これならどんな声聞かせてくれる」
今度はスカートの中に手を突っ込む。ミアンの顔は真っ赤に染まって
「う、う・・・う」
目には薄らと涙が浮かび始める。展開していたカードはハラハラと落ちていきドンドン光の欠片になって消えていってしまった。それを見てシャハトはさらに、
「ほう!声も出せないか。ほれほれ、どうだ?ここか?こっちか?」
「止めなさい!」
グローがシャハトに向かって落雷させる。擦っただけだったがシャハトの着ているマントを焦がすくらいのことはできた。黒い煙が立ち上る。
それを見て笑顔で
「待ってろ。そんなに慌てなさんな。順番に遊んでやる。気持ちいいぞぅ」
その言葉にグローは一瞬怯んだが直ぐに持ち直して
「その汚らわしい手を今すぐミアンから離しなさい。今度は擦るくらいじゃ済ませません。その身を以て償ってもらってもよくってよ」
「ほう。随分と強気じゃないか。お前。俺のマントを焦がした罪は重いぞ。父上から頂いた大事な、大事なマントだからな。お前にはその身を以て償ってもらおうじゃないか」
シャハトはミアンからは手を離さず、そのまま口を開くとカメレオンの様に舌を伸ばす。それがあまりにも速すぎたためグローは避けることも出来ず、舌は首に巻き付く。
「おお!おお!良い味だ。フレッシュな味がする。レロレロレロレロ」
グローは苦しさと気持ち悪さで顔が青くなるが、それでもまだその目には攻撃の色が消えずにシャハトを睨み返して
「まだそんな目が出来るのか。いいねえ。楽しくなってきた。さあ、お次ぎは」
口からさらにもう一本舌を出す。今度はブーアに向かって伸ばしていく。そしてブーアの首に巻き付くと
「お前はデカイからきっとガッツリ系の味だな。レロレロレロレロ・・・・・・」
急にシャハトの動きが止まる。
「お!おぇぇぇぇ!ぐぉぉぉぉ!ま、不味い!おぇぇぇぇぇぇ!」
嘔吐いた。
その態度にブーアは機嫌を悪くして
「失敬な奴だな。グローの時と随分違うじゃないか」
「おぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
返事もせずに悶え始める。
その瞬間にミアンもグローもシャハトの手から逃れることが出来た。
「大丈夫か二人とも」
「・・・ええ。ブーアのおかげで助かりました」
「平気・・・アイツにすっごく穢された。ほんと気持ち悪い」
「感謝されてるが何だか複雑な気分がする。あたいもある意味穢された感じがする」
一筋の光がシャハトの前を通過していく。
「な、何!ぐぇぇぇぇ!!!」
それが通り過ぎた後シャハトの身体は炎に包まれ激しく燃え始めている。炎は加速的に膨張して激しさはさらに増して遂にはシャハトの姿が見えなくなる位まで大きくなっていった。
「ティーナなの?無事だったの?」
言葉を言い終わる前にグローの隣にはティーナの姿があった。
「悪い。心配かけた。みんな、ごめん!」
頭を下げ謝る。その姿にグローは腕組みをしてティーナのことを見る。グローの顔には笑みが溢れていた。
「これで分かったでしょ。わたくし達は五人で一つなんです」
「・・・グロー」
ティーナは顔を上げ順番にみんなの顔を見ていく。
「おかえり。あっと言う間だったけど」
「ミアン・・・ごめんな」
「よく死ななかった。飲み友達が減ると寂しいからな」
「ブーア・・・私もだ。やっぱりブーアと飲む酒が一番美味いからな。すまなかった。私の一方的なワガママで街をこんなにしちまった」
「そのための魔法だろ。心配するな。あいつを倒した後、世界は元通りだ」
「そうだよ。早くやっつけようよ。もうこれ以上お風呂待てないんだからね」
「ところでジーアは、一緒ではなかったのですか?」
ティーナは後を振り返ってバツが悪そうに
「置いてきちまった。だってほら私はみんなより速いじゃん。それにシャハトが怯んだ隙があったから、このチャンス逃すわけにはいかなかったんだ」
遠くからジーアの声が聞こえる。
「やっと追いついた。ほんとティーナのスピード、伊達じゃない」
「おおい、ジーア。こっちこっち」
「ティーナったらすっかり元気になったみたい」
みんなはジーアに集中していた。だから誰もシャハトのことに気をかけていなかっった。
「ふふふ、これでみんな揃ったのね。調子に乗ってるのも今の内。せいぜい勘違いの束の間の勝利に酔いしれてなさい」
シャハトは元の穏やかな顔に戻ったり、歌舞伎のような形相になったりしている。どちらの形態になるか決めかねている。まるで壊れたヴィデオプレーヤーのように繰り返し繰り返し変わっている。
しかし変わらないものがある。それは不気味にも思える程の笑顔だった。ジーアが辿り着くまでティーナに炎にその身を委ねているように。そして次ぎなる一手を繰り出す準備のために。
「みんなシャハトは?」
ジーアがみんなの元に合流する。ティーナは鼻を擦りながら
「私が燃やしてやった。残念だがジーアの出番は無い」
「え〜凄いじゃん!マルヴも?破壊したの?」
「まだだ。マルヴは破壊してない。でもそろそろ私の炎で顔を出す頃だろ。最後はみんなでフィニッシュしよう、ぜ!」
ジーアの顔色が変わる。さっきまでの笑顔が完全に消えてしまっている。
「・・・どうした、ジーア?」
1月も後半戦突入。
読んでいただきありがとうございます。
ここのところ冬アニメのチェックに余念がありません。
寝不足です。目の下のクマが酷いです。
皆さまの今期のオススメはなんですか?
物語を書いたり、アニメを見たり。
おかげで万年寝不足は加速します。
あ〜たまにはぐっすり寝てみたい私です。
次回も寝不足でお会いしましょう。




