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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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3/42

初めまして魔法少女です 3

「ジーアは冷静だね」

 同じように隣りで見ているブーアがゆったりと話し掛けた。

「そんなことないよ。私よりもブーアの裁量の方が凄いって。もしブーアがいなかったらこれまでに一体どれだけ喧嘩があったことか分かんないよ」

「ま、年の功ってやつさ。伊達に歳を食っちゃいないからね」


「みんな集中してください。まずドリーチェの姿を確認してから攻撃。先走らないでよティーナ」

「分かってるってグロー。な、ミアン」

 ティーナはそう言ってミアンの肩に手を掛ける。

「熱いから離れてよ」

「なんだよ。いい加減慣れろって」

 ミアンはティーナのことは無視して

「あたしはカードを展開、っと」

 ミアンはその手から一束のカードを宙に放つ。カードは後光の様にミアンの後ろに丸く展開する。

「あたしは準備オッケ。頑張るよ、ミアン」

 みんなそれぞれ戦いに向けての準備を始める。


 ブーアは気合いを入れると体全体が金属特有の閃きに変わってゆく。

 ティーナは両手に火の玉を出すとさらに大きく、さらに温度を上げてゆく。

 グローは海より海水を呼び出してから無数の矢の形に変えた。

「今日はナトリウムがたくさんあるから」

 ジーアはそう言ってから海水に含まれる塩分からナトリウムを取り出すためステッキを構える。

 これはジーアの定番の攻撃方法。だって威力ハンパないから。

 知っての通り固体のナトリウムは空気に触れるとすぐに酸化して銀白色があっと言う間に黒くなってしまう。そうなると威力にも影響がある。だからそれをするのは攻撃の直前がお決まりである。


 魔法少女達の周りは静かに激しく変化してゆく。夜の海は轟音と共に大きな渦を巻き始める。

 やがて中心から形の定まらないものがユラユラと揺らめきながら現れる。

 怪獣映画なんかじゃお決まりの鳴き声みたいなものはない。ただ静かに轟音と共のドリーチェは現れる。


 動きが止まって大きな目玉がキョロキョロさせ辺りを見回す。そして魔法少女達の姿を見て初めて声を出す。それは金切り声のような、黒板に爪を立てた時のような、とにかく不愉快な音を出す。今でこそみんな慣れたが初めて聞いたときは歯がガッチャガッチャ鳴って嫌な気分になったものだ。


 海から出てきたドリーチェは昆布とか若布のような海藻を連想させた。

「今回は無駄にでかいな」ティーナが言う。

 その瞬間ドリーチェはレインボウブリッジを豪快に破壊した。大きな火花と音が辺りに轟く。人々はやっと事態の大変さに気付きパニックになる。当然橋を渡っていた車や電車までもが海に吸い込まれていく。


「ミアン!」

「分かってるって、グロー。いくよミアン。カードドロー」

 ミアンは背後のカードから三枚引く。

「最初はやっぱりこれ『イノシカチョウ』・・・みんな、時が止まるよ」

 カードは光の粒子に変わって世界中を包み込んでゆく。同時に『カチ』と音が響く。時が止まった合図。

 今ここで動いているのは魔法少女ととドリーチェの周りだけ。それ以外はまるで風景画のようになって止まっている。

 絵画のタイトルは『レインボウブリッジ最後の囁き』

 なんてのは冗談で今世界で動いているのは私達魔法少女とドリーチェだけ。そこだけ時が動く。それも三十分が限界。それまでにドリーチェを倒さなければもっともっとたくさんの人や物が犠牲になる。でも大丈夫、これまで三十分もかかったことがないから。


「早速あたいから行くよ」

 ブーアはドリーチェに体当たりを仕掛ける。左肩を前にして突進する。このポーズはジーアにはとても懐かしい。子供の頃の記憶が蘇る。


 私はこのポーズに密かに名前を付けている。かの有名な赤い彗○シャ○にあやかって『シャア○クの猛攻』  どう?カッコイイでしょ。(アウトかこれ?)


 しかし今夜のドリーチェは形が何時もよりは不定形で妙な弾力があるのか、まるで『暖簾に腕押し』状態で効いていない。ブーアはそのまま弾かれていた。

「なんだよブーアの奴。今度は私がいく」

 次にティーナが両手の炎を赤から青に温度を上げて投げつけた。これもまた効かないが仕方ない。海水で濡れているせいで炎は『ジュ』と音を立ててあっけなく消えた。

「あらら、やっぱ水とは相性悪いな」

 っていうかなんでグローのこと見ているのかな?今はそんなことしている場合じゃないよね。

 そんなティーナの視線は無視して今度はグローが水の矢を放つ。これは少し効いたのかな。端々が切れて貫通した。グローはみんなに向かって「どうかしら」って言ってドヤ顔をした。しかし時間が経つとその切れた部分は修復され元通りになってしまう。


「ちょっとほんと?今日の面倒ですわ。誰かさんみたいに」

 その言葉に反応したティーナはグローのことを睨みつける、がすぐにブーアが間に入ってやり過ごさせた。

「みなさん、作戦会議です」

 ドリーチェが届かないくらい一旦高いところに移動してみんなして頭を突き合わせる。

「さて、どうしたものでしょう。ジーア、どうですか?」

 ジーアは腕組みをしながら暫し考察。さてさて・・・どうしたものか・・・アイデアか・・

「体にダメージし辛いなら直接マルヴを狙うしかない。ってどうかな」

「それならわたくしだって同じこと思いつきました。ですが肝心の場所の特定ができていません」


 マルヴとはドリーチェの核みたいなモノ。ここを破壊すればドリーチェは消えてしまう。いつもは周りの体というか肉体というかを破壊してマルヴを取り出して最後に破壊する。けど今回はそうもいかない。直接いかないと時間がかかってしまうことだけはみんなも同じ意見だ。


「だったらミアンのカードに託そう。ミアンならできるよね」

 ジーアに言われてミアンは目を輝かせて

「もちろん。ジーアの願いはあたしのカードが叶えてくれるから」

 ミアンは目を閉じて意識を集中させて願いを込めてカードをドローする。

「みんなの願い・・・カード達なら分かる。信じてるから」

「いいよジーアの想いが伝わってくる」

 二枚のカードがみんなの前に姿を現す。

「これは『ツキニカリ』だって。じゃあ早速」

 ミアンが指差すとカードはドリーチェに向かって飛んでゆく。みんなはじっと見つめている。


 カードがドリーチェの体の中に消えてゆくと今度は海の中で小さな一点で赤く光る。一瞬だったがマルヴが放った光。


「海の中みたい・・・サンキュ、ミアン。凄いよ、うん」

「どういたしまして。あたしの魔法って凄いよね」

 ミアンはニッコリと笑うといつしか乾いていた銀髪は夜の光を反射して月の光のような色になっていた。

「それで?なんか策はできたのか?」

 じっと見ていたブーアが聞いてきた。ジーアは再び腕組みをして頭の中をフルスロットルに回転させる。


「海水だとナトリウムの反応に時間がかかるかもしれない。理想はやっぱ真水なんだよね。あのさ、ブーアの力でアイツ持ち上げられない?」

「それが策なら。ちとデカ過ぎるが、ジーアの頼みなら。よっしゃ。力ならあたいだからな」

「では、わたくしは何をしたらいいのかしら?」

「グローは念動力でブーアのサポートを。アイツの動きを止めることできる?」

「あら、わたくしにしては地味なことですわ。あと聞くだけ野暮ですわ。でもこの中で一番の念動力を持つのはわたくししかいません。でもそんなに長くは持たないかも」

「グローにしちゃ弱気発言?でも私は期待はしている。グローならできるよな。で、私は?」

「ティーナは体を燃やしてあいつの周りの海水だけでいいから蒸発させられない?」

「こりゃ大変なこと言ってくれてら」

「あら、あなたこそそんな弱気な発言似合いませんわ。やれるんでしょホントは」

「グローに期待されたか。ならやるしかねえ。終わったらきっとビールが美味いだろうな」

 その言葉にグローは何か言いたそうな顔をしたが、今はそんなことは後回し。


「じゃあ。みんなこれでいいかな?マルヴが完全に剥き出しになったところで私がいつものやつぶち込むから」

「ジーアお得意の『ナトリウムボム』でもさ水はどうするの?」

「そこでまたまたミアンのカードの登場」

「カードに何を願うの?」

「雨でも降らせてもらおうかな」


 私達は再びドリーチェの目の前まで降下する。その間ずいぶん派手に周りを壊してくれちゃって。


 まずブーアは左手にしている黄金の腕輪を光らせる。すると筋肉が膨れ上がり体全体に力をみなぎらせる。

 グローは胸のペンダントに触る。彼女の周りの重力が歪む。

 ティーアが右手の指輪を天に翳すと大きな炎が体全体を包んだ。

 そしてジーアは左手に持ったステッキを振る。『NA』と文字が浮かびナトリウムの原子がステッキの周りに集まってきた。

 最後にミアンがカードを一枚引く。いいカードだったのだろう。ジーアにウインクする。

 準備万端。私達魔法少女の真骨頂。魔法がこの世界に満ちていく。


「Action!!」


 グローの掛け声と共にドリーチェに一斉に仕掛ける。手順は完璧。

 動きを制されたドリーチェにブーアが『おおきなかぶ』みたいにドリーチェの先端を掴むと海底から引っこ抜き始める。最初は苦労していたがある瞬間からどんどん迫り上がってきた。


「マルヴが見えた!ミアン、お願い」

「任せて」

 その間ティーナによって蒸発した海水のところだけに豪雨が降り注ぐ。浮き上がったドリーチェの真下は見る見る真水で満たされた海が出来ている。


「これで終わり!ナトリウムの結晶達思いっきり反応しなさい」


 ジーアはステッキを振りかざす。集められた大量の銀白色のナトリウムの結晶達はまるでBB弾の雨となって真水に向かって飛び込んでいった。そして大きな光を放った瞬間、大量に発生した水素で水面は思いっきり盛り上がりナトリウム自身の熱で化学反応を起こし、やがて大爆発した。


 立ち昇る水蒸気に視界が遮られる。ジーアの眼鏡は一瞬で曇ってしまう。毎度のことである。しかしコンタクトレンズはイマイチらしい。

 だんだんと曇りが取れて視界がはっきりと見えてくるし他の仲間の姿も見える。

 みんなで作戦の結果を見る。マルヴが破壊されていれば赤い光を放ってドリーチェの姿は霧散していく。これで一件落着である。今夜の戦いは終了。それからそれぞれ家路に着く・・・はずだった。


「きゃああああ・・・・・」

 突然悲鳴がする。


「誰?ミアンなの?」

 ジーアは眼鏡に付いた水滴を急いで拭いて周りを見渡す。

「大丈夫だ。ミアンはあたいが抱えてる」

 まだ煙っている水蒸気の中からブーアの声がした。

「何があった?ドリーチェは倒したよな」ティーナの声がする。

「後ろ!」

「何?・・・わ!あぶな・・私のスピード、なめてもらっちゃ困る。サンキュ、グロー」

「油断しないことね。まだいるわ。さっきの攻撃は効いてない」

 グローは立ちこめている水蒸気を一瞬にして無数の氷の矢に変えた。再びみんなに緊張が走る。

 そして一点を見つめる。そこにはあの海藻のようなドリーチェの姿はなかった。やはり倒したことに間違いはなかったみたい。でも代わりにそこには今までのドリーチェとは違う姿があった。

 確かなのは人の形をした・・・ドリーチェ?それとも新たな魔法少女?

 海面に立ってこちらを見つめている。目が合った瞬間、分かる。魔法少女ではない。肌にはサブイボが出ている。見るとその左手には真っ赤なマルヴが光っていた。


長々と読んでくださりありがとうございます。

う〜、まだまだ精進が必要ですね。

それでも話は続いていきます。

またアップした際には読んでもらえると嬉しいです。

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