仲間だから 4
シャハトの余裕のある姿は今はどうでもいい。ティーナは自分と向き合っていた。
私が間違っていた・・・・・・
魔法少女になれたことが嬉しかった。なれただけで嬉しかった。他の誰もなろうと思ってなれるものじゃないことに選ばれたのが嬉しかった。でもただそれだけ。
ただの偶然に嬉しくて浮かれていた。自分自身がなりたいものになれなかったことが拍車をかけた。
小学校、中学校、そして高校。高校は何とか志望校に行くことができた。
私は嬉しさのあまりその先を考えていなかった。
大学を目指す頃には随分と選択肢が少なくなっていた。でもまだなんとかなった。
何処でもいい。入れればいいと思っていた。
大学生活を過ごしていく中で私の将来の選択肢はさらに少なくなっていた。だから就職もちゃんとせず一発逆転ミュージシャンを目指した。自分では頑張っているつもりだったのに結局駄目になった。
駄目にならざるを得なくなっていた。
みんな一年後、二年後のことを考える。生き方を真面目に考える。誰もが夢を見ることをやめて自分に合った生きていくためのレールを見つけようと堅実な足元を模索し始める。
会話の内容が次第に夢ではなく、今。そして明日のお昼ご飯、さらには給料の使い道、ボーナスのこと、それから結婚・・・みんな大人になっていた。いや、なろうとしていた。
私一人だけがみんなと足並みを揃えることができないでいる。先に進みたいのにどこに進めばいいか分からない。気がつくと周りには誰もいなくなっていた。
そんな不確定の中で私はティーナの声を聞いた。魔法少女になってジーア達と出会い今まで行動を共にしてきた。
人生に対し途方に暮れていた私に魔法少女は夢と希望を与えてくれた。誰に感謝されるわけでもないことに私は生き甲斐と喜びを見出して今日まで生きてきた。
この関係がずっと続くと思っていた。
けど今はティーナの力を引き出せてないせいで私はこいつに殺されることなる。
何やってんだ私。今はこんな人生かもしれないけど、この先はもしかしたらもっと楽しい、人間としての人生が待っているかもかもしれない。
ここで終わったら・・・いや、終わりたくない。終わりにする理由がない。私はまだ生きている。九 瑠璃はまだ生きている。
ティーナは呼吸を楽にして魔法力を一気に解放していくことだけに集中する。
体中。髪の毛の一本一本。細胞の一つにいたるまで炎が全身を滾り始める。肩の力が抜けたことで今までに感じたことがない魔法力が体中満たしてゆくのを感じる。
「私のせいでティーナに不名誉な死を与えるわけにはいかない。私は死なない。私は魔法少女ティーナ。同時に九 瑠璃でもあるの。私は子供に危ない橋を渡らせないって決めてた。有栖や鏡一郎の人生はまだまだこれからなの。だからあの時大人である私がお前を倒そうって決めたんだ。けど私は自分のこと全然分かってなかった。言われて気がついた。ドリーチェであるお前に言われてね。自分が魔法少女である意味が分かってきた。私は世界を守るの。私じゃないと出来ないの。人生なんて上手くいく時もあればそうじゃない時だってある。でもね。今まで上手くいかなかったこと全部度返ししても魔法少女に選ばれたことは私にとってもの凄く嬉しいことなの。お前にティーナや他の魔法少女の悪口なんて言わせない。いや、言ったこと後悔させてやる」
炎は静かに勢いを増していく。
シャハトは元の姿に戻っていて気品ある顔でニヤニヤしながら見ている。
「ティーナの力を全部引き出せなくてもお前を倒す」
「ククク。お馬鹿な人。けど少しは楽しめるようになったかしら。今度は私の期待を裏切らないで下さいね」
シャハトは体を一回転させるとスジだらけの顔になって声も不気味なほど低くなった。
「来いよ。遊ぼうぜ」
「・・・・・・わかった」
ティーナは自分を信じる。魔法を信じる。そして他の魔法少女達を信じる。
世界はこうやって守られてきた。その言葉を信じて魔法をさらに高めてゆく。
僕達はまったくと言っていいほどアイデアが浮かばない。
相手のことがほとんど分からないのもあるし、みんな心のどこかで飛び出して行ったティーナのことが気がかりだったこともあった。
「なかなか出ないね。もう終わろうよ。そろそろ帰らないとお母さんが心配するんだけど」
「鏡一郎。小学生ってのは自由がないもんだってな。けどもう少し付き合え。せめて何か一つくらい作戦を建てないと」
僕の言葉に『イエス』『ノー』も言わずに口を尖らせていた。
「おれも何も浮かばん。やっぱ実際戦ってみんことにはな」
「そうかもしれませんがむやみに突っ込んでやられたりしたら元も子もないですよ」
くまさんはお茶を淹れ直すために立ち上がった。
「わたくしもなにも。魔法少女達はこのことを一体どこまで知っているのでしょうか?それぞれ聞いてみた方が良いのでは?本当はこうなるのが分かっていた、そんな気さえするのです」
「どうしてそう思うんだ?」
「はい。最初に言ったかと思いますが、何時の時代も魔法少女は一人しかいなかった。それが今回は五人です。もしかしたらもっと増える可能性だってあります」
「確かに僕も最初にそう聞いた。ジーアにも確認済みだ。だけど本当は知っていると」
「ええ。彼女達はなぜ真実を教えてくれないのでしょう。わたくし達に知れると何かまずいことでもあるのでしょうか?」
「僕たちが知ってまずいことって何だろうな。もしそうなら問い詰めてでも聞かないとな」
有栖のスマホがけたたましく震え出す。早く出ろと催促しているように。
「春日からです。くまおばあさま、テレビを点けて下さい」
春日とは有栖の家の執事であり以前僕たちは海に遊びに行った時に車の運転をしてくれたとても上品な方だ。僕たちが魔法少女だってことも知っている唯一の人でもある。
くまさんはテレビを点けた。映し出された画面には緊急情報が生放送で流れていた。
街が火に包まれている画面が僕達の目に飛び込んでくる。
「まさか・・・まさか、これって」
よく見ると画面の中で大きな炎の塊が空中を飛んでは街中に落ちて、それが建物に引火して誰が見ても大惨事になっていた。僕達はすぐに確信する。
「ティーナだわ。わたくし達も急いで変身してください。ドリーチェが・・・シャハトが現れたんです」
「あの馬鹿、ほんとに一人で戦っておるわい」
「無茶だよ瑠璃ネエ、死んじゃうって」
・・・分からなかった。もしほんとうにシャハトなら僕達は奴の出現に体が反応しないってことになる。もしかしてティーナは不意打ちを喰らったんじゃ・・・・・・
僕達は急いで変身をする。
「みなさん行きましょう」
「行こう。ティーナ、死んじゃ駄目だからね」
「すぐカード発動。急いで時を止めなきゃ」
「頼んだぞミアン。これであいつも冷静になればいいがな」
ミアンはいつものように時の流れを止める。テレビ画面の中のリポーターの顔は引きつった恐怖のままその場に固定されていた。
ジーア達は大急ぎでティーナの元に向かう。空中から見ると街が燃えているのが分かる。赤々と音と熱まで伝わってきそうだ。そこだけが時が止まるのを忘れて全てを無に還す勢いで燃え上がっていた。
「おっと・・・どうやら他の魔法少女達も気付いたようだな」
周りの変化にシャハトが気付く。
「こ、これ、ミアンか。来るな、来ちゃ駄目だ」
「そんなこと言う余裕があるのか、ああ?」
ティーナは魔法を高めたことによって格段にスピードがアップしていた。シャハトと同等かもしくはそれに匹敵する位に。
しかし魔法力の消費が半端無い。とにかく今は攻撃を避けるのが精一杯だった。
「ほう。やれば出来るじゃないか。なかなかのスピードだ。俺の攻撃が見えてるようだな。しかしお前が俺に攻撃を仕掛ける隙はない。いつかは魔法力がなくなる。その時が貴様の死の訪れということだ」
「・・・くっ・・奴の言う通りだ。今は逃げるだけで・・・ぐは!」
ティーナはまた攻撃を喰らい高層マンションの一室に飛び込む。
そこは家族みんなでこの事態の行く末に恐怖して逃げ出そうとしているところだ。
その部屋も勢いよく炎に包まれる。
「わ、悪い・・・終わったらちゃんと元に戻すから」
ティーナはすぐ立ち上がると再び外に飛び出す。
いつまでも逃げまわってばかりいられない。いつかやられる。何とか反撃のチャンスはないものか。
その時ティーナはガラス窓に映った自分の姿を見るとガラスの中で本物のティーナが何か言っているように見えた。
「・・・・・・ティーナ・・・何か教えようとしている?」
寒い。冷たい。寒波がやって来ています。
読んでいただきありがとうございます。
手がかじかんでキーボードの打ち間違いが増えること増えること。
じんわりと冷気が身体を浸食していきます。
皆さまも体調にお気をつけ下さいませ。
温かいもの、じゃなくて熱いものが食べたいですね。
さあ、風邪には気をつけて次もアップするぞ。
是非是非よろしくお願いします。




