もう一人。そして世界は動き出す 6
ジーアの言葉にみんなの視線が集まる。
「ほんと?だったら早く教えて。急がないと時間が動き出しちゃうよ」
「分かってるよミアン。で、ブーア。まだ頑張れる?」
ブーアは立ち上がると
「言っただろ。体力が自慢だって。まだいける」
ジーアは笑って返事をする。
説明を始めようとした時、一匹のドリーチェがジーアに襲いかかる。
しかしジーアはこと無く粉砕する。同時に活動限界を迎えたオリハルコンは音も立てずに弾けてしまう。後には名残惜しそうなキラキラとした光の粒子が残っていたがやがてそれも消えた。
ドリーチェ達は間合いを取ってタイミングを計っている。
「本格的な攻撃は向こうも考えているのかな。今のうち。みんな魔法力ってまだたくさん残ってると思うの。実は私、この間いろいろ研究してちょっと試してみたいことがあるんだ。今からやってみてもいいかな?」
ジーアは不敵な笑みを浮かべ、みんなの顔色を窺う。
「なんだよその顔。もしかして凄いことしようとしてる?」
「まあね。成功したら凄い。これはティーナに頑張ってもらうから」
「私?」
「そう。ティーナが鍵なの。魔法力たくさん使わせるけどいいかな?」
「いいかなって・・・それしかないんだろ。だったら私は頑張るさ。任せとけ」
「OK。それからグロー」
「今度はわたくし?何をしろと?」
「私の魔法が上手くいったらマルヴが絶対顔を出す。その瞬間を狙ってあの強烈な雷で打ち抜いて欲しいの。だからその準備をお願い」
「わたくしにも魔法力使わせるわけですね。分かりました。ジーアの言う通り準備をします」
「それとミアン」
「やっとあたし。なになに?あたしは何をすればいいの?」
「ミアンはここにいるドリーチェ達を一カ所に集められる?そんな魔法は出来る?」
「あたしの願いはこのカード達が叶えてくれる。心から願えば絶対できる。そうだよねジーア」
ジーアは頷いて答えた。そしてブーアの方に向き直ると
「最後にブーア」
「待ってました。何でも言ってくれジーア。出来ることは何でもやってやる」
頼もしく凛々しい姿にジーアは『ほんと凄い魔法力』と思っていた。
「私が造りたい原子はちょっと時間がかかるの。だからミアンの魔法が完成するまで私とティーナにはドリーチェを近づけないで欲しい」
「わかった。その程度わけないな。しかしだ。ジーアのいう凄いのが万が一失敗したらどうなる?」
ブーアの真面目な言葉にジーア以外の目が急に不安の色に変わってゆく。
「あっ、考えてなかった。そうだよね、失敗だってあるよね。そうなったらどうしよう」
案外軽い返事に不安という緊張が一気になくなってゆく。
「呑気だな。魔法のことしか頭にないんだろ」
「ホント。自分の魔法を試したくて、それしか目に入っていないようですね」
「失敗したら・・・その時はその時で考えればいいんじゃない?逃げるとか、なんてね」
「ミアンもジーアに負けないくらい呑気だな。こういう思考は男と女の違いなのかね」
ブーアはジーアとミアン、グローとティーナと見比べて見ている。
「まあまあ。失敗のことを考えてもしょうがないっていうか始まらないっていうか。ミアンの言う通り失敗だったらまたその時はみんなで考えましょう。さ、向こうはそろそろ待ちきれなくなっているみたい。みんな準備はいい?」
みんな一斉に『オッケー』と口に出して各々魔法を発動させ始める。
「今から窒素をたくさん集める。合図したらティーナは魔法力を解放。私がいう温度と気圧を造りだして欲しい」
「よっしゃ、何時でもいいぜジーア。気合い十分。準備はオッケーだ」
ジーアとティーナだけその場に残して三人は空に舞い上がる。その動きに合わせドリーチェ達も追うように飛びかかっていく。
「あたしもいくよ。カードよ、あたしの願い聞き届けて」
「あたいももうひと踏ん張り。分身達よジーア達を守るんだ」
「わたくしも負けていられません」
ジーアはステッキを振りかざすと『N』の文字が集まり始める。
ティーナは自身を燃やし気温と気圧を上げていく。真夏の太陽に照らされているみたいに汗が止まらない。
「その調子。でもまだ足りない。もっとよ、もっと上げて」
「まじか?わかった。私もまだまだいけるぜ。今夜はよく燃える」
ティーナが造りだしてゆく高気圧のせいで周りの景色が揺らぎ始める。
「熱いのここまでくる。うわ〜あっちはもっと熱そう。あたしもう汗が止まらない。おふろ〜」
「ミアン集中して。魔法は出来てるの?」
「もう少し。グローこそどうなのさ?」
「わたくしはいつでもよろしくてよ」
全身青色に発光してパリパリと空気が音を立てている。グローの顔はとても涼しげに見える。
「相変わらず・・・こいつら数だけドンドン増えていきやがる。さすがに疲れてきた。まだかジーア、ティーナ」
ジーア達の周りには二人の姿が見えなくなる程の窒素が集まっていた。
ティーナはさらに自身を熱く燃やしていく。赤から白、そして青色に変わってゆく。
「どうだ?そろそろいいんじゃねえ?」
「もうちょっと。もうちょっとだけ頑張って」
「もう少しって・・・あとどれ位なんだよ。さすがに疲れてきた。魔法力だって限界に近いって」
「ほんともう少しなの。気温1700度、気圧110万」
「げぇ、マジ?そんなの出来るのかっていうか私の体、ホント燃えちゃわないだろうな」
ティーナの息切れが聞こえる。本当に限界が近いのかもしれない。
「信じるのよ。自分の魔法を信じるの。大丈夫、ティーナならきっと出来る。私は信じてる。きっと出来るって信じてるから」
「分かったよ・・・そんな可愛い顔でお願いされたら断れるかって。私だって魔法少女なんだ。みんなの期待を裏切れない。頑張るって決めたんだ。魔法少女頑張るって。だから、だからもっと頑張って私の魔法。うおおおおおおおお、燃えろ!みんな燃えちまえ!」
ティーナを包む炎はさらに勢いが増してゆく。たくさんの色の炎が窒素達を包み込んでゆく。
空間は完全に歪んで今にも裂けてしまいそうなくらい揺らいでいた。
「・・・・・・ど、どうだ、ご希望通りだ・・・ジーア・・・」
「凄い、ティーナ凄い。やったね、出来たよ。さあ、今度はこの窒素を反応させて」
「可愛い顔して人使いが荒いな。いいぜ。こいつらをどう反応させればいいんだ?」
「いくわよ。窒素達よティーナの魔法で『ポリ窒素』に変化して」
ジーアは窒素をティーナに向け放つ。窒素達は高温、高圧の中で悶えるように反応を始める。
「ティーナも窒素達にお願いするの」
「お願い?・・・ほらお前達しっかり反応しろよ」
「駄目だよ、もっと優しく。原子達はデリケートなんだから」
「わかったよ。よ〜しよし。お前達いい子だから言うこと聞くんだよ」
「犬じゃないんだから。もっと・・・そうだ。小さい子供をあやすような、そんな感じでやってみて」
「・・・面倒だな。子供をあやすのと犬を手懐ける違いがよくわからんけど、ほ〜ら、ほら。いい子だね。ちゃんと反応できたら良い子良い子してあげる」
ティーナの言葉に少しずつ窒素達が『ポリ窒素』に変わっていく。
「やった!できてきた。その調子よ」
「・・・そりゃよかった・・・これで終わるんだな」
ジーアは出来上がったばかりの『ポリ窒素』を優しく抱き上げて
「見てティーナ。出来たの。ティーナのおかげで成功したの」
「もうヘトヘト・・・っだつうの。失敗したら報われねえ」
ティーナは魔法を止めるとその場に腰を下ろした。
「あ〜喉乾いた。おおい、できたぞみんな。で、それが凄いことなんだろ」
頷くジーアの顔は喜びの笑顔で溢れている。ジーアは上空で戦っている三人に目を向けて
「みんなお待たせ。こっちは成功した。そっちは?」
ミアンの魔法でまるで地引き網に一掃されたように一カ所にドリーチェ達が纏められていて、そのさらに上空にはグローが控えていてこっちにも聞こえるほどパリパリ音を立てている。
「ふう、どっこいしょ」
その声に振り返るとブーアがティーナの隣に座った。
「疲れた疲れた。なあティーナ、終わったらビールでも飲むか。奢るから」
「マジ、いいねえ。疲れてもう動けない。ジーア、あとは任せた」
ジーアは自信たっぷりの笑顔で
「二人とも見ててね。この『ポリ窒素』凄い威力なんだから」
「そうじゃなきゃ頑張った甲斐が無いってもんだ」
「そういうこと」
ジーアは『ポリ窒素』を持ってドリーチェ達のところまで飛んでゆく。そして窒素達に想いを込めて敵に放つ。
「ミアン危ないから離れていいよ。グローももっと上に」
二人ともジーアの言葉で距離をとる。
ジーアは見届けてからステッキを構えて『ポリ窒素』がドリーチェの網に入っていくのを確認して
「思いっきり弾けて。いっけ〜、起爆」
次の瞬間魔法少女達の視界は真っ白に変わる。
眩いばかりの発光に魔法少女達は一同目を閉じる。一瞬間静寂があった後・・・
もの凄い音と共にもの凄い爆風が襲いかかってきた。その風圧にジーアの眼鏡は粉々に吹き飛ぶ。それだけじゃない。魔法少女達はそれぞれ自分の意思とは関係なくドリーチェと共に吹き飛ばされた。
「ぐああああ・・・何が起こった?」
「どわあああ、ちょ、ちょっと・・・」
「うわあああ、これってヤバくない?」
「きゃあああ、これって・・・これって一体何をしたの、ジーア」
「み、みんな・・・だ、大丈夫・・・・眼鏡が・・・眼鏡が・・・・きゃあああああ」
全てが真っ白の光の中に溶けていく。
体も、意識さえも・・・・・・
12月23日。本日はイブイブということですね。
読んでいただきありがとうございます。
今日がイブイブというからには冬至の昨日はイブイブイブ(バカだなホント)
そんなんあるか!!
ということでクリスマスイブの明日はいよいよ武道館です。(どうでもいい情報)
皆さまもいろいろご予定あるかと思いますが楽しみましょうね。
次回もよろしくお願いします。




