もう一人。そして世界は動き出す 5
『魔法原子』
僕とジーアが二人で模索して集められるようになった原子のこと。
自分達の魔法をもっと深く知るためにおのおの個別に自主練をしたおかげで見つけることができたものだ。結果、グローもミアンもティーナもみんなオリジナルの魔法を少しずつ身に着け始めていた。
僕も空いている時間を使ってジーアに変身して鏡を片手に本物のジーアと会話しながらいろいろ試したのだ。
しかし
ただ原子を集めるだけではやはり限界がある。自分が引き出せる魔法力も制限のせいで100%フルパワーを出せないせいもあるからだ。
「ジーアはアルガトネオルで戦う時はどんな風に戦ってたの?」
今はこうやって普通に話せているが、最初の頃は独り言みたいで変な気分がしたものだった。
「それは仁と一緒。他の魔法少女の手を借りていろいろな物質に合成してもらうの」
「もしジーアが一人きりだったら?他に手を貸してくれる魔法少女がいないとしたら?」
「私の場合ほとんどがサポート的になるから一人になったことはほとんどないの。もし一人で戦わなくちゃならない時は一旦引く。そして他がやってくるまで待つの」
なるほど・・・私は考える。ジーアも一緒に考える。
「ねえ、一人でもすぐに戦えるようなやり方ってないのかな?」
「考えたこともあった。けど私には思いつかない。仁は何かある?私とあなたは波長が合ったからこそこういう関係になった。私はあなたを助ける。だから仁も私を助けて欲しい。仁なら何かいいアイデアが出ると思うんだけど」
私はまた考える。意識の向こうでジーアがじっと答えを待っている姿が鏡から見える。
「ねえ、もしって話になるかもだけど聞いてもらってもいい?」
「うん。何か思いついたの?」
「あのね。こういうのってどうなのかな。私達の世界には色々なお話やゲームなんかがあって、そこには当然のように魔法が出てくるの。その魔法っていうのがね、ほんと理想そのものでやりたい放題。出来ないことがないってくらい完璧なの。でも実際の魔法って結構出来ること出来ないことがあって、っていうか魔法があること自体驚きなんだけど、制限だってあるし。魔法は信じないと駄目ってジーアが私に教えてくれたよね。だからね、もし信じることで出来るならこういうのはどうかな。あのね、架空の魔法もあるけど架空の原子もあるの。この世界では架空かもしれない。けどアルガトネオルにはあるかもしれないしどこか遠い世界にはあるかもしれない。そういう原子が幾つかあるの。神話や古文書や伝説に必ず出てくる原子があって、そういうのって集めることできないかな」
「え〜と、それって何なの?私が知らない原子があるの?」
ジーアが驚きと期待に満ちた瞳で聞いてきた。
「だ、だから全部空想なんだって。この世界だと。だからそういう原子も心から信じれば作れるんじゃないかって思ったんだ」
ジーアにはそう言ってみたものの、私だってこれが現実になればどんなに凄いことかと思うときっと鏡の中のジーアと同じ位、私の瞳だってキラキラしているに違いない。
「その原子ってね『オリハルコン』って言って、遥か昔、この地上にもっとも文明が発達していたアトランティスってとこにはあったっていう言伝えのある物質なの」
私の言葉にジーアは少しだけ考えて
「・・・オリハルコン・・・それって聞いたことあるような気がする」
「ほんと?」
私はびっくりして聞き返す。ジーアは記憶を辿るようにもっと深く考えて
「私が魔法少女として生まれ、この能力を引き継いだ時・・・・」
私はさらに驚いて、思わずジーアの言葉を遮ってしまった。
「あ、あのさ、ちょっと待って。ジーアって魔法少女として生まれた時のこと憶えてるの?」
私の勢いが凄かったのか、ちょっとだけ面食らっているジーアの顔がある。
「憶えてるっていうか、何て言ったら分かるかな。私達魔法少女はその存在になる時に魂のままアルガトネオルの門『ドリーオハト』をくぐるの。その時にかつての魔法少女だった知識をランダムに刷り込まれる。つまり引き継ぐの。だから誰に習わなくてもすでにその力は私のものになるわけ。けど全てのことが鮮明に刷り込まれるわけではない。だから霞んでいる記憶だってあるの。今、仁から聞いて私の記憶の中で霞んでいた一部が鮮明に蘇ってきた。分かるわ。オリハルコン。使える。きっと私と仁なら使える」
私はジーアの言っていることが上手く理解出来ない。魔法少女として生まれる?魔法を引き継ぐ?だったら引き継がれた方の魔法少女って?
「ちょっと、聞いてるの?」
「え、ご、ごめん。魔法少女って結構複雑なんだって思って。大丈夫、ちゃんと聞いてる」
「あのね確かにオリハルコンを作ったことがある。今の時代よりず〜と昔。私じゃない前のジーアの頃。でもこれってかなり特別な原子みたいなの。かつてあったもの。あったであろうもの。でも確かにあったもの。これは人間と魔法少女の強い想いが重なって初めて集められる原子。魔法原子って呼ばれてたみたい」
「魔法原子?初めて聞いた」
「そう、魔法原子。私も初めて知ったわ」
鏡の中のジーアはにっこりと笑った。同じように私も笑った。
それからの僕とジーアは心を一つにしてオリハルコンを実現することに精進した。
努力の結晶が今、形となって、ここに顕現する。
ステッキの周りには『Or』の文字が躍っている。通常よりもたくさんの魔法力を使ってやっと実現する魔法原子。こんなに魔法力使うなんて・・・フルマラソンを走るほうが簡単に思えてくる。
「さあ出て!オリハルコンソード!」
集まったオリハルコン原子はステッキを包むように結晶化していく。
やがて・・・青く澄んだ色をした細身の刀身になる。とても軽くて切れ味は申し分無い。
私は、ううん、僕は小学生の頃嫌々ながら習っていた剣道がこんな所で役に立つなんて思っていなかった。このことばかりは祖父に今では直接言えないが感謝したものだ。
しかしこの魔法原子。ミラクルだけど欠点も多い。
それは先ず時間だ。もって一〇分。酷い時には三分も保たない。どうやらその時の魔法力とか精神的なことが関係しているらしいが直接の原因はよく分からない。
それに集中力も必要になる。少しでも集中が途切れるとウエハースのように簡単に折れてしまう。
さらに。
一度使ったらある程度時間をおかないと駄目だということ。連続での使用は出来ない。
それでも物理攻撃が出来る。ジーアは一人になっても戦えるという最大の武器を手に入れた。
「お待たせ。見てよこれ。はっきり言ってノーベル賞ものだね」
ジーアは美しい刀身にうっとりっとしている。はあ〜これを発表できたら世界中びっくりさせることだってできるのに・・・残念。
ジーアは次々とドリーチェを粉砕していく。ドリーチェ達は剣に触れた瞬間に粉々になっていくのに、そのどれもが肝心のマルヴを持っていない。
「こいつら・・・本体はどれ?」
他の魔法少女達が粉砕するドリーチェも皆マルヴを持っていない。随分倒したがそれでも数は一向に減らず、むしろ増えているようにさえ感じることができた。
「どういうことですの?」
「これだけ倒してもまだ終わらねえ」
「あたし、もう疲れた。帰りたい」
ミアンは集中力がなくなっている。カードが大分的外れになってきて避ける手間が増えていた。
「ミアン、カードもういい。危ないよ」
「うう。分かったジーア。でもさ、これってどうにかならないの?」
ジーアはあらためて周りの状況を見る。ドリーチェの大群は魔法少女達を中心として放射状に連なっている。完全に囲まれてしまっていた。どれもが今にも飛びかからんばかりにその一瞬を狙っている。
「まいったな、こりゃ。何かいいアイデア無いのかグロー」
ティーナもおでこから汗が噴き出している。
「わたくしだって今一生懸命考えているところです。分かっているのは倒したら倒しただけ数が増していく。これ以上いたずらに倒さない方がいいと思います」
グローも息が上がっている。
「ティーナ、グロー、あたいがもっと分身を造る。魔法力が続く限りな。だからその間に有効な手段を考えてくれ」
「ほんとか?ていうかブーアさ、顔が土色になってる。魔法力使い過ぎだろ」
「何を言う。まだまだ若いモンには負けん」
「ブーア、負けるとか負けないとか、わたくし達魔法少女の間では関係ありません。みんなで力を合わせてこそ仲間というものです。わたくし達がブーアを信用したように今度はブーアがわたくし達を信用する番です」
グローの言葉にブーアは『ガハハ』と笑ってその場に座り込んだ。
「それもそうだな。さすがグローはリーダーだけあって冷静に見ている。分かった。あたいはみんなに受け入れられた。だからあたいもみんなのことを受け入れる。今度こそみんなで力を合わせようじゃないか」
その姿を見てグローは上品にニコッとした。
みんなの気持ちが一つになってゆく。そんな感覚がジーアに伝わってくる。
『仲間』って響きの良い言葉だなって思う。ここにいる全員がみんなのこと、そして自分のことを信頼して信用している。それがとても心地よい。
「私に考えがある」
ジーアはまだ実験すらしたことないけど、この仲間達ならきっとできると信じる。
「私のとっておき。みんな力を貸して」
ピンチなのに希望とという明るい光が照らしているように感じていた。
最近はパフェにハマっています。
読んでいただきありがとうございます。
今の季節は苺とか柑橘系とかチョコレートとか
目移りして大変です。
いろんな組み合わせでいろんな味が楽しめるのがいいですね。まさに無限です。
私個人は無限はあるけど永遠はないと思っています。(基準はニュアンス)
物語だって無限の可能性があると思っています。
まだまだその可能性を引き出せていない私ですが
次もあたたかく見守っていただけると嬉しいです。




