初めまして魔法少女です 2
「やっぱ一番乗りはティーナか」
魔法少女で一番大柄なブーアが言う。ティーナは振り返って
「おうよ。ブーア、相変わらずのんびりだな。ま、私のスピードには誰もついてこれないけどな」
「あたいは間に合うように来ているんだ。問題ないはず」
ブーアは言いながら緑色の髪を髪ゴムで纏め始める。
「さあて、今日も気合い入れるか」
「他はまだか?早くしないと私達で終わりにしちゃうぞ」
ティーナの赤い髪が炎のように夜空に揺らめく。
今はまだ静かな夜の中。二人はじっとその場に留まったまま、これから起こることを待っている。
しばらくしてジーアとグローがやっと到着する。
「お待たせ、みんな」
ジーアが二人に声を掛ける。
「ジーア。それとグロー、遅いねぇ。待ちくたびれたぜ」
ティーナはそう言ってから自慢げな視線で私達のことを見る。
「あとはミアン。また最後か。風呂にでも入ってんじゃないだろうな」
腕組みをしているティーナはこのチームのリーダーのように先頭にいる。
その態度が気に障るのかグローも同じように腕組みをして向かい合う。
「わたくしより早く着いたくらいでリーダー気取りはやめていただけないでしょうか。分っているでしょうがわたくしが一番の先輩なんです」
「(チッと舌打ちをして)知ってますよ。そんなこと。先輩は偉大だよね、ほんと。なら私より早く現場に着いてから言って欲しいな」
「早く着くとかじゃありません。相手を確実に仕留めることが大事だと言ってます、よね、わたくし」
「別にリーダーになんかなりたくない。だから初めの時譲ったよな。でも実際は大人と子供」
二人の間には実際に火花が散っている(パチパチと線香花火のように)。
ジーアは慌てて二人の間に割って入る。
(まったくこの二人はいっつもこうなんだから)
「まあまあグロー、いつものことだよね、挨拶みたいなものだから」
「毎回同じこと言われるのはいい加減堪忍袋の緒が切れます。魔法少女に大人も子供もありません。それに早く来たからって、まだ何もしてない。速さだけは認めますが、それしかありませんよね。あなたは」
「はあ?だけってなんだよ。そっちこそ、毎回同じこと言いやがって」
えっと。それってさ、同じこと私にもしてるよね、って言ったら火に油を注ぐになるかな。
私は大人。だから今は彼女の機嫌を収めてもらうことに集中しよう。
「だけ、ですけど、わたくしは寛大に認めているのです」
「だったらもっと褒めて欲しいんですけど。それに奴はまだ出てきていないんだよ。そうだよなジーアにブーア」
確かにまだ静かなまま。日常生活は通常運転で廻っている。
「もう一度言います。リーダーはわたくしです」
そこはどうしてもこだわりたいところってのは分ったから、ってこれも言えないなぁ・・・
「はいはい。グロー先輩、す・み・ま・せん」
ティーナは普段の口調よりねっとりした感じで言う。あ〜あ、油注いでるし・・・
「わたくしより年上だからって馬鹿にしないでいただけますか」
「だから分かったって言ってんじゃん。これだから子供は面倒っくさいなあ」
ティーナも大人でしょ。その言い方・・・面倒になってきたよ・・・(溜息)
「何ですって!あなたみたいな酔っぱらいに言われたくないわ」
火花の音がバチバチと大きくなった。
「今日は飲んでません。匂いしないでしょ。ほら(ハァ〜)」
ティーナは息をグローの顔に向けて吹きかけた。
「ちょっと止めてよ!わたくし本気で怒るわよ」
グローの青い髪が電気を帯びたように逆立ち始める。
一触即発になりそうになって、やっとブーアが割って入ってくれた。
「はいはいお二人さん、もう終わり。そろそろ出てくるよ。まったく少しは仲良くしたらどう?あたい達は仲間なんだから。な、だから終わり。分かった?」
ブーアにこう言われると二人は静かになる。この包容力はまさに年の功だね。
二人の火花は小さくなってやがて消えてゆく。
今度は後ろから声がする。少し慌てているようだ。
「ごっめ〜ん遅くなっちゃった。はあ、はあ、ちょっと迷っちゃって・・・・」
やって来たのはミアンだった。遅刻理由は・・・まあ分かる。心なしか銀色の髪からは雫が溢れている。
「迷った?ミアン、石鹸の匂いがもの凄くします。お風呂ですね」
せっかく収まったと思ったのも束の間。グローの矛先はミアンに向かう。
だけど今は先輩としての威厳を持って冷静さを保とうとしているのが分かる。
そんなことお構いなしにミアンはニコニコしながら
「エヘヘ、バレちゃった。今日って季節外れの暑さじゃん・・・汗、気持ち悪かったし・・・」
グローの顔が少しだけ引きつって、おまけにこめかみ辺りには怒りマークが浮かんでいるみたい。
「そんなの終わってからでいいでしょ」
グローはまだ冷静さを保とうとしている。
いいよ、その調子だよ。聞いた話しだけど
『リーダーって怒らないっていうのが真のリーダー』って社会では言われているんだよ。
「終わったら終わったで入りたいし・・・・ほら、ここに来るだけで汗かいてる・・・ね☆」
ミアンのいい訳は止まらない。自分の気持ちが最優先なのは彼女の持ち味ではあるのだけれど
「ミアン、あなたね『・・・』が多すぎるのよ。物事はもっとはっきり言わないと伝わりません。それに他にもっと言うことあるでしょ、最初に」
グローがキツめの言葉で言うとミアンは軽くホッペを膨らませる。自分が怒られていることをやっと悟ったみたい。それが気に入らなかったのかミアンは無謀にも言い返した。
「グローってさ、今日はなんでそんなにカリカリしてるの。そっか、もしかして今日ってあの日とか?」
そう言い放った言葉にみんな一瞬だが固まってしまう。
グローが少しだけ顔を歪める。おでこの怒りマークはさっきよりもはっきりと浮かんでいる。
それでもグローはまだ頑張っている。声を押し出すような深呼吸してから
両手の親指を躊躇なくミアンの口に突っ込んで横に広げる。
(やっぱりそうなるよね)
ミアンのその顔、可愛いけど笑っちゃいそうになるし、無謀って無駄な対抗なんだなぁ。
「ねえミアン、いや、鏡一郎君。あなた確か小学生よね。あの日って何のこと?ねえ、知ってるの?ねえ、どうなのよ。もし知ってたら懲らしめてあげるから。わたくしに教えてくださらないかしら、さあ」
そしてグローはミアンの口の両端をさらに引っ張った。ミアンは涙目になりながら
「す、すびばせん。知りばせん、ぼういいましぇん。ごめんなふぁい」
「最初から素直に謝っていれば良かったんです。それに知らないことは二度と言わないこと。いい?分かった?今度言ったら、あなたの頭の上に大きな雷、落としてあげるから」
グローはニッコリと笑ってやっと解放する。ミアンは両手で引っ張られた頬をなでなでしていた。
うん。グロー、頑張った。怒りを(多少はあったけど)よく耐えた。
こうやって人は少しずつ大人になってゆくんだな。君ならきっと立派な大人になれると思う。
ジーアはホッと胸を撫で下ろした、のは束の間だった。
次の瞬間、魔法少女達に緊張が走る。
まるで大気が震えているようだ。みんな顔を見合わせてから一点に視線を合わせる。
ジーアが口を開く。
「みんな、やっと出て来るわ・・・ドリーチェが」
読んでいただきありがとうございます。
読み難くないように工夫していますが、それでも読み難かったらごめんなさい。
がんばって精進します。
まだまだですがこれからもアップしていきますので、よろしくお願いします。




