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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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19/29

もう一人。そして世界は動き出す 2

「ほれ、着いたぞ。ここがおれの家だ」

 一同指差す方向を見る。昔ながらの大きな日本家屋で、広い庭には植木が沢山あってとてもよく手入れされているのが暗くてもよく分かった。


「すっご〜、大きな家」

「まあ、田舎じゃからな」

「とても素敵なお庭ですね」

「じいさんが植木が好きじゃたからの」

「今からお邪魔しても構わないんですか?」

「平気じゃ。もう家のもんには来客があると言ってある」

「僕お腹空いちゃった」

「ほほほ。みんなで飯でも食おう。さ、行こか」

 僕たちはくまさんに案内され、とても広い和室に通された。テーブルと座布団が置かれ、既に夕食の用意がなされていた。まるで温泉旅館にでも来た錯覚を起こしかけた。

「ささ、遠慮せず座ってくれ」

 それから家の奥に向かって

「おおい、それから酒も頼んじゃぞ」

「お酒!」

 その言葉に一番早く反応したのは言うまでもなく九 瑠璃だった。

「なんじゃ飲めんのか?」

「い〜え大好きです」

「そっちのおとうさんは?」

「おとうさん?・・・・すみません、僕は下戸なものでして。それから僕のことは仁って呼んでください。僕もくまさんって呼ばさせてもらいます」

「今時のサラリーマンは付き合いが悪いのう。まあ仕方ないか。そっちの何だ」

「瑠璃です。九 瑠璃。瑠璃って呼んで」

「じゃあ瑠璃、二人で飲むか。地元の酒『澤乃井』の辛口純米吟醸をな」

「おお、純米吟醸!『澤乃井』って言ったらこの辺りの有名な蔵元じゃないですか!」

「ほほほ。よう知っとるな。気に入った。他はお茶でええかの」

「あ、あの」

 口を挟んだのは水無月 有栖だった。

「あの、本日わたくし達が呼ばれた理由って・・・・」

「見ての通りみんなで夕飯を食うことじゃ。何かまずかったかの」

「い、いえ。そんなこと。ちょっと意外でしたものですから」

「なら、遠慮はせんでくれ。おれはな、この間魔法少女になったばかりじゃ。だから飯でも食って酒でも飲みながら先輩方と魔法少女のこと聞きたかったんじゃよ。しかし子供と酒の飲めん中年とは思わんかったでな。まあ一人でも酒の分かるのがいてよかったがな」

 くまの今夜の意図を聞いて有栖は納得したみたいに話す。

「分かりました。そういうことならご相席いたします。わたくし達のこれまでのことをお話しすればいいでしょうか」

「そうじゃな。それでリーダーは誰かの?」

「リ、リーダーですか。特には決めておりません。しかし魔法少女になった順番でいったら、まずわたくし。そしてこちらの神谷さん。それに鏡一郎君。その後に九さんになります」

「なるほど。じゃああんただな。順番から言って。確か有栖だっけの。水無月って言ったら、あの水無月のことじゃろ。随分なお嬢様がやってるもんだな」

「わたくしにリーダーなんて・・・」

 有栖は振られたことにちょっとだけ周りを気にしている。それを見ていた瑠璃が口を挟む

「おいおい、お嬢様。キャラ違いすぎるだろ。グローならきっとこう言うな。『リーダー。わたくしに決まっているでしょう。そんなこともわからないのかしら』って」

 結構似ていたので思わず僕達は笑ってしまう。有栖は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「わ、分かりました。わたくしがリーダーでみなさんどうでしょう?」

 素直に受け入れているところを見ると実はまんざらでもないという感じもする。やっぱり有栖って本当は自己主張が強い性格なのかもしれないな。

「まあ、いいんじゃね。グローなら絶対に譲らないだろうし。私は構わない」

「僕も特に異存はない。有栖頼んだぞ」

「僕も。けどお風呂で遅れても怒らないで欲しいな。僕じゃなくてミアンが悪いんだから」

 どうして子供は思っていることを素直に話すんだ?頭というフィルターを通してもらいたい、と言ったところで理解できるようになるにはまだ幼い・・・っていうか僕はこの集団ではこういう役回りが決まっているみたいだ・・・でも仕方ない・・・僕は大人なんだ。

「鏡一郎、その話はまた今度だ。ということで今をもって僕たち魔法少女のリーダーは水無月 有栖に決まりました。拍手!」

 それを合図にしていたかのように、襖が待ってましたとばかりに全開になって次々と料理が運ばれてきた。ついでにお酒も。


 料理はなかなか凝ったものだった。鮎の塩焼きがあり、ジュンサイのお吸い物、鹿肉の朴葉焼き、それから山菜の天ぷらに、自家製のぬか漬け。それに自家製自家精米のお米。

 本当に高級旅館に来た気分になってきた。これで温泉があったらもう言う事無しだったが、さすがに温泉まではなかった。

「もうちっと山入るとあるんじゃが」

 と言われたが遊びに来たわけではないので断った。

 

「か〜!このお酒美味しい!この料理にこの辛口が合うったら。くまちゃんもう一杯貰ってもいい?」

「おお、若いのにいい飲みっぷりだ。ますます気に入った。ささ、グイッと」

「九さんは本当にお酒が大好きなんですね」

「有栖ちゃんはまだまだ子供だから分からないだろうけどさ、大人にはお酒は必需品なんだ。か〜美味い。あと、この鮎も美味しい。この辺でも捕れるの?」

「ああ、全部この辺の山と川で捕れたもんだ」

 東京だって少し郊外に行くだけでまだまだこういった自然が豊富だということを実感する。高層ビルとたくさんの人々の中だけで暮らしていることに息苦しさを感じたらここに来ればいい。僕は癒されている。

「ほんと美味しいです。僕、鹿肉って初めて食べました。臭みとか全然ないんですね」

「僕は食べ終わっちゃったよ。あ〜お腹いっぱい。ごちそうさま。ねえこれからどうすんの?」

「そうですね。では落ち着いてきたことですし、そろそろお話いたしましょうか」

 有栖はそう言ってこれまでのことを話始めた。自分が何時魔法少女になったか。これまでどれくらいのドリーチェを倒してきたか。それから自分も含めみんなの魔法がどんなことが出来るか、などなど。その都度くまさんはうんうんと頷いて、時折グラスを傾けた。それに合わせるように瑠璃さんもグラスを傾け、なくなると自分で注いでいた。顔が真っ赤になっている。

「ちょっと瑠璃さん、飲み過ぎじゃないか?」

「え〜、何言ってんのよ。まだまだ宵の口だって、本番はこれからよ。いっきにトップギアまで入った」

「ほら酔ってきてるよ。おおい鏡一郎、水だ、水」

 鏡一郎は渋々立ち上がって水を持ってきた。

「めんどっくさいなあ。お酒飲んで何が楽しいの?家じゃ誰も飲まないよ」

「おお、鏡ちゃん、鏡ちゃんも早くお酒が飲めるようになるといいねえ」

「ほら水。それよりさあ、ぼくもう帰りたいんだけど」

「帰るって、まだ一時間も経ってないぞ」

「そうよ〜、夜はまだまだこ・れ・か・ら」

「さ、瑠璃さん、これ飲んで。それに僕に寄りかからないでくれるかな。意外と重い」

「重い、ですって?女性に向かって何て事言うのよ!」

 瑠璃さんは渡した水をゴクゴクと飲んで大きく息を吐く。お酒の臭いしかしない。

 僕は溜息をついて周りを見た。


 確かにこのメンバーでご飯とか無理なんだよ、僕たちの繋がりは魔法少女でいる時だけなんだ。そう思って少々うんざりしかけた。有栖はすっかり黙ってしまっているし、くまさんはグイグイ杯を進めている。その割に酔ってる感じがしないのが凄かった。

「くまさんはお酒強いんですね」

「そりゃ長年飲んでりゃ強くもなるさ。どうだ仁さんも一杯くらいなら、ほら、平気じゃろ」

「や、ほんと駄目なんです。匂いでも酔ってしまうくらいなんです。それより、そろそろお開きにしませんか?今夜もドリーチェは現れそうにありませんから」

「なんと!もう終わるのか?なんじゃなんじゃ付き合いが悪いの」

「あら、くまちゃん、私はまだまだ平気よ」

「なら二人で飲むか。酒ならまだまだあるでな」

「瑠璃さんもくまさんもまた今度にしましょう。今夜はとりあえずお開きということで」

 黙っていた有栖が突然声を出す。僕にもその理由が分かる。もちろんみんなだって。

「よりによって。みなさん」

「ああ、まったく、今夜はもういいのに」

「よし!ミアンいくよ」

 鏡一郎はそう言って早速変身した。よっぽど暇だったのだろう。次いで僕と有栖が変身する。

「おれも変身するぞい、さあブーア、おれに力を」

 くまはそう言って左腕の袖を捲り上げそこに嵌っている金色の腕輪に触れて変身してゆく姿をジーア達は見ていた。地響きのような力強さを感じるエフェクトだった。

 初めて見る新しい魔法少女ブーア。その姿は他のどの魔法少女よりも背が高く、たくましかった。

「ブーアって大っきいんだね。私より頭二つはあるよ」

 ジーアは隣りに立って比べてみた。グローもミアンも同じように見上げている。

「みんなちっさいな。見ての通りあたいはこの体と力が自慢なんだ」

「ねえ、ブーアの魔法って何なのかしら?」

「それはドリーチェとの戦いで見せるってことでいいかな、リーダー」

「随分自信がおありなのね。分かりました。それとわたくしの呼び方はリーダーよりもグローでお願いします」

 やっと本来の自分の戻ったような水を得た魚のようなグローだ。

「ほんと性格変わるね。了解、グロー、これでいいかな」

「では参りましょう、と言いたいけれど」

 そう言ってみんな一人に視線を集中する。その先にいるのは当然瑠璃だった。半分寝ている。

「ねえ、ティーナに変身しないの?」

「あれ・・・ミアン?鏡ちゃんは?」

「酔ってるね。ジーアどうしよう」

「うん。酔ってる。どうしようグロー」

「ふぅ。置いていきますか?いたところでわたくし達の邪魔になるだけでしょうから」

「まあ待ちな。こんなにしてしまったのはあたいだ。あたいに任せな」

「どうするんですの?」

「まだそんなに飲んじゃいない。こういう時は嫌ってほど水を飲ませるのが一番だ」

「ならわたくしが」

 グローはずいぶんストレスが溜まっていたのか青い光を放つ。ピリピリと空気が震え出す。

 その気配を察知した瑠璃は急に後ずさりして

「え?水?嫌よ、嫌!大丈夫だから、私大丈夫だから。待ってって」


 瑠璃は『水』という言葉とグローのピリピに敏感に反応して立ち上がった。最初のあれが余程応えたのだろう。何度か頭を振って、またグラスで水を一気飲みする。それから右手の人差し指にしている指輪に祈りを込め始めた。


「え?分かってるって。もう醒めたから、大丈夫、戦えるって」

 どうやらティーナ本人に文句を言われているようだった。

 そして瑠璃を炎が包む。不思議だが炎が他のものに燃え移ることはなかった。ということはこれがティーナのエフェクトということなのだろう、とジーアは見ていた。

 酔いが醒めたとは疑わしいところではあるが無事ティーナの姿が出来上がっていた。

 魔法少女全員変身完了。

 さてさてブーアの魔法の力、見せていただきましょうか。


年末といえば忘年会のシーズンですね。

読んでいただきありがとうございます。

いろいろな諸事情が世の中にあったから

遅くまで営業しているお店が減ったような感じがします。

それでもお店で飲むことは私的には大好きです。

楽しくお酒を、じゃなくて楽しく読んでいただけたら嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

皆さま、楽しい一年だったと思えるように残りの日々も楽しみましょうね。

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