魔法少女として本格始動 2
立川昭和記念公園
ここも新宿の時と同じ。所々灯りが点いているが暗い闇に支配されていることに変わりはない。
誰一人公園内にいるはずもない。とっくに閉門しているからだ。
独特の雰囲気に包まれているからか、恐怖心が妙に煽られる。ジーアは空の上からドリーチェの姿を探してみるがよく分からなかった。
それには理由がある。
新しい眼鏡は完成するにはもう少し日がかかる。度が合わないのであれば尚のこと。
「早かったのねジーア」
グローの声に振り返る。やっぱり水無月有栖の時とは雰囲気が違う。これが有栖の本当の内なる性格なのか、それともグロー自身の正確なのかは分からないが肩に力が入っていない今はとても自然に見える。
水無月有栖の時はどことなくお嬢様を演じているように見えたのは僕の眼鏡が壊れていたせいなのかもしれない。
「ミアンたらどういうつもりかしら」
「どうって?」
「わたくしの呼び掛けに返事しないなんて。聞こえてるはずなのに。やっぱり中身は小学生だから教育しないといけないのかしら」
「まあまあ。もしかしたらホントに聞こえなかったのかも。それよりドリーチェどこにいるのかしら?」
「まだ姿は現していないわね。でも、もうすぐブリオングロードを抜けてくる。ジーアも慣れてきたら分かるわ」
「ま、二回目だしね。魔法だって全然慣れてない、っていうかまだちゃんと使ったことないし。上手く出来るかな」
ジーアはステッキを軽く振ってみる。けれどただ振っただけでは何も起こらなかった。
「ねえ、グローのアイテムって何?」
「わたくしは胸元にあるこのブローチよ。使うときはここに触れて魔法力を引き出すのです」
ジーアは「へぇ」と言って覗き込む。それは金色で羽根が幾重にも重なっているような複雑な形をして真ん中には青色の石が嵌っている。
「ちょっとジーア、覗き過ぎです。自分のこと分かってますよね。セクハラですよこれ以上は」
「ご、ごめん。確かに私は、えっと・・・ごにょごにょだけど。今は同じ魔法少女だよ。」
「そうかもしれませんが、やはり抵抗があるのです。それに今の言葉使いだって。もしかして神谷さんとは・・・(赤)」
グローはその先の言葉がどうしても言い難そうに見える。でもなんて言おうとしているかジーアにはなんとなく分かる。だからと言って言葉にすることはしない。大人だから。
「えっと。そのことなんだけどさ。変身しちゃうと自然とこういう話し方になるの。もしかしてこれってジーア自身の性格が反映しているってことなのかも?グローだってそう思わない?」
「・・・確かにそういう感じはしています。敢えて否定はしませんがジーアは影響受け過ぎだと思います」
「・・・でも、このカッコでなら許されもいいんじゃないかな」
ジーアの声はだんだん小さくなってゆく。仕方ないじゃん。この方が自然なんだから・・・って言ってもきっと納得しないしないだろうな。
「そろそろかしら」
グローは公園の方に鋭い視線を投げ掛ける。ジーアも見るがやっぱり分からなかった。
その時瞬間。二人の横をもの凄いスピードで横切った影があった。
「きゃ!何?ドリーチェ?」
ジーアは凄い勢いでめくれ上がろうとしているスカートを両手で押さえ込んだ。グローは冷静そのものでじっと見つめている。
「あれは魔法少女よ」
「魔法少女?ミアン?」
「違いますわ。新しい魔法少女でしょうか」
「新しい魔法少女?また?」
「わたくし達も行きましょう」
「う、うん。」
ジーアとグローは上空から魔法少女を目で追った。そして二人の視線が捉えたのは赤い髪をした魔法少女だ。彼女は地面に降り立つと振り返って二人が降りてくる待っているかのようにじっと見つめている。
「やっぱり」
「新しい魔法少女だ。えっと、私とグローとミアンでしょ、だから四人目」
顔を見合わせてお互い頷くと新たな魔法少女目指してゆっくりと降下しはじめた。
降り立つとすぐにグローは相手を見据えたまま一歩前へ出る。
「随分なご挨拶ですね」
グローはそう言って相手をじっと見た。ジーアも少し後ろから近づいて
「初めまして。私、ジーアよ。よろしく。ねえ、あなた名前は?」
握手しようと右手を差し出した、が、相手は手を出そうというアクションすらない。ただ薄らと笑っている。
苦笑いするジーアは彼女のことをじっくり見てみる。赤髪はまるで火が燃えているように鮮やかで、瞳の色すらキラメキのある黄色をしている。
赤髪の魔法少女はじっと二人のことを見ている。けれど瞳の焦点はどこを見ているのか分からないほど曖昧だ。しかも自分が話かけられているに、自分の掌を見たり飛んできた空の方ばかりに気をとられているようにも見える。
ジーアはグローに寄り添って小声で
「えっと・・・ねえ、グロー、この人どうしたのかな?」
グローは一歩近づいて赤髪の真正面に立つ。
「あなた、聞こえてます?わたくしはグロー。あなたのお名前を聞いてるのです」
「・・・・・・・」
顔は見ているのにやはり自分のことと思っていないみたいで完全にスルーしている。
「あ、あのね、私達一応仲間なの。分かるよね・・・あなたも私達と同じ魔法少女でしょ?違うの?」
「・・・・・・・」
ジーアも言ってみるが梨の礫だった。
「いい加減にしてくれませんこと?名前くらい名乗ったらいかが?」
「まあまあ、グロー、怒らない、怒らない」
会社という社会経験がモノを言う。喧嘩は始まったら終わりだ。その前に鎮める。何度その役回りだったか。これくらいはまだレベル1。
ジーアはその経験でグローのことを宥める。そして思う。グローって結構短気かもしれない。
「・・・・・ああ、名前・・・だっけ?」
二人の言葉が伝わったのか、赤髪はやっと二人のことを認識したみたい。
「喋った!そう。あなたの名前は何て言うの?」
しばらく考えて・・・答えを出すにはちょっと時間が掛かる。
「・・・・・名前・・・私は・・・・・・『九 瑠璃』だよ〜ん」
「あなた!ふざけてるのですか」
グローは声を荒げる。ジーアはまた『どうどう』とグローの腕を持って抑える。
「いちじくるり?・・・えっと、それって変身前の名前よね。私達が聞いてるのは魔法少女の名前なの」
「・・・・魔法?・・・少女?」
「そう、そっちが聞きたいな」
また赤髪は長考しているけど考えているようなフリをして実際は考えていないように見える。
「・・・・何だっけ・・・う〜ん・・・確か・・・」
今度は頭をボリボリと掻きだすし、おまけに大きな欠伸もした。
ジーアが抑えている手にグローの怒りの震えが伝わってくる。体全体が青色に光り出すと周りの空気が電気を放電しているみたいにピリピリと音を立て始める。
赤髪が答える様子はまだない。さすがにジーアも困り果てた。
「何か様子が変だよね。平気なのかな?」
グローは大きく溜息をついてジーアから腕を解くと
「もういいです、放っときましょう。ジーア、わたくし達はドリーチェを探しましょう」
「・・・・・そうだドリーチェ。ドリーチェだ!!!」
赤髪は髪を逆立てて叫んだ。ジーアは思わずビクっとして
「急に大きな声出さないでよ。ビックリするじゃない」
今までに比べたら目線がしっかりとしていて、おまけに全身が赤く光り出している。
「さあ、ドリーチェってどっち?お前か?それともこっちか?」
「何、この人。急に元気になってきたみたい・・・あのさ、私達じゃないから。私達も探してるの。それより名前思い出した?」
ジーアが宥めるように聞いてみると、すぐに答えようと頭に手を添えて
「名前は・・・えっと・確か・ティ・・ティ・・・ティ・・・・そうだ!ティーナ。ティーナだ。ティーナ、ティーナ、私はティーナ、うん、うん」
答えが出たことにとても喜んでいる。おまけに小躍りしているようにも見える。
「そうなんだ。あなた、ティーナって言うのね」
「ああ、そうだティーナだ」
今度は大きく笑う。
「ねえ、やっぱり変だよこの人」
上空から声がする。ミアンがやっと到着したらしい。
「ごめ〜ん。って遅れちゃった?」
ミアンはちょうどジーア達とティーナの間くらいに降下してきた。ジーアはミアンの様子を見て
「うん、まあ、まだドリーチェ出てないから。ていうか何でそんなに髪が濡れてるの?汗?」
ミアンの髪からはポタポタと雫が落ちて肩の辺りの服は濡れていた。
「違うよ。お風呂入ってたんだ。急に呼び出すから、慌てて出てきたんだよ。頑張ったんだから褒めてもいいよ」
ドヤ顔でミアンが言うとグローがジーアの目の前に立ちはだかって
「ちょっと、あなた!お風呂ですって!」
「グ、グロー、お、落ち着こう」
「分かってます。それで?お風呂って、まさかその姿で?」
「そうだよ。ミアンってお風呂大好きなんだって」
なんて屈託のない笑顔なのだろうとジーアが思っていると
「そう言う問題じゃない。大体あなた男の子でしょ。何とも思わない訳?」
確かにグローの言う通りだ。っていうかこの服って脱げるのか。
「別に平気。女の裸なんて母ちゃんので見慣れてるって」
「母親とは違うでしょ!」
グローはどうしたらいいか分からずに混乱しているみたいに見えた。ここは落ち着けないと
「まあまあ、そのことはまた後にして、今はドリーチェの方が・・・」
「確かにその通りです。ああ、もうまともなのはジーアだけなの?あ〜ジーアだってちょっと変なのよ」
ミアンは無自覚に火に油を注ぐ。
「グローってさ、怒りっぽいんだ。そんなんじゃ男の子にモテないよ。あたしの魔法で治してあげよっか」
あ〜ここはカオスだ。ジーアはだんだん面倒になってきていた。
「喧嘩売ってます?余計なお世話です!知らないなら教えて差し上げます。本当のわたくしは大人しいお嬢様ですから」
「自分で言っちゃうんだ。私も自分のこと否定はしないけどさ・・・」
「だって魔法少女なのよ。なんで男性なの?大体、男性が女の子に変身するってことが変ですわ。せめて魔法少年なら百歩譲って認めます。魔法少女達は絶対何か間違っています」
確かにグローが言っていることは正論のように聞こえる。しかし魔法少女的世界観で考えたら何が正論なのかジーア自身もよくわからなくなってくる。
「そんなのあたし達のせいじゃないもん、ねえジーア」
ミアンはジーアの腕を取ると雫はジーアの服にもかかったがそんなこともうどうでも良くなっていた。
「それに、四人目はやっと女の方と思ったら変な人ですし」
「四人目?ほんとなのジーア」
「うん。ほらそこにいる赤い髪の、ティーナって言うんだって」
「へえ、また仲間が増えたんだ。よろしくティーナ。あたしミアン」
ミアンはティーナに近づいて行ったが直ぐに後ずさりしてジーアの元に帰って来た。鼻を押さえている。
「どうしたのミアン?」
「え!ジーア達気がつかないの?」
「何が?」
「だってティーナってもの凄くお酒臭いんだけど。絶対、酔っぱらってるって」
「酔っぱらってる?」
ジーアとグローは半信半疑で匂いを確かめてみた。本当だ・・・お酒の匂いがする。
「・・・ねえ、ティーナ。あなたお酒飲んでるの?」
カオスの度合いが増したみたいだ。こんなんで本当に世界を守ることができるのだろうか?
ジーアの確固たる決意は音を立てて崩れてしまいそうに気分になっていた。
ガチャガチャしてて読み難かったらスミマセン。
人見知りなので初対面の人とはつい距離を取ってしまう私です。
今回も読んでいただきまして感謝しております。
集められた集団で自然と役割が決まってしまうのは人間の性なのでしょうか?
修学旅行の班分けとか、会社での一時的チームとか。
きっと魔法少女達もそんな感じなのでしょう。
次回もよかったら読んで下さい。よろしくお願いします。




