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ヒメコ  作者: 92コ
8/8

チケット紛失

 「お掛けになって、お待ち下さいませ。」と言われて、長椅子に腰を掛けてそろそろ1時間になる。


 ヒメコは、心の中では、

仕方ない事、待っていたらきっと入場出来る。と何度も自分に言い聞かせていた。

 自分がチケットを無くしてしまったから、待たされているのは、重々承知している。手帳に座席番号をメモしていたので言ってみたが、入場は、待つよう言われた。


 早く家を出たから、さらに待つ時間も長かった。



 昨日、探し物をしているすみれに

「何か、無くしたの?

 整理整頓は、大事ね。」と言ってしまったヒメコだった。

「昨日、市役所からもらってきた書類よ。記入して送り返すんだけどね。」

「ちゃんとしまったの?

 帰ってから、他の事始めたんでしょ。」と何気なく母親気分で言うと 


「帰ってきた途端に

 『何してたの。

  遅かったわね。

  お腹すいたわ。』って

 ヒメ様に言われて慌てて

 夕飯の支度をした私がバカでした。」と叱られてしまったが、まさか、そんなすみれにチケットが無いなんてとても言えなかった。


 受付ロビーで大きくため息を付きながら、亡くなった夫とも何回か、寄席に行った事を思い出していた。


 ぼんやり人の流れを見ていたヒメコ。その中から、鈴木正雄が現れた。オレンジジュースとワンカップ、柿の種を持っている。


「ヒメ、お待たせ。

売店は、凄い行列でやっと買えたよ。

君は、オレンジジュース。

今日の落語家達は、結構人気あるね。」


「お父さんありがとう。

 人多いわね。

 3番めの落語家は、最近   

 よくテレビに出ているものね。」

「笑点にも出始めたしね。  

 テレビ出ると稽古の時間が減るのか、落     語の技が落ちる気がするなあ。」

「でも今日の人は、チケット取れない人気よね。」

 「そうらしいな。

 子供達が、それぞれに過ごし始めたら、  また寄席通いしたいね。」

「楽しみだわ。」

若い頃の二人を思い出した。


「お客様〜。」遠くから声がした。

「オレンジジュースね。」とヒメコが返事をしてしまい、

「お客様、オレンジジュースは、自販機に  ありますよ。


 大丈夫ですか?

 H列の13番でしたね。

 お客様の手帳のメモ通り、お席誰もいらっしゃいませんので、入場して頂いて結構 ですよ。

どうぞ、こちらです。」と係りの人に言われ我に返った。


 私、今日は、一人だったわ。






読んで頂きありがとうございました。

次回は、少し遅れます。


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