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ヒメコ  作者: 92コ
7/8

寝込んしまう

 ヒメコは、旅行から戻りハイテンションで数日過ごした。同じ出来事を繰り返し話すのですみれの方は、内容をすっかり覚えてしまった。

スマホで撮った下手な写メは、何度見せられてもよく分からなかった。


 「美味しいお料理ばかりで、全部食べてきたわ。」


 「はもって食べた事ある?

美味しいのよ。あれは、特別な料理人でないと美味しく仕上がらないのよね。もう一回食べたいわ。何処か近くで食べられるお店ないかしら?

すみれにもご馳走したいわ。」


 始めのうちは、すみれも

 「頑張って行かれて良かったね。日頃の行いがよかったかな。

 健康管理だね。

 何が、一番心象的?」など対応していたが、徐々に「うんうん。」だけになった。

 そんな返事にヒメコは、不機嫌になることも無く、気にするでもなくまた同じ話を続けた。



 異変は、一週間後。


 朝、寝室から出て来ない。

恐る恐るすみれが、


 「お母さん、どうしたの?」と声をかけてみると、


 「胃もたれ。寝てるね。」


 「消化薬あるの?」


 「有るから大丈夫よ。」


 すみれは、安心して出勤したが、帰宅しても変わりなく寝ていた。


 「どぉ? 何か食べられる? お豆腐とヨーグルト、バナナ買ってきたわよ。」


 「いらないわ。」


 「日中何食べたの? お薬飲んだの?」


 「薬は、嫌いだから飲んでないの。」


 「若い時と違って薬を飲んで早く治すこと考えたら良いと思うよ。辛い状態が長く続くと体力なくなるよ。」


 「でもね、一つしかないから、後無いのよ。もしもの時に取って置かないと。」


 「いつがもしもの時なの?

今じゃないのかな。

 酷くなってから、強い薬を沢山飲むより、早目早目の対応が大事でしょ。薬局なんて近くに有るんだから、買って来るね。」


 かつて『薬に騙されるな』という本を読んでから、薬は、「百害あって一利なし」と思い込んでいるヒメ様だった。


 「良いのよ、薬は、いらない。」と言うヒメコの声を無視して、夜の薬局へ行った。


 すみれは、疲れているのに、空腹を我慢して、お母さんのために買いに行ったのだと、恩着せがましく言い続け、やっとヒメ様に薬を飲ませた。


 翌朝は、いつも通りの朝食を食べられ、すみれもほっとしたが、帰宅するとまた寝込んでいた。


 「どうしたの?調子戻らないの?お昼ご飯食べられた?」


 「大丈夫よ。薬も飲んだし。」


 すみれの用意した夕飯は、よく食べたので安心していた。

 しかし。

 翌日もその翌日もすみれが仕事から戻ると布団にうもれていた。


 「何だか起きるの面倒だもの。こうして布団に入っていると楽チン。ずっとこのままがいいわ。夕飯頂くから、出来たら呼んでね。」


 そこですみれは、翌日、わざと職場から

 「お母さん、悪いけど、仏壇のお花の水替え忘れたの。替えておいてもらえます?」とLINEをした。


 少しでも布団から出てもらう作戦だったが、何時間経っても既読にならないので同じ文章をまた送信してみた。これでは、仕事が進まない。


 そんなすみれを知っていたかの様に妹のあんずから、


 「宅配便でお母さんにお惣菜送るね。お一人様のお昼ご飯のおかずにしてね。」と連絡が来た。

 「じゃ、午前中に届く様にしておいてね。」


 今どきは、便利で妹の作ったお惣菜が、密閉容器に入って届く。有り難い。

 ヒメ様には、丁寧に説明してすみれは、出勤した。


 職場からヒメコにLINEをする。


 「あんずちゃんからの宅配便届いた?

 お惣菜来た?お昼ご飯ちゃんと食べてね。」


 11時頃から何度か送るが、なかなか既読にすらならない。12時半過ぎて再び


 「宅配便届いた?」と電話をしてみた。LINEに気づかないヒメコだが、電話には、すぐ出るタイプで

 「まだよ。」と返事。

 

 すみれは、不信に思った。妹は、宅配便の伝票『午前中配達』にチェックしなかったのだろうか?


 すみれは、あんずに

 「ごめんね。折角送ってくれたけど、宅配便まだ届いていないみたいなの。夕飯に頂くからね。」LINEを送った。


 すぐ既読になり返信も来た。


 「さっき、お母さんから電話でお礼言われたよ。食べたみたいよ。」

 

お読み頂きありがとうございます。

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