ヒメコ、旅に出る
遊び歩くのにいい季節になり、母は、『熟年のゆったりのんびり旅2泊3日』に予約を入れた。京都方面に観光と食べ歩きの旅行ツアーのようだ。
東京駅集合で新幹線で向かうツアーだけれど、母は、小田原駅からの途中参加。我が家の最寄り駅は、小田急線なので乗れば、小田原には、間違える事なくたどり着ける。家を出る時間も東京駅から参加するより、1時間半から2時間程遅くて間に合う。
ツアー内容も長時間歩く事もなさそうで安心した。豪華な料理を頂くのを楽しみにしているが、若い頃より食が細くなっているのだから、食べ残しするのだろう。
私は、数日前から天気予報をチェックして洋服、着替えのアドバイスを始めた。着ていきたい服がコロコロ替わる女心か、姫精神か?
仕事から帰宅すると、先日とは、違う洋服が掛けられ、意見を求められる。疲れ切った私には、ハード時間。
「行く時は、今日みたいな気温だから、もう一枚上に着る服を考えたら?
そして2日目は、気温が、上がるから半袖に薄手のカーディガンかな。念の為ネッククーラーも持っていったら?」と細かく言うと、
「私、これ気にっているからね。それに半袖でクーラー効くと寒いでしょ。」と反論が長引く。だんだん面倒になり、全て
「いいね。歩き易いのが一番だよ。」と応えた。その方が、彼女の機嫌を損なわない。
そして、当日は、予定より30分以上も早く家を出た。
あんなに念を押したが、先程からLINEが既読にならない。家をスタートして2時間も経てば新幹線に乗っているはずなのに、どうしたんだろう。LINE電話をかけてみたが、やはり出ない。
こんな事なら、仕事を休んで小田原まで付き添えば良かったと心沈む。
一方、ルンルン気分で家を出たヒメコは、小田急線のホームで見知らぬ人にたずねた。
「すみません、この切符持っているんですが、どの電車かしら。」
「あぁ、小田原ね。この停まっているのだよ。すぐ発車しますよ。」
ヒメコが飛び乗るとすぐに乗車口が閉まった。タイミング良く乗り込めたが、座れない。そこで思い出した。
自分は、駅まで行き、特急ロマンスカーの切符を買い求めたのだ。その切符を持ちながら、普通の急行電車に乗ってしまったのだった。
急に動悸がして床に座り込んでしまった。
「大丈夫ですか?」
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