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ヒメコ  作者: 92コ
2/8

叔父がやって来た

数日すると叔父がやってきた。


「お姉さん、入院だって?

 いつからだよ。どこが悪いって?

 手術するのか?」


「あら、吾郎。

 耳が早いね。」


「ハナ子から、電話もらって、驚いて来たんだよ。」


 母は、7人兄弟で上から、5番めで長女。吾郎叔父さんは、6番め。ハナ子叔母さんは、末っ子で鹿児島に住んでいる。多分母は、入院予定を妹のハナ子叔母さんに電話で知らせたのでしょう。

 母は、安心させるつもりでも、遠くから心配して吾郎さんに連絡したことでしょう。

 急な入院の知らせを聞いたら心配すると言うことなど、母は、気がまわらない。


「心配いらないわよ。入院できるのだから。」と着替えを入れたスーツケースを指差した。


 吾郎叔父さんにまずお茶を出す。


「すみれ、いんだよ。

 気を使わんでくれ。」


「粗茶でございます」


おどけて言ったりする。


 母は、これまでの経緯を丁寧に話し始めた。二人とも時間がたっぷりある暮らしをしているので話が、戻りながら飛ばしながら、繰り返しながら進んでいく。


 私は、吾郎叔父さんにお茶だけでは、まずいと思いスナック菓子を添えた。さらに仏壇にあったリンゴの皮を剥き始めた。


「そのリンゴは、どこのだ?長野か?」


「青森よ。美味しいのよ。」


「青森のリンゴは、なかなかこの辺で売ってないだろ。」


 今や何でも通販で買える。なんて説明は、面倒なので、


「薄く切れば歯に合いますかしら?」


 八十歳に近い二人には、リンゴの丸かじりなんてさせられない。リンゴ半分を薄切りにして二人に出した。話は、入院の話に代わって、親戚の近況になっていた。いつもなら、私が主語の無い母の話に付き合うのだが、叔父が来たことで助かる。

 私は、残り半分のリンゴを庭を見ながら食べる事にした。


 お昼近くなってもエンドレスな2人に

「何かお昼ご飯用意しましょうか?叔父さんどうします?」と聞くと


「いや、俺奢るからお寿司とってよ。美味しいのがいいな。」


 気前がいい。


 しかしお寿司が届くと


「俺払うぞ。」と言いつつ財布を探す。

「あれ、俺の財布は? あれ上着どうした?」等とあたふたしているので、私が立て替える。

 だいたい手ぶらで来たし、上着なんて着て来なかった。


「悪かったな。明日払いに来るからな。すみれちゃんに支払わせる訳にいかんよ。」とペコペコ頭を下げてくれた。


 でも待って、これと同じ事が数年前にもあったわね。あの時のお金、まだ返してもらってないわ。

 そんな心の声が、漏れないように美味しくお寿司を頂いた。

 忘れられる幸せな叔父といつまでも忘れられない気の毒な私。 そんなとこかな。


 お寿司代は、そのままだったけれど、数日後、叔父が病院に行き、入院は、見送る事になった。

 私が、母に意見を言っても母は、自分の考えを押し通す。以前と意見が変わっても自分の思いを優先する。そんな母の考えを叔父さんは、覆すことが出来るのだから、頼もしさを感じる。


お読み頂きありがとうございます。

続きは、また来週の予定です。

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