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ヒメコ  作者: 92コ
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11/11

観劇に

ご無沙汰しました。

新しいエピソードを書きましたので、楽しんで頂けると嬉しいです。

「どぉ、これ。このブラウスにこれ。」とヒメコがコーディネートを見せに来た。


 午後から、すみれと隣街に素人のコーラス発表会を行く事になっていた。


 明るめの紺色の地に細かい水色のドット柄。柔らかい素材で着心地がとても軽そう。微妙な長さの袖もクーラーが、苦手の母にぴったりだった。

 確か昨夜は、衿元の大きく開いたライムグリーンのサマーセーターを選んでいた。それが気になったようだった。


「あら、良いわね。この間横浜で買ったブラウスね。パンツとの組み合わせも良いわね。」とすみれが褒めると

「そうでしょ。

この黄土色のズボン歩きやすいのよ。」

 と昭和の言葉で返ってきた。


 『安心の日本製』と書かれていたパンツは、上のブラウスと相性がいい。


 洗濯物を干しながらすみれが褒めると機嫌よく鏡に映している。さらにアクセサリーを探し始めているようだった。


 洗濯物を干し終わり居間に戻ると今度は、優しいサーモンピンクのブラウスに着替えている。


「あら、気が変わったの?」


「それがね。このペンダントだったら、このブラウスの方が映えるかなと思ってね。そうしたら、ズボンは、紺色かな。」


 確かに無地のサーモンピンクのブラウスには、グレーの猫のペンダントが映える。


「そうね。そのコーディネートも良いわね。」とすみれが共感した。


「でも、冷房きいていると困るから、何か上に着るもの欲しいわね。」


 まだまだヒメコは、お洋服選びに時間をかけそうだ。


「慌てないでゆっくり選んで。午後からでしょ。」と言うと。


「私は、あと30分くらいしたら出るの。」

「えっ。そうなの。聞いていなかったわ。慌てて支度するわね。」

「違うのよ。

私は、新宿にバレエ観に行くの。

すみれは、あんずと素人発表会に行って来てね。」

すみれは、聞いたことない話になっていた。

「あんずがお昼頃に車で迎えに来てくれるからね。」


 詳しく話を聞くと、

まず、知人から娘のコーラス発表会があるからとチケットを購入したそうだ。

「勿論最初は、すみれと行くつもりで誘ったのよ。すみれも会った事ある人じゃない。」

 

 確かにそこまでは、聞いていたし、お供しましょうと納得していた。

 しかし、数日後バレエ団のチケットをゲットしたのでコーラス発表会は、あんずに行かせる事にしたらしい。

「聞いてなかったわ。私もバレエ団の方が良かったわ。」とすみれが、言い出すと

「だって1枚しかないもの。

あら、こんな時間ね。少し早めに行くわね。」と急にバックを持って出掛けて行った。


 すみれの方は、慌てて妹のあんずにラインをすると


「あら、聞いていなかったの?始まる前にランチしてとお小遣い預かっているわよ。」と承知していた。


 すみれは、何だか腹立ちながら、一度干した洗濯物を浴室に干し直し、身支度をした。あんずが迎えに来て、今までの経緯をもう一度話した。

 「はじめは、お母さんが行くつもりでチケット買ったのよね。それで気が変わった?

それアリ?あんずちゃんに予定あったら、私どうしたのかしら。お母さんは、勝手なお年頃なのかな。」とすみれは、だんだん早口になっていった。


「お母さん『ボケた』って言うけど今回のお母さんは、なかなかよ。」


「してやられたわ。」


 一緒に住むすみれと違いあんずは、穏やかな感想だった。


「なんか、サザエさんみたいね。」


「私達がまだ子供の頃、隣の分までチケット取るつもりが、お母さん忘れてさぁ。

 あんずちゃん、覚えてる?

うちの分のチケットを隣の一家に譲って

『うちは、親戚の集まりあったの忘れてて』とか言ってさぁ。」

「覚えてるわ。親戚の集まりなんて無いけど、みんなで遊園地行ったね。」


「サザエさんじゃ無いわね。寅さんよ。」


「『男はつらいよ』でハワイ旅行の予約して、近所中に自慢したのに、旅行社の社長が代金をネコババしちゃうのね。

仕方ないから寅さん達は、みんなで行ったふりして、家に閉じこもるの。」


「あったね、そんな映画。」


 あんずと大笑いをして、すみれの不機嫌さもおさまりつつあった。


「それより、お母さん新宿まで一人で行って大丈夫かしらね。」


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