観劇に
ご無沙汰しました。
新しいエピソードを書きましたので、楽しんで頂けると嬉しいです。
「どぉ、これ。このブラウスにこれ。」とヒメコがコーディネートを見せに来た。
午後から、すみれと隣街に素人のコーラス発表会を行く事になっていた。
明るめの紺色の地に細かい水色のドット柄。柔らかい素材で着心地がとても軽そう。微妙な長さの袖もクーラーが、苦手の母にぴったりだった。
確か昨夜は、衿元の大きく開いたライムグリーンのサマーセーターを選んでいた。それが気になったようだった。
「あら、良いわね。この間横浜で買ったブラウスね。パンツとの組み合わせも良いわね。」とすみれが褒めると
「そうでしょ。
この黄土色のズボン歩きやすいのよ。」
と昭和の言葉で返ってきた。
『安心の日本製』と書かれていたパンツは、上のブラウスと相性がいい。
洗濯物を干しながらすみれが褒めると機嫌よく鏡に映している。さらにアクセサリーを探し始めているようだった。
洗濯物を干し終わり居間に戻ると今度は、優しいサーモンピンクのブラウスに着替えている。
「あら、気が変わったの?」
「それがね。このペンダントだったら、このブラウスの方が映えるかなと思ってね。そうしたら、ズボンは、紺色かな。」
確かに無地のサーモンピンクのブラウスには、グレーの猫のペンダントが映える。
「そうね。そのコーディネートも良いわね。」とすみれが共感した。
「でも、冷房きいていると困るから、何か上に着るもの欲しいわね。」
まだまだヒメコは、お洋服選びに時間をかけそうだ。
「慌てないでゆっくり選んで。午後からでしょ。」と言うと。
「私は、あと30分くらいしたら出るの。」
「えっ。そうなの。聞いていなかったわ。慌てて支度するわね。」
「違うのよ。
私は、新宿にバレエ観に行くの。
すみれは、あんずと素人発表会に行って来てね。」
すみれは、聞いたことない話になっていた。
「あんずがお昼頃に車で迎えに来てくれるからね。」
詳しく話を聞くと、
まず、知人から娘のコーラス発表会があるからとチケットを購入したそうだ。
「勿論最初は、すみれと行くつもりで誘ったのよ。すみれも会った事ある人じゃない。」
確かにそこまでは、聞いていたし、お供しましょうと納得していた。
しかし、数日後バレエ団のチケットをゲットしたのでコーラス発表会は、あんずに行かせる事にしたらしい。
「聞いてなかったわ。私もバレエ団の方が良かったわ。」とすみれが、言い出すと
「だって1枚しかないもの。
あら、こんな時間ね。少し早めに行くわね。」と急にバックを持って出掛けて行った。
すみれの方は、慌てて妹のあんずにラインをすると
「あら、聞いていなかったの?始まる前にランチしてとお小遣い預かっているわよ。」と承知していた。
すみれは、何だか腹立ちながら、一度干した洗濯物を浴室に干し直し、身支度をした。あんずが迎えに来て、今までの経緯をもう一度話した。
「はじめは、お母さんが行くつもりでチケット買ったのよね。それで気が変わった?
それアリ?あんずちゃんに予定あったら、私どうしたのかしら。お母さんは、勝手なお年頃なのかな。」とすみれは、だんだん早口になっていった。
「お母さん『ボケた』って言うけど今回のお母さんは、なかなかよ。」
「してやられたわ。」
一緒に住むすみれと違いあんずは、穏やかな感想だった。
「なんか、サザエさんみたいね。」
「私達がまだ子供の頃、隣の分までチケット取るつもりが、お母さん忘れてさぁ。
あんずちゃん、覚えてる?
うちの分のチケットを隣の一家に譲って
『うちは、親戚の集まりあったの忘れてて』とか言ってさぁ。」
「覚えてるわ。親戚の集まりなんて無いけど、みんなで遊園地行ったね。」
「サザエさんじゃ無いわね。寅さんよ。」
「『男はつらいよ』でハワイ旅行の予約して、近所中に自慢したのに、旅行社の社長が代金をネコババしちゃうのね。
仕方ないから寅さん達は、みんなで行ったふりして、家に閉じこもるの。」
「あったね、そんな映画。」
あんずと大笑いをして、すみれの不機嫌さもおさまりつつあった。
「それより、お母さん新宿まで一人で行って大丈夫かしらね。」




