コレクション
すみれが、友人と長電話をしているとヒメコの声がかかる。
「すみれ、すみれ!」
すみれが何をしているかは、考えないから突然呼ばれる。聞こえないふりをしているとどんどん声が大きくなって来た。
スマホを押さえてすみれが
「どうしたの?退院したばかりの咲ちゃんと久しぶりに電話しているの。」と言ったところでそんな事は、気にしないヒメコ。
「後にしてさ、私の襟巻き探して。」
渋々すみれは、電話を切ってタンスの襟巻き探しを始めた。
「買ったばかりの、黒に刺繍のしてあるヤツ。来週のお出かけにして行こうと思うの。」
「電話切る程の急ぎじゃないわね。」というすみれの声は、ヒメコには、聞こえない。
「昨日、宅配届いたじゃない、それはどうしたの?」
「腹巻と手袋が入っていたわね。」
「シャンプー、リンス、食器用洗剤もね。腹巻だった?そんなん買ったの?」
「これでしょ、腹巻。」
「これ、お腹はいるの?
ネックウォーマーじゃないの?」
「そうなの?」
「昨日、カタログ注文しようとして私が、良くないよと言ったタイプ。
被る時は、いいけど、脱ぐ時に髪の毛めちゃくちゃになるから。
カタログ販売の注文しなくて良かったわね。他で買ったんじゃない。」
「あら、そうね。」
「お出かけこれで良いじゃない。」
「いやこの間買った黒いの探しているのよ。」
ヒメコは、探し物を諦める事なく探しまくる。そのうちパニクるのでは無かと心配しながらすみれは、探してみるが、どの引き出しもよく分からない分類みたいだ。夏物と冬物の分類は、しないタイプらしい。
ふと、グレーのセーターがハンガーに掛けられている。
「このセーター着ていくのね。下は、パンツ?」と聞くとそのパンツは、先日一緒に買い物した時に気に入った黒っぽいものだった。
「組み合わせいいね。この間のね。おしゃれなパンツよね。履き心地良い?ウエスト丁度いいかな?
この間のこれ買ったお店、感じ良かったよね。」
「気に入ったのよ。まだ新品だから、下ろそうと思っね。」
すみれは、内心話が逸れてきてほっとした。黒の襟巻きは、探すのを諦めたようだ。そして昨日届いたと言うシャンプーを洗面所の棚に片付ける事にした。
すみれは、洗面所の滅多に開けない戸棚を開けて驚いた。
シャンプー、リンス、コンディショニング等が沢山並んでいた。更に紙箱を開けると歯ブラシと固形石鹸。
「お母さん、これコレクション?」
「行っている美容院ね、年一回値引きするから、買いだめするのよ。うれしいじゃない。今年も来月、買っておかないとね。」
「お母さん、ショートヘアーだから当分シャンプー等は、足りると思うよ。買わなくて良いね。」
「じゃあ、ヘアーオイルかな。三本しか無いものね。」
すみれは、この感覚が理解出来ない。さらに
「歯ブラシや石鹸は、どうしたの?
今時、宿でこんな石鹸出さないから、相当昔のね。
あっ!これお父さんと行った旅館だね。」
「そうね。30年くらい前かしら。」
「記念に取ってあるの? 使わないでおくの?」
と言うより乾燥しきって使えそうにない。
すみれは、何かスイッチが入ったかのように他の部屋の押し入れの探索を始めた。
「どうしたの?」
「お母さんのコレクション他に何があるのかな?って思って。」
翌日、母は、出先から寒かったと新しいマフラーを買って帰って来た。
「凄いね。マフラーの記念の年ね。これで今年五本め?」
「違うは、一本めのオレンジ色のは、去年の十二月よ。」




