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ヒメコ  作者: 92コ
1/8

ヒメコ病院へ行く

戦前生まれのヒメコの日常をえがきます。 

 「スズキヒラメさん、3番診察室までどうぞ。」


 「スズキだヒラメだ、どこの魚屋かしらね。」


 これは、母が怒っているという意味になる。

 『鈴木広芽子』と書いて『スズキヒメコ』と読ませる。明治生まれのおじいちゃんが、やっと生まれた女の子を『ヒメ、ヒメ。』と呼びたかったのでヒメコとつけたらしい。

 つまり母は、姫らしく育てられたようでなかなかの姫性格。


 「姫様、3番だって。自分で体調を説明してね。一緒に入ろうか?」


 「大丈夫ですよ。」


 と私を無視して診察室へ消えて行った。それでもカーテン越しに私は、聞き耳を立てている。


 「それで私も気を付けてひじきやセロリや繊維質のものを沢山摂るようにしています。歯が悪いのでね、セロリは、うんと薄切りに切って食べるんです。ひじきは、にんじんやごぼうを一緒に煮るんです。でもどんなに努力をしてもお通じが無いんですよ。」


 「何日無いのかな。」


 「3日。」


 「大丈夫ですよ。一応お薬を処方しますね。」


 「でも私は、心配で眠れなくなるんですよ。

親戚で便秘で亡くなった人がいるんですよ。

先生、そういう事ってあるんですか?」


 「そうですね。気をつけましょうね。

お腹は、張って痛いかな?」


 「いいえ。」


 「一応、お通じが楽になるお薬を処方しましょうね。」


「先生、私心配なので検査して下さい。しょっちゅう心配して暮らすのは、大変なんです。ますます眠れなくなってしまいます。」


 「では、鈴木さん、水分をもう少し摂るようにしましょう。さらに歩きましょう。」


 「よく歩いています。

先日は、豊洲の千客万来へ行って一万歩歩きました。」


 「少しでいいので毎日ね。」


 待合室で他に多くの患者が、待っていても母の訴えは、延々続く。自分が待合室で待っている時は、

 「看護師の手際悪いのね。患者も診察室で要領よく話さないとね。あの人呼ばれてまだ診察室よ。いつまでしゃべってんのよね。」と言っていた。


 そんな母が、診察室から出て来た時は、検査入院の日取りが決まっていた。



読んで頂きありがとうございます。

続きありますのでよろしくお願いします。

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