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その後オリヴァンは働きづめで、何とか今回の事件に関する後処理を済ませたみたいだった。


コレットは死刑……になるところだったが、私が減刑を願い出た。

一歩間違えたら、私も同じ道を辿っていたかもしれない、と考えると、なんだか他人事だと思えなかったからである。


オリヴァンは渋い顔をしていたものの、何とか山奥の修道院送りで済むことになった。


私も少し休んだ後は、改めて神殿へ行って手続きをしたり、国王……オリヴァンのお父様とお話をしたり、両親に事情を説明したりと、忙しい日々を過ごしていた。


実は私は精霊使いではなかったということに、オリヴァンは勿論気が付いていたけれど、公には私が元から精霊使いであるように振舞ってくれた。


しかし、国王や神殿長に黙っておくわけにはいかなかったので、その2人にのみ真実を告白したのだ。


もっと怒られるかと思っていたけれど、意外なことに2人とも、驚いて、そして心配をしてくれた。

私がこれまでただの人間であったのに、精霊使いとしての公務をこなしてきた事が評価されたみたいだった。


「うーん、確かこのあたりが待ち合わせ場所よね?」


一連の出来事が終わり、そのころには春休みも終わっていた。

勿論、あの事件で文化祭の準備などできたものではない。

本番は1週間後に延期となり、各クラスバタバタと今日からまた準備を再開していた。


そんな中、私が準備を抜け出し、校門の前までやってきたのには、理由がある。


「お待たせにしました」


「よっ、久しぶりだな。オリヴァンの婚約者」


「……あの時は、言いつけを守らなくてごめんなさい」


「んー、『全然』気にしてないさ」


これはどう考えたって気にしているやつだ、と思いながらも、彼を案内するために歩き出す。


この人は私が1回目に逃げた先で、私のことを助けてくれた人だ。

実はオリヴァンの友人……? の隣国の公爵令息だったらしく、今回はこの学園に留学に来たらしい。


「そういえば名乗ってなかったな。俺はミラン、お前の婚約者とは……まぁ腐れ縁ってやつだ。今日は案内ありがとな」


「ご存知でしょうが、私はクラリーズと申します。本当はオリヴァン様が案内する予定だったそうなのですが、あいにく文化祭の準備で忙しいらしく……」


「いや、あいつに案内されたら、きっとお前の話しかしてこないだろうし、これで良かったよ。うん、むしろ助かった」


こんなにオリヴァンを無碍にできる人は、この国にはいないだろうな、と考えながら、1つ引っかかった点について質問してみる。


「私の話……?」


「あぁ。オリヴァン、小さい頃からお前にベタ惚れだからな。」


「……そ、そうなんですか」


実を言えば、私はそうは思えない。

確かに、もう彼の監視対象から外れたにもかかわらず、今の私にも相変わらず彼は優しい。


でも言ってしまえば、それは監視対象だった頃と何ら変わりはないということだ。

もし本当に私のことが好きなら、今日こうやってミランと2人きりで案内をさせるなんてしないはず。


もし私が彼の立場だったら……他の異性と2人きりなんて、嫉妬してしまうだろうから。


「えっ!? その顔、もしかしてオリヴァンがお前のことが好きって、ずっと気がついてなかった感じか?」


横を歩くミランが、大きく目を見開いてこちらを見つめる。


仮に彼の言う通り、オリヴァンが、「私が偽物の精霊使いであることを知っていたけれど、昔から私のことが好きだった」というのなら……とあることについて説明がつかない。


それは、彼がことある事に私のネックレスを奪おうとしてきたことだ。


本当に私のことが好きなら、私の秘密を暴くような真似はしないはず。


だから、今の私の結論としては……


「きっと、私が精霊使いだから、国の為にも婚約者でいなきゃって、彼はそう思っているはずです。ミラン様が聞いた話はきっと、仲良しなことをアピールするためでしょう」


私が精霊使いとして覚醒する前までは調査対象として、今は精霊使いという身分の私を国に繋ぐための婚約者として……だからオリヴァンには、私への恋愛感情などない。


これが私の結論だ。


仲の良さそうなミランにまで、自分の本心を偽って話をしているとは、とんだ演技派だな、と考えていると、ミランが不満げにまた口を開いた。


「こりゃ拗れてるな……うーん、俺の言葉でも信じられないって言うなら、もっとあいつと親しい人にも聞いてみたらどうだ? 結論づけるのはその後でも悪くないと思うぜ」


「……そうかしら?」


「あぁ、学園内を案内してくれる代わりに、俺からのアドバイスだ。今回はちゃんと聞き入れてくれよ」


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