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「きっと過度に期待されて、少しの嘘をついてしまったのでしょう? ……それを挽回するために、ここまで頑張ってきたんですね。もちろん、嘘はよくないと思いますが、それ以上にここまで努力を重ねてきたクラリーズ様は偉いと思いますよ」


ミリエットは私の手をつかみ、体をそっと引き寄せた。

次の瞬間には、彼女が私を抱きしめてくれていることに気が付く。


「どうして、そんなに私のことがわかるの? ……何かの魔法?」


「そんな魔法は黒魔術しかないって、さっきクラリーズ様が言っていたじゃないですか」


「そっか、そうよね……」


私の涙でミリエットの服は濡れてしまっていたが、彼女は特に気にせず、そのまま優しく抱きしめてくれる。


「正直、本当は精霊使いじゃない、とか、前世の記憶があるから今後の展開がわかる、とか。まだ混乱しています。でも、言いづらいことを打ち明けてくれたのは嬉しいし、私はクラリーズ様の人柄を信じています。だから……私はいつでもあなたの味方です」


私もたくさんクラリーズ様に助けられていますからね、と笑っている。


そっか、ミリエットは私の秘密をすべて知っても、まだ味方でいてくれるんだ……


「ありがとう」




◇◇◇


「落ち着きましたか?」


「えぇ……恥ずかしいところをたくさん見せちゃったわね」


私たちはそれぞれ椅子に座り、頬杖をつきながら言葉を重ねる。


「むしろ、普段からこんな風に、もっと頼ってくれていいんですからね! ……そういえば、ここへ来る前、全力で校門の方へ向かおうとしていましたよね? 現状に対して、何か案があったんですか?」


「いや……とにかく、オリヴァンとコレットから逃げなきゃって思いで、家に帰りたいって思いで、いっぱいだったの。このままじゃ私の秘密についての証拠を握られてしまう、と焦っていたのと……あの2人の仲が良いところを、見ていられなかったから」


「そう、ですか。その、これだけは謝っておかなきゃいけないと思っていて……無責任に、クラリーズ様の本命はオリヴァン様だ、とか言って、すみませんでした」


きっと彼女も私の話を聞いて、オリヴァンの本命がコレットであることについて、納得したのだろう。


「気にしないで。ただオリヴァンの演技が上手なだけよ」


「本当にお上手ですね。私、本気でクラリーズ様が本命だと思っていました……さて!」


彼女は一旦そこで言葉を切り、背筋を伸ばす。

それにつられて、私も頬杖をつくのをやめた。


「オリヴァン様から逃げる計画を立てましょうか!」


「えっと……手伝ってくれるの? ……さすがに申し訳ないわ。これについては、私の問題だし1人でどうにかするから」


「ここまで聞いたんですから、放っておくなんてできませんよ。ぜひ手伝わせてください!」


そこからは2人で案を出し合って、ああでもないこうでもないと話し続けた。

そして最終的に、ミリエットにはかなり手伝ってもらうことになってしまった。


「本当に、こんなに頼って大丈夫なの? しかも……明日決行だし……」


「気にしないでください。オリヴァン様とコレットさんが、いつ証拠を持ってクラリーズ様のところへ来るかわからないなら、なるべく早いほうがいいです」


さっきオリヴァンはコレットに、「ここ一週間の中で、どこか予定は空いてるかな?」と聞いていた。

つまり、私に残された時間はあと一週間。

だから、別に明日すぐ逃げる必要はないけれど、早いに越したことはない。


「あと……エドガー様には、『クラリーズ様の気分転換のために、明日は2人で街へお出かけに行ってきます』と伝えておくので、きっと納得してくれるはずです」


エドガーは私が取り乱しているのを見ているので、何かしら理由をつけてごまかさなければならない。

そこもこの作戦ではきちんと考えられていた。


「まぁ、言っていることは嘘じゃないものね。私とミリエットが、気分転換に街に遊びに行ったら、ミリエットが私を見失って、私が行方不明になる……うん、いい作戦だわ。でもやっぱり……その後のあなたのことを考えたら、申し訳なくて……」


「まだ言っているんですか! 私にはエドガー様もいますし、どうにかなりますよ、きっと……無事に隣国へたどり着けたら、こっそり連絡をくれれば十分です」


私が行方不明になったら、真っ先に嫌疑をかけられるのは、一緒にいたミリエットだ。

だけれど、彼女はそれでもいいと言ってくれた。


「逃げるための計画というのが一番ですが、明日はクラリーズ様の気分転換のためのお出かけというのも、建前ではなくちゃんと目的に含まれているんですからね! ぱーっと楽しみましょう!」


ミリエットがにっこり笑ってそんなことを言ってくれるから、私の気分もずいぶん上向きになった。


上向きになったからか、私は大事なことに気が付く。


「あっ! 岩を作ってきてほしいって、監督に言われたのを忘れていたわ!」


時計を見れば、教室を出てから2時間以上経っている。


「急いだほうがいいですね、私も一緒に行きますよ」


作戦の決行は明日。

でもまずは目の前の仕事を片づけるために、私たちは急いでグラウンドへ向かった。

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