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「えっ」
コレットも私も言葉を失う中、氷玉ははじけ飛び、その欠片が飛び散っていく。
あまりに一瞬の出来事に、私は何も反応ができず、コレットへぶつかる氷片を見ていることしかできなかった。
5秒ほど、私も彼女も、先生も、見ている生徒の皆も、驚きのあまり言葉を発さない時間が続いたが、コレットがホロリと涙を流したことで、私以外の皆は一斉に動き出す。
「チッ、自分で保護魔法をかけているなんて」
「は?」
一斉に話し出した皆の声にまぎれて、そんなコレットの独り言が聞こえたような気がした。
保護魔法……?
確かに、氷片はこちらへも、わずかながら降り注いでいたけれど、はじかれたように周囲に散らばり、私へはかすりもしなかった。
でもそんな魔法、かけた覚えはないし……
色々考えている間に、コレットに駆け寄っていく人影が見えた。
勿論、オリヴァンである。
「大丈夫かい?」
と言って、とても焦った様子で彼女を抱き上げた。
「先生、彼女を保健室まで連れていきますね」
「あ、あぁ、よろしくおねがいします。皆、一旦静かに、その場にとどまっていてください!」
先生も動揺しつつ、この場を収めようとしている。
そしていまだに、ただ呆然としたまま尻もちをついている私のところへ、ミリエットが駆け寄ってきてくれた。
「大丈夫ですか!? あれは……何だったのでしょう」
私は彼女の手を借りて立ち上がる。
「わからないわ……私のコントロール外からの出来事だったから、全く何もできなくて……」
「そうですよね! 何もしてないですよね! クラリーズ様があんなことをするわけがないです!」
ミリエットは普段よりずっと大きな声で答える。
その不自然なほど大きな声に、違和感を抱いていると、周囲の人たちの声が聞こえてきた。
「そうよね、クラリーズ様が氷片をコレットにぶつける理由がないもの」
「でも、彼女がコントロールを担当するって言っていたよな」
「やっぱり、コレット嬢に個人的な恨みがあったんじゃないか? ほら、オリヴァン王子とコレット嬢、かなり親しげじゃないか」
「確かに、今だって婚約者ではなくてコレットさんの方へ一直線だったものね」
も、もしかして、私がコレットを攻撃したと思われてる?
だから、ミリエットはあんなに声を張って、私はやっていないと言ってくれたのか。
皆に疑われて、私がショックを受けているのが分かったのか、彼女は小声で励ましてくれた。
「心配要らないですよ。この程度の疑いで、クラリーズ様が今まで築いてきた信頼が、崩れるはずがありませんから」
やけに自信ありげな彼女の言葉を裏付けるかのように、先生がこちらへやってきて、私に向かってこう言ってくれた。
「私もあなたのことはよく知っているので、全く疑ってはいません」
それから生徒皆の方を向き、
「恐らく2人の魔法が組み合わさることで起きた事故でしょう。試験は1週間延期するので、それまでに今回の内容を1人でできるようになってください」
先生は魔法同士のぶつかり合いによるものだと仮定して、私を助けてくれた。
「根も葉もない噂はたてないようにしてくださいね。では、今日は解散してください」
皆の動揺も少しずつ治まってきて、何とか事態は収束した。
私は先生にお礼を言った後、ミリエットの元へ戻る。
「私、ちょっと保健室を覗いて来るわ」
あの時はパニックで頭が回らなかったが、現時点では、この国で1番治癒魔法を使えるのは私だ。
コレットもなんだか変なことも言っていたし、もしかすると、今回の事故に、私も関係しているかもしれない。
それならば様子を見に行くのが、道理にかなっているはずだ。
「分かりました。先に戻ってますね」
彼女は少し微妙そうな顔をしていたが、私に手を振って背を向ける。
こうして私はミリエットとは別れ、保健室へ行くことにしたのだった。
「事故の時ネックレスが反応しなくて良かった」
なんて、考えている自分に嫌気が差しながら。
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次々回はようやくオリヴァン視点が登場するのでお楽しみに!




