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「なんだかんだ、うまくいきそうでよかったね」


「今日集まった時は、ミリエットとエドガー様が2人で話せるようになるなんて、思ってもいませんでした」


「正直、僕もエドガーが必要最低限を超える会話をあんなにしているところ、久しぶりに見たよ」


小さな頃からエドガーと関わりのあった彼が言うのなら、きっと本当に珍しいことなのだろう。

……何故お互いにお互いを遠ざけてしまっていたのか、そんなことを2人で話せる日も、近いかもしれない。


「そういえば、ベンチに座ってしまいましたけど、花は見なくて大丈夫ですか?」


ごく自然とベンチに足が向かってしまっていたが、せっかくバラ園に来たのなら、彼はもっと花が見たかったかもしれない。


「ここからでも見えるから。それに、クラリーズは朝から忙しかったから、疲れているでしょう?」


ね?と首を傾げた彼は、大したことは言っていないと思っているのか、大きく伸びをしている。


「え、どうして、私が朝から出かけていたことを知っているのですか?」


「んー、僕は諜報員だからね」


いつもの笑顔で言っているが、やっていることは恐ろしい。

そんなに監視を強めるほど、私は警戒対象なのか……


「まぁ、何はともあれ、少し休んだらどう? 目を閉じるだけでも効果はあるだろうから。あ、もし、あまりに寝ていて夜になってしまいそうだったら、起こすから安心して」


うーん、疲れは限界だけれど……この状況で寝ていられるほど私の肝は据わっていない。

でも、このまま休まずにいたら、体力切れを起こしそうなのも確かだ。


しばらく無言で彼のことを見つめ、それから周囲を確認する。

人通りも多いし、ここで何かされることはないか。


「分かりました、お言葉に甘えますね」


「うん、お休みクラリーズ」


目を閉じると、周囲の音が鮮明に聞こえてくる。

そして、まだまだ寒い季節だから、風は冷たい。

けれど、それがなんだか気持ちよくて、すぐに眠気がやってきそう……


まどろみながら、これからのことを考える。


そろそろ学園に入ってから一か月が過ぎた。

原作乙女ゲームのことを、そして前世のことを思い出してから、かなり順調にここまで来た。


あとは、留学で隣国に行くタイミングで、暴漢に襲われたことにして、行方不明になるだけ。

もちろん、本物の暴漢ではなく、あらかじめ演技をするように裏で雇っておくのだ。

隣国の街中でひと騒ぎ起こして、残った痕跡を私の魔法で消してしまえば、もう私にたどり着くことはできないだろう。


ほとぼりが冷めたら、ネックレスをコレットが発見できる場所に置いて、そして家族に生存報告をしに行こう。

ミリエットは……どうしようかな。

もし私が、隣国に行ったきり帰ってこなかったら悲しむかな。


そんなことを考えていた時だった。

首元のネックレスが少し引っ張られているのを感じる。


引っ張っているのはどう考えても……オリヴァンしかいない。


何故?どうして?

ネックレスが外れる条件は、近くで他の精霊使いが覚醒すること、もしくは装着者自らの意思で外すことだ。

彼がいくら頑張ろうと、ネックレスを私から奪い取ることはできない。


それに……そもそもどうしてネックレスを取ろうとするのだろうか?

やっぱり、私が偽物であることに勘づいているの……?


たくさんの疑問が頭の中に浮かんだが、私は起きずに寝るふりをすることを選んだ。

だって、もしここで目を開けたら……オリヴァンがすべてを告白してくるかもしれない。


「私への態度は、諜報員として、私が偽物の精霊使いであることを暴くためのものだ」と。


そんなことをされて彼の独断で取り調べを受けたら、何かの弾みで私の嘘がばれて、証明されてしまうかもしれないし、恋人ごっこも終わってしまう。


だから私は、どうかばれませんように、と願いながら、狸寝入りを続けた。


ただ、絶対に寝てはいけない。

もし本当に寝てしまったら、ネックレスを取ることはできないとはいえ、何をされるかわからない。


自然な呼吸になっているかな?

瞼は震えていないかな?

変な汗が出ているのは、ばれていないかな?


不安がどんどん募る中、オリヴァンはネックレスから手を離した。

これは……狸寝入りなことがばれた……?


薄く目を開けて、彼の様子を確認しておこう。

そう思って、ばれない程度に瞼を開けると、




目の前に彼の顔があった。

私たちの顔の距離は、拳一つ分も離れていなくて……

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