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私とミリエットは、裏庭の件からとても仲良くなった。

あれから一週間経ったけれど、同じクラスだということもあり、何をするにも一緒だ。

実を言えば、あまり仲の良い友達は作らない予定だったのだけれど……まぁ仕方ないだろう。


「おはよう、ミリエット」


「おはようございます! その、今日、エドガー様のところへ行かれるのですよね……やっぱり明日にしたりとか、しませんか、ね?」


「するわけないじゃない、あなたそう言いながらもう何日経ったと思っているの?」


エドガーとミリエットの間の問題を解決するには、やはり直接会うのが一番だ。

次期宰相候補の公爵、更には少し人を寄せ付けないクールな雰囲気を持っているとなれば、ただのファンでは簡単に近づくことはできないだろう。


しかし、ミリエットはエドガーの婚約者だ。

長い間会っていないとはいえ、会う権利はあるはず。

……そんな立場だからこそ、気まずいという気持ちもよくわかるけれどね。


「……私とエドガー様が会う日には、クラリーズ様も一緒についてきてくれるんですよね?」


ミリエットが「2人きりで会うなんて、緊張しすぎて絶対まともにお話しできません!」なんて言うものだから、当日は私もついていくことになっていた。


「そこはちゃんと予定を合わせるから安心して。ほら、誘いに行くわよ」


「う……分かりました。私も腹をくくります」


「大げさすぎるわよ」


彼女の決意が変わらない朝のうちに、私たちは隣のクラスへと足を運ぶことにした。


◇◇◇


「あなたは精霊使いのクラリーズ様ですね。俺に何の御用でしょうか?」


廊下の曲がり角、私の目の前には一ミリも表情の動かない一人の男の姿、そして予定では隣にいるはずが、どこかへ隠れてしまったミリエット……


どうして結局私だけでエドガーと話しているのよ!!


というツッコミを入れてもしょうがない。

ミリエットと一緒に隣のクラスまで足を運び、クラスメイトにエドガーを呼んでもらうようお願いするところまではよかった。


しかしその後、ミリエットが隣でガクガク震えだし、


「やっぱり無理ですー!!!!」


とか言って廊下を走ってどこかへ行ってしまったのだ。

その驚きの速さに呆然としていると、呼び出されたエドガーが私のところまでやってきてしまった。


呼び出したうえで、「やっぱり何でもありません」なんて言えないから、仕方なくこうして私一人で話をすることになってしまった。


「ご存じだったとは……ありがとうございます」


「……」


「……」


気まずさマックスの無言の間が続く。


「えっと、今日はお話したいことがありまして」


「はい」


「私の友人のミ


「2人で何をしているの?」


要件を簡潔に伝えようとしたその時、曲がり角からとある人物が顔を出した。

それは、この一週間私が避け続けていた人。

いや、彼はヒロインのコレットに夢中だという噂もあったから、わざわざ私が避けていなくても、会うことはなかったかもしれない。


オリヴァンは私たちの方へと近づいてくると、エドガーの肩をポンポンと叩いた。


「ねぇ、どういうこと?」


「いや、私はただエドガー様を誘おうとしていたところで」


「へぇ」


何か言葉選びを間違えてしまったのかもしれない。

私の言葉を聞いて、オリヴァンは更に笑みを深める。

……とっても怒っていそうな笑顔だ。


「何故俺を?」


そんなオリヴァンの雰囲気に気づいているのか、いないのか。

怒っているオリヴァンを前にして、冷や汗ダラダラの私とは異なり、エドガーは至って普通の顔でそう問いかけた。


「あ、あなたの婚約者のミリエットが、あなたに会いたいって」


「ミリエット嬢が……」


「いきなり2人だと、その、久しぶりで緊張するかもしれないので、私も一緒に行こうかなと思っていまして」


「婚約者なのに長年会っていないから、2人きりで会うのはハードルが高すぎる」という事実をオブラートに包んで話す。


「どうでしょうか?」


「……」


エドガーが無言で何か考えている最中、隣のオリヴァンは「なーんだ」と安心したように笑った。


「同じ学園に通っているのに、なかなか話せていなかったから、僕はもうクラリーズに飽きられちゃったかと思ったよ」


なるほど、確かに私がエドガー様に乗り換えてしまったら、オリヴァンの「クラリーズに心を開いてもらって、偽の精霊使いであることを暴こう」作戦が失敗してしまうものね。


コレットと出会って恋に落ちたとはいえ、私への配慮も重要な任務というわけだ。

これからも構ってもらえるということが嬉しい半面、悲しい気持ちにもなる。


ううん、こんなことで落ち込んじゃだめだ。

残りの半年間も、偽物だということをばれないように、証拠を残さないように、それでいてこの立場を利用して偽の恋人同士の関係も楽しむって決めたんだから。


「エドガーとミリエット嬢、それにクラリーズも一緒に会うなら、僕も行こうかな。ほら、そしたらダブルデートって感じで楽しそうだし」


いいでしょ?決定ね?と彼は再びエドガーの肩を叩く。

エドガーはずっと何か悩んでいる様子だったけれど、その勢いに負けたのか、


「はぁ、分かりました」


と了承した。

そういえば、この二人は同じクラスだし、第二王子と次期宰相候補ということで、かなり仲も良いのかもしれない。

それなら、オリヴァンもいた方が、エドガーも気楽にミリエットと会うことができるだろう。


ただ……


「デート、楽しみだね」


なんて笑うオリヴァンに対して、私は複雑な感情を抱いてしまうのだった。

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