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タイトル少し変更しました!

この話を聞いただけでは、エドガー様が何を考えて、今彼女のことをどう思っているのかは全くわからない。

だけれど、それとは別に今やらなくてはいけないことがある。

それは……


自信を持つことだ。


過去の経験を乗り越えて、自信をつけなければ、ミリエットは一生前に進むことができずにもがき続けるだろう。


「話してくれてありがとう」


「わ、私の方こそありがとうございました。結局のところ、私はドジで努力しか取り柄がないってだけのことなんですけどね」


ミリエットのその言葉に、私は頬を膨らませて見せる。

すると、彼女は焦った顔で


「私、何か気に障ることを言ってしまいましたか!? すみません!」


と言うものだから、私はベンチから立ち上がり、ビシッと彼女に指を突きつける。


「あなた、さっきからなんでも自分のせいにしすぎよ。もっと自信を持ちなさい!」


「へっ!?」


「ほら立って、うーんそうしたら……あそこの石を回転させながら、私たちの方まで魔法で持ってきてくれる?」


手っ取り早く自信をつけさせる方法。

それは、できなかった魔法ができるようになること。

私はそうやってすこしずつ自信をつけてきた。


「いや、そんなに細かい魔法できたことないです……」


「一回やってみてちょうだい」


私の言葉に渋々といった様子で、彼女は立ち上がり、私が指さした石へと視線を向ける。


「……えい!」


とたんに剛速球でこちらへ飛んできたので、私は慌てて逆風で石を押し戻す。


「すすすすみません!!」


と彼女が謝るのを聞き流しながら、心の中で「やはり、私の予想は合っていた」と確信する。

彼女は努力を惜しまない性格だ。

ただ少し努力の方向が異なっているだけで、それを正しい方向へ直せば、きっとうまくいくはず。


「ミリエット、あなたの魔法の練習の成果はよく分かったわ。だって、ここまであの石を速く動かすには相当の努力が必要だもの」


「え、そんなことは……」


「精霊使いの私の言葉を信じて」


「は、はい!」


偽物の精霊使いからの言葉でも、彼女にとっては大きな効果があったようだ。


「焦らないで、ゆっくりと風が流れる草原にいるイメージをしてみて、そこで小石がタンポポの綿毛みたいにふわっと移動していくの」


「ふわっと……」


するとさっきの速度が嘘のように、目の前の石はふわふわと回りながら、元あった場所におさまった。


「ほら、できたじゃない?」


「……!」


彼女は驚いて言葉も出ないようだった。

そして何度も確かめるように、石を行ったり来たりさせる。


「言っておくけれど、私はあくまでコツを教えただけ。今あなたがそうやって思うままに石を動かすことができるのは、まぎれもなく今までの努力があったからよ」


私の言葉を聞いて、彼女は目の前に落ちた石を拾いあげ、胸元で握りしめた。


「私の努力にもちゃんと意味があったんですね」


また目に涙をためているけれど、その瞳には前よりずっと力強い光があった。


「私なんて……と思っていたせいで、ずっと気持ちに蓋をしていたのですが」


言おうかどうか一瞬迷ったような、そんな素振りを見せる。

でも、次の瞬間には再び意思のこもった瞳で私を見つめていた。


「実は私、婚約者としてではなく、一人の令嬢としてエドガー様のことが好きなんです!」


「……!」


「私がここまでずっと努力を続けていたのも、エドガー様のことが好きだからです。もうとっくに失望されているかもしれないけど、この宙ぶらりんな関係のままあやふやにしたくないんです!」


幼い頃から、次期宰相候補としていつもキリっとした表情で仕事をする姿に憧れて、気が付いたら恋心を抱いていた、と話すミリエット。


「これはただの宣言というか……クラリーズ様に言ってしまえば、私も後戻りできないかなと」


大声で好きと言ったことに対して、今更照れの感情がやってきたのか、少し顔を赤くし始めるミリエット。


……私は彼女のように、好きな人に好きと伝える資格はないし、振り向いてもらえることもない。

だからか、彼女のことがなんだか眩しく見え、応援したい気持ちも湧いてきた。


「クラリーズ様、どうかしましたか?」


無言でいる私のことを変だと思ったのだろう。

首を傾げたミリエットに私はとあるお願いをする。


「あなたの恋、応援させてもらってもいいかしら?」


「そ、そんなのむしろこちらとしても大助かりです!」


こうして私は隣国へ逃げるメインミッションに加えて、半年の間、ミリエットの恋を応援するというサブミッションを開始したのだった。



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