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「ではまた明日お会いしましょう!」


「精霊使いであるクラリーズ様と同じクラスだなんてとっても嬉しいです!」


「ぜひ私とも仲良くしてください!!」


入学式後、話しかけてきてくれた令嬢たちと別れる。


私ももう18歳になり、ついに乙女ゲームの舞台である学園へ入学した。

ここまでの人生計画は至って順調。

当初の予定と異なるところは……思ったよりもオリヴァンに本気になりすぎてしまったことと、原作通り私の秘密がばれてしまっていそうなことくらいだろうか。


神殿での公務を始めてから、こうして学園へ入学するまで、彼は幾度となく私のネックレスを借りたいと言ってきた。

理由はその時によりさまざまで、「研究に使ってみたい」、「そのネックレスが君の重荷になっていそうだから」、更には「君がいまだ精霊を顕現させることができないのは、ネックレスの不具合だろうから調査したい」だとか。


もちろんその度に私は断っているのだけれどね!!


公務は本来の精霊使いと同じ量を、いやそれ以上に頑張っているが、精霊を顕現させることはできていない。

そりゃあそうだ、だって偽物の精霊使いの私には、そもそも精霊なんて見えていないのだから。

不具合でもなんでもない、ネックレスは至って正常だ。


最近は神殿や陛下にも、「精霊を顕現させることはできないか?」と言われているが、のらりくらりと躱している。

一時期は自分の魔法力で精霊もどきを作り出すことも考えたが、そんな高度な生命体をずっと維持するには、私でも足りないくらいの途方もない魔力量が必要になるから諦めた。


でもまぁそんな生活も、あと半年で終わりだ。


あと半年すれば……私は留学に行き、嘘つきのまま逃げ切ることができる。


「ふぅ……」


今日は入学式だけだったけれど、たくさんの人に話しかけられたので、少し疲れてしまった。

まだ私に話しかけたそうな目をしている人もいるが、一旦教室外へと避難することにする。


入学したばかりの私だけれど、前世の乙女ゲームの知識から、ある程度この学園には詳しい。

確か、あまり人の集まらない裏庭があるはずだから……そこで休憩させてもらおう。


そういえば……オリヴァン王子とヒロインはそこでよくお昼ご飯を食べていたっけ……


入学式の会場には、やはりと言うべきか、明るい茶髪にピンク色の目を持った可愛らしいヒロインも参加していた。

クラスも異なるため遠くからしか見えなかったが、まさに誰からも愛されそうな見た目だ。


その魔法の力と、出自が平民であるということから、既に同級生の間では噂になっていて、精霊使いである私やオリヴァン王子と同じくらい注目を浴びている。


オリヴァンとヒロインであるコレットは同じクラスだ。

これからきっと彼は、コレットにメロメロになっていって……


逃げるまでの間は、私は彼との恋人ごっこを楽しむつもりだったけれど……彼とヒロインが本物の恋に落ちるなら、もっとはやく終わりが来そうな予感。

彼への恋心を自覚している私にとって、その事実だけで胸が痛くなった。


そもそも、お互いの嘘の上で成り立っている関係だったから、しょうがない……よね。


なんて心の中で呟いていると、曲がり角の奥から男女の声が聞こえてきた。


「君みたいな子に声をかけてもらえて嬉しいよ。僕も君のことが気になっていたんだ」


「そ、そうなんですか!? 私も、あなたに憧れてずっと魔法の練習をしてきたんです」


「それは光栄だな……ほら、僕たち二人でいると変な噂が立つかもしれないし、ここに入って少しおしゃべりしようか」


「……はい!!」


聞き覚えのある男性の声。

女性の声は聞いたことがないけれど、おそらくこれは……


ばれないように曲がり角からそっと顔を出すと、そこには思った通り、オリヴァンとヒロインであるコレットの姿があった。


親密そうに笑い合いながら、校舎の隅の空き教室へと入っていく。


……嫌なものを見てしまった。

実際に仲睦まじい光景を見ると、頭の中で考えている時の数倍辛い。


なんだか一息つく気分でもなくなってしまったので、魔法の練習でもすることにしよう。

そうすればきっと、無駄なことは考えなくて済むはず。


私は彼の本命ではない、ただのターゲットだ。


そう言い聞かせながら、私はその場を後にして、裏庭の方へと足を運んだ。

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