猫と男の八極拳についての会話~猫の悪霊退治より~
「源之助」―人間の言葉を理解し話す猫。一種の化け猫の類で、悪霊と対峙できる力を持つ
「健吾」―悪霊を浄化する力を持つ男。源之助と組んで探偵のような事をしている。
興味のある方は、本編の「猫の悪霊退治」をご覧下さい。
源之助(以下、源)「おい!!健吾」
健吾(以下、健)「なんだよ」
源「オマエが戦う時に使っている技は、オマエが練習している武術とかいうのの技か?」
健「ああ、そうだけど」
源「なんか、色んな動きをしているように見えるから、気になってな」
健「ああ、オレは複数の武術を練習しているからな」
源「武術によって戦い方が違うという事か?」
健「まあ、簡単に言えばそういう事だな」
源「なるほど、どんな武術があるんだ」
健「オレが主に練習しているのは、八極拳と八卦掌という武術だな」
源「その二つの武術をやっているのか」
健「専門が八極拳と八卦掌というだけで、他にも学んだ武術はあるぞ」
源「そんなに色々な武術を練習したのか?」
健「ああ、八極拳と八卦掌を中心に、劈掛掌、蟷螂拳、太極拳、形意拳を学んだな」
源「けっこう多いな」
健「まあ、全てをマスターした訳ではないからな」
源「なんだ、全部ではないのか?」
健「一応一通り学んだけど、その中で適性があったのが八極拳と八卦掌だって事だ」
源「それぞれの武術はどう違うんだ?」
健「そうだな〜、オレが得意としている八極拳と八卦掌は、ある意味正反対な感じの武術かな」
源「正反対?」
健「八極拳は、一般的には力強く一撃の威力が高い武術だ」
源「一撃必殺というやつか」
健「まあ、そんな感じではあるんだが、厳密には一回の攻防で3発程度打ち出すのが基本だな」
源「なんだ、一撃で倒すわけではないのか?」
健「まあ、実際に一撃で相手を倒すのは難しいからな」
源「難しいのか?」
健「まあ、素人とか相手が受けてくれるなら別だけど、相手も普通なんか反応するし、攻撃だってしてくるからな」
源「なるほど」
健「相手の攻撃を無効化して、自分の攻撃を当てるのも難しいのに、一撃で倒すのはさらに難しいからな」
源「難しいのか?」
健「仮に当てれたとしても、相手も動くし自分の態勢が万全である事は少ないからな」
源「そうなると、どうなるんだ?」
健「威力が半減してしまうのさ」
源「完全な威力を伝えるのは難しく、だから一撃必殺にはならないという事か」
健「そういう事だな」
源「なるほど、だから複数の動作をとるのだな」
健「そうだな、複数の技や動作で、相手の攻撃を無効化して、自分の攻撃の命中精度を上げる作業が必要だな」
源「だから、3発程度打つのか」
健「厳密には、3動作って感じだがな」
源「では、八極拳とやらは一撃必殺の武術ではないのか?」
健「例外もあるよ。昔ほとんどの相手を一撃で倒した名人がいたのさ」
源「だから、八極拳は一撃必殺のという印象が根付いたという事か」
健「ああ、でも八極拳自体は、他の武術に比べて一発の威力が高いのは事実だぞ」
源「なるほど、一人の名人のおかげで、良くも悪くも一撃必殺のイメージが定着したという事だな」
健「まあ、そういう事だな」
源「その名人とは誰なんだ」
健「李書文という八極拳では有名な名人だな」
源「聞いた事がないぞ」
健「まあ、中国の武術に詳しくなければ、聞いた事ないだろうな」
源「本場の中国では有名なのか?」
健「いや、本場でもそれ程有名ではないらしい」
源「それで名人だと言えるのか?」
健「まあ、大戦中に軍隊の武術教官をしたとか、誰かと戦って勝ったとかの記録が残っているらしいしな」
源「信用できるのか?」
健「まあ、一応公式な記録らしいし、李書文の弟子には戦時中に活躍した人間が多いしな」
源「活躍?」
健「李書文の最初の弟子の霍殿閣は、清朝最後の皇帝だった溥儀の護衛兼武術教師を務めてたし」
源「こないだオマエが見ていた、ラストエンペラーという映画の主人公のか?」
健「ああ、そうだ。てか、オマエも見てたんだな」
源「ああ、途中寝てたがな」
健「だろうな」
源「活躍したのはそれだけか?」
健「あとは、現在の台湾の初代中華民国総統となった蔣介石のシークレットサービスをしていたという劉雲樵が有名だな」
源「台湾なのか?」
健「大戦中に色々あって中国大陸の国民党軍や関係者が台湾に流れたのさ。詳しい歴史は、自分で調べな」
源「まあ、中国の偉いやつの護衛をしていたのだな」
健「それだけでなく、劉雲樵って人は、大戦中は特殊部隊に所属していたらしい」
源「それだけ実力があったという事か?」
健「まあ、そうだな。戦後も台湾の軍隊で武術教官をしていたらしいしな」
源「なるほど、そんな弟子達がいたのなら、李書文の実力も信じられるという事か」
健「まあ、客観的に見ればな。ただ、実際に李書文の八極拳を練習すれば、実力が高かったんだろうなって、実感するけどな」
源「ん?オマエの練習している八極拳とやらは、李書文のものなのか?」
健「ああ、一応李書文を初代とするならば、オレは5代目になるな」
源「という事は、オマエも李書文のように一撃必殺ができるのか?」
健「言ったろ、例外だって」
源「なんだ、できないのか?」
健「相手と状況によるだろうな。ただ、どちらにしろ、一撃で相手を…って事はオレには無理だな」
源「李書文の八極拳を学んだのではないのか?」
健「同じ武術を学んでも、全員が同じになれるとは限らないって事だ」
源「なんだ無理なのか」
健「李書文のような一撃必殺の技を身に付けるための技術はあるけどな」
源「なんだ身に付けれるのか?」
健「方法はあっても、実際にできるようになるのは難しいって事だ」
源「方法があるのに無理なのか?」
健「学校の授業で学ぶ事を全てできれば、理屈上全てのテストは100点とれるはずだろ?」
源「ああ、そうだな」
健「でも、授業を受けただけで、常に100点は難しい。できるヤツもいると思うけど、授業という方法を学んでも実践できるとは限らない。それと同じさ」
源「学ぶ者次第って事か」
健「まあ、学ぶ者の資質と努力次第って事だな」
源「李書文と同じようになるのは難しいという事だな」
健「そういう事だ。それに、オレ個人としては八極拳より、どちらかと言うと八卦掌の方が得意だしな」
源「なんだ、八極拳ではないのか?」
健「個人の特性ってヤツだな。八卦掌の方が合っているみたいだ」
源「八卦掌とはどんな武術なんだ?」
健「まあ、軟らかく動く柔的な武術だな」
源「八極拳は剛的な武術のようだが、八卦掌は柔的な武術なのか?」
健「まあ、八卦掌にもいろんな流派があるから、一概には言えないけどな」
源「その八卦掌というのはどんな武術なのだ?」
健「八卦掌ってのは…」
源「ん?どうした?」
健「もうこんな時間か。そろそろ買い物に行かないとな。八卦掌の話は、また今度な」
源「おお、買い物に行くのか!!では、わたしもついて行こう」
健「どうでもいいが、チュルルは買わないぞ」
源「ニャ〜!!」
本編「猫の悪霊退治」で、「健吾」は武術の技を使っています。この武術の戦闘シーンや武術の内容については、実際の武術教室である「八極八卦練技拳社」さんに監修をしてもらっています。
ここまで読んでいただいた皆さん
ありがとうございます!!
↓↓↓の作品も宜しければどうぞ!!
「猫の悪霊退治〜猫とバラバラ殺人~」
https://ncode.syosetu.com/n5692kd/
「猫の悪霊退治2〜猫とお化けトンネル~」
https://ncode.syosetu.com/n6942kd/
「猫の悪霊退治3〜猫ときさらぎ駅~」
https://ncode.syosetu.com/n0157kg/
それでは次の作品でお会いましょう!!