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第50話:情報提供部の部室にて

 俺は今、大事な放課後を、圭吾の後に続いて廊下を歩くという無駄な事に使ってしまっている。

 しかもその場所は、管理棟の三階、通称〝文化部室通り〟だ。

 誰が付けたのか分からんが、その名の通り文化部が持つ部室が敷き詰められている廊下だ。

 そんな場所を俺はただただ、前を行く馬鹿について行く。

 ちなみに、この管理棟というのは四階建てで、教室のある教室棟から少し離れたところにあり、渡り廊下で繋がっているのだ。

 他にも特別教室棟という物もあるが、こちらは二階建てで意外と小さい。

 そして講堂が、この管理棟のすぐ隣となっている。

 で、管理棟に話は戻るが、運動部の部室が敷き詰められている〝筋肉通り〟があるのが一階。

 職員室や生徒会指導室、校長室などがあるのが二階。

 先程も言ったが、文化部の部室が敷き詰められている文化部室通りがあるのが三階。

 暗黙の了解で誰も立ち寄らない、いや立ち入ってはいけないらしい未開のエリアである四階。

 そしてその上が屋上となっている。

 ちなみに俺がよく行く屋上は、教室棟の屋上だ。

 管理棟の屋上は、途中に未開エリアの四階がある為に、行った事は無い。

 ……というか、この学校の奴らは通称を付けるのが好きなのか?

 何だよ、筋肉通りって……。

 他にももっとありそうだな、などと考えている内に、既に廊下の端まで到達しそうにあった。

 このまま行けば、四階や二階に繋がる階段しかないはずだが。


「おい、圭吾。もしかして、未開のエリアに行くつもりか?」


 前を行く圭吾に問うと、こちらを向いて微笑を見せた。


「いやいや、そんなわけないだろ? 行ってみたいのは山々だが、暗黙がねぇ」

「それじゃ何で、階段のある方に――」


 向かって、と言おうとしたところで、俺の言葉は途切れた。

 ……俺達が歩いている方向からして、階段は左手に現れる筈だ。

 そしてその階段への入口は、既に見えている。

 だが圭吾は、まさかの右へと曲がった。

 しかしそこには部室など無い。

 部室があれば、部活名の書かれたプレートが、廊下を歩く者に見えやすく天井近くの高さに設置されているもんだが、それが無い。

 だからこそ俺は、素早くその曲がった場所へと向かう。

 するとそこには、

「……何だよ。死角だな、この作りは……」


 そこには、通路があった。

 丁度人一人がスムーズに通れる幅の通路。

 そしてその奥、五メートル程先に、半開きになったドアが見える。

 どうやら、ドアの向こうは階段になっているらしい。

 また、ドアの上部には、放送部と書かれたプレートがあり、その真下には情報提供部と影のついたゴシック体で書かれているプレートがあった。






 縦に、くの字に曲がった階段を上った先には、部屋があった。

 放送部か情報提供部なのかよくわからないが、とにかくその部室内は広かった。

 軽く見渡せば、形に例えて長方形だな。

 そしてその広いスペースを上手く活用するかのようにパソコンやテレビ、モニターやプリンターなど、数多くの電子機器がところ狭しと置かれていた。

 ちなみにその全てに、FMP社のロゴが記されている。

 視線を変えてみると天井は高く、その先にはゆっくりと回る四枚羽のプロペラが二つ。

 これは、部室内の空気を巡回させる為の物だろう。

 また、その巡回させる為の空気を上手く取り入れる為か、天井の二箇所と部室に入ってすぐ右側に、それぞれ大窓が付いていた。

 そして左斜め前、数台のモニターに半円の形で囲まれるような所で、キャスター付きの椅子に一人の女子生徒が座っていた。

 さらりとした茶色い短髪の上にぴょっこりと飛び出したアホ毛が特徴的な彼女は、小柄な身体を揺らしながら、キーボードを打って作業に没頭しているようだ。

 よくみると、髪に隠れるようにして、耳に小さめのヘッドホンが掛かっているし。

 ……邪魔するわけにはいかないから、とりあえず自力で圭吾を探すか。

 そう目的を決めた俺は、先程見渡した時に気になっていた場所へと向かう。

 そこは、入って左を見た時に見つけた、少し離れた場所にある引き戸だ。

 俺はその前に立ち、引き戸に手を掛けてスライドさせようとした。

 すると引き戸は、音を立てる事無くすんなりと開き、その向こうにはテレビ番組の編集室のような部屋があった。

 長方形だが僅かに狭いその部屋にはマイクや音量調整機器、モニターなどはあり、右側には大窓があった。

 その大窓から見える光景は、講堂のステージ。

 それも、二階の席よりも高い位置から。

 ……どうやら、講堂の機器を制御する管理室のようだ。


「お? やっときたな、亮。……俺の後ろを歩いてたってのに、何で遅れたんだ?」


 突然、圭吾の声が聞こえた。

 その声と同時に、さらに奥の引き戸が開き、圭吾がひょっこりと姿を現した。


「……正直、驚いたんだよ。だから呆気に取られて固まって、遅れたんだ」


 とりあえずそう言っておくと、圭吾は笑いながらこちらに向かって来た。

 うぜぇ……。


「……ところで、その奥はどうなってるんだ?」

「ん? この奥には左に曲がるガラス張りの通路があって、その先にはココと同じような作りの、体育館の管理室があるんだ」


 言いながら引き戸を閉めた圭吾は、突然何かを思い出したかのように俺を管理室から押し出した。

 そして先程見つけた茶髪の女子生徒に近寄り、勝手にヘッドホンを取って椅子を回した。

 丁度、俺の方を向くように、だ。

 だが彼女は、急な事に驚き、また見知らぬ男子生徒である俺が目の前に居る事に、困惑しているようだった。

 無理も無い。

 しかし圭吾は、そんな事などお構い無しに彼女の肩を軽く叩きながら、紹介するぜ、と前置きして言った。


「こいつはココ、情報提供部の部長で一年生、紺野 恵(こんの めぐみ)だ。元々放送部を再建しようとしてたらしいんだが、部員が集まらなくてな。で、そん時に色々あって俺と出会ったわけだが、何ならいっその事新しい部でも作るか? って提案して、今があるんだよ」

「お前らしいって言えば、お前らしいな……俺は霧島 亮だ。よろしくな」

「あ、はい! ……よろしくお願いします……」


 言いながら恵は立ち上がり、オドオドしながら会釈した。

 ……ん? 立ち上がった瞬間、身長が伸びた気が。

 座り縮みする体質か? ……何言ってんだ、俺。


「霧島さんの事は、圭吾さんからよく聞いています。それで…部員の少ないこの部活に、入ってくれる優しい人だとか……」

「……圭吾。お前、これが狙いだったのか」

「何の事かなぁ~。――とりあえず、どこにも所属していないのなら、ココに入部してくれよ~…な?」


 言いながら圭吾は、どこからともなく入部申請紙を取り出して、俺に差し出してきた。

 ……な、じゃねぇよ馬鹿野郎。

 その馬鹿野郎の目は、気持ち悪いくらいに輝いている。


「ったく、調子のいい奴だな。……ちなみに現在の部員は何人だ?」

「えと、三人。俺と恵と直樹だな」


 直樹も入ってるのか。

 ……アイツなら、無理矢理じゃなくても誘われれば入るだろうな。

 だったら俺も、入るしかないんだろうよ。……いや、入ろうじゃないか。

 そう決心し、入部申請紙を手に取る。


「入ってやろうじゃないか、情報提供部。試しに、な」


 入部申請紙をヒラヒラさせながら問うと、恵の表情が綻び、笑みへと変わった。

 ありがとうございます! と元気な声を上げて。

 そんな彼女の横、圭吾は右手の親指をグッと突き出してきていた。


「それでこそ亮だ! ありがとな、マジで。ありがとな!?」

「うるせぇ、黙れ。詰まらない部だったら、すぐに辞めるからな。退屈させるなよ?」


 少々キツく言ってやると、圭吾はしょぼーんとしながら、近くのキャビネットの中から部活案内パンフと書かれた小冊子を取り出して、俺に差し出した。

 俺はそれを無視しながら、一つの疑問を持つ。

 ……毎日、朝と放課後に放送をやってる奴、確かメグミって名前だったよな?

 その疑問は、また今度聞いてみる事にする。

 まぁ、もし本人だったら、キャラが変わり過ぎているという事になるのだが……。

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