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第40話:変わったのは彼女?それとも…

 俺と和葉が許婚である事がバレてからというもの、毎時間の休憩時にはクラス内の全員からの質問攻めが続いた。

 そして今は昼休み。

 やっとの思いで抜け出す事が出来た為、弁当片手に切れた息を整えながら、フェンスに寄りかかって座り込んだ。


「……疲れた……」


 呟き、青い空を見上げてため息をつく。

 それとほぼ同時、入口の扉がゆっくりと開き、先に朔夜が、少し間を空けて鞄を持った圭吾が出て来た。

 二人は俺の姿を見つけると、朔夜は微笑を、圭吾は肩を竦めて苦笑しながら近付いて来た。


「やっぱりここに居たんですね。捜したんですよ?」

「ん? あぁ、悪いな。一刻も早くあの状況から抜け出したかったからな」

「た、確かにすごい質問攻めでしたからね……。それにしても、許婚ってのは本当なんですか?」


 朔夜は心配そうな表情で首を傾げて、問い掛けて来た。


「………本当だ。親同士が決めた事なんだけどな」

「その親同士は、どういう関係なんですか?」


 再度の問いに、俺は迷った。

 こういう事は話すべき事なのか、と。

 だが、その迷いを打ち壊したのは圭吾だった。


「迷う事はないんじゃねぇか? 亮。朔夜ちゃんはもう家族みたいなもんだろ? それに相応しい期間を過ごして来たんだし、結構親しくしてるしな。――ってか、弁当食おうぜ、弁当」


 言って圭吾は、俺の横にあった弁当を広げて割り箸を割り、先に食べ始めた。


「理由になってないって……まぁいい、話そう。――その親同士は腹違いの兄弟でな。兄に当たる俺の親父は、俺の母である霧島家に婿入りしたんだ。ちなみに霧島家ってのは、大昔から代々継がれている由緒ある家系で、特別な血と運を持っている。で、それに目を付けた親父の弟であり和葉の父は、俺の親父に頼み込んで、結果許婚となったんだ。詳しい理由は知らないが、ただでさえ有名な如月家に霧島家が交われば、名も上がると読んだんだろうな」


 息継ぎを一つ。

 さすがに喋りっぱなしは厳しい。


「え? でも、亮さんのお父さんが霧島家に婿入りしたんですから、もう目的は果たせているんじゃないんですか?」

「いや、親父はその母である斉藤家についていったんだ。俺からして祖母と祖父が離婚したって奴だな。まぁ、その為に子供を許婚にしたってわけだ」


 その答えに、朔夜は理解出来たのか、納得したように数回頷いた。

 すると圭吾は、付け足すように話を始める。


「ま、所詮は親が決めた事だからな、もちろん亮は反対しているんだ。……だけどな、和葉の方は賛成なんだ。許婚とか関係無く亮が好きだからなぁ」

「そ、そうなんですか……でも、先ほどは素っ気無い態度でしたよ? ――あ、そろそろ私も食べます」


 問いと同時に、圭吾に渡された割り箸を割って、卵焼きを掴んだ。

 それに続いて俺も、割り箸を手に取る。


「おい圭吾。そのシュウマイ、二個は残しておけ」

「しょうがねーな……――確かに、俺もあれは何故か分からないんだ。亮にベタベタだった小学校を卒業した後は、中一の時に一度か二度しか会ってないからな。嫌いになったのかもしれない。――だぁ! その春巻き、取っちゃらめぇ!!」

「キモい声だすなっ。――それだと嬉しいんだが、嫌いって一点張りでは無い様だ。朝、席へと向かう途中、すれ違った時に俺をりょーちゃんと呼んだからな。――朔夜、その餃子は中身が無いぞ」

「ほえ!? 掴んだら軽く潰れちゃいました! ……味が無いです……」


 皮だけの餃子を食べた朔夜は、悲しい表情をしながら口に含んだ皮を噛み続けた。

 それを見て笑った圭吾は、堪えながら膨らみのある餃子を口に含む。


「お、これはほんも――って、中身が米!?」

「あー、わりぃ。夢月が焼いてた餃子を、俺が弁当に詰む為に手伝ったんだがな、全ての餃子が見事に中身をぶちまけてしまったから、別のを入れて補ったんだ。その後は、キッチンを追い出されたが」

「こ、このやろう……夢月ちゃんの手作りを……――っと、つまりは、何かを企んでいるって訳か?」


 すぐに態度を変えてくれた圭吾に感謝しつつ、もう一つの疑問を圭吾に聞いてみる。


「そういえばアイツ、何で眼帯してんだ?」

「んもも、ほんもんむんむもんもお」

「食い終わってから喋れ、行儀悪い」


 言うと圭吾は、んぐんぐっと言いながら親指を立てた。


「んぐっ……それは、本人に聞くもんだろ?」

「それもそうだな……」


 眉を少し寄せて呟き、そして動かしていた割り箸を止める。


「……っと、聞き忘れてたが、その鞄は何だ?」


 問いながら、圭吾の隣に置いてある鞄を指で示すと、圭吾は思い出したかのように割り箸を弁当箱の端に置き、鞄を開いた。

 その中から出て来たのは、今日の一時間目に配られた、FMP社製のノートパソコンだった。

 閉じている際のサイズはA4ノートぐらいで、基本色であるシルバーのフレームの中心に〝FMP〟と模られた金色のプレートが埋め込まれている。

 圭吾はそれを開き、こちらに見せて来た。

 デスクトップの壁紙はすでに圭吾使用となっており、烏の羽根が舞う光景をバックに、両手に銃を持った目つきの悪い青年と、その青年に抱きつくような形になっている笑顔の少女が中心にでかでかと写っていた。

 そして右端には〝ロリゲレン~デメゴンガマスを撃て~〟などという、訳の分からないテロップが小さくあった。

 ……時々、圭吾の趣味が理解できない……。


「何、怪訝な表情してんだよ……――とりあえず、見ろよコレ! 内臓HDハードディスクの容量が1TBテラバイトもあって、メモリーが8GBギガバイト以上なんだぜ!? しかもこれ、FMP社の最新型で、まだ発売もしてねぇんだ!」

「ちょ、ちょっと待て。……何だよ、1TBって? それにメモリーも」


 そう問い掛けた瞬間、圭吾は馬鹿を見るような表情で俺を見た。

 そしてため息をついた後、パソコンのデスクトップにあるマイコンピューターとやらをクリックして、何かを開いた。


「いいか? HDってのはこのパソコンに入れるデータの保存先で、1TBって事は大量のデータを入れられるって事だ。そして、メモリーはパソコンが処理を行う為のプログラムやデータを一時的に記憶しておく装置で、容量が多いと記憶の処理が早いって事だ。わかったか!?」

「あ、あぁ……わかった……」


 圭吾はこういう事に関しては、無駄に熱くなるんだよな……。


「……にしても、FMP社はすごいな。確か、二〇一七年に突然設立されてから、独自で生み出した新たな技術と製品で急上昇し、日本が代表する企業の一つにまで伸し上がったんだろ?」

「そ、そんなにもすごい会社なんですか!?」

「ま、亮の言葉に付け足すと、FMP社は世界進出中の企業だからな。近い内に、宇宙関連の事業も始めるって噂だぜ」


 宇宙、ねぇ……。

 内心で呟きながら、俺は空を見上げる。

 その先には、どこまでも青い空と少しの白い雲が浮いている、いつもの空だ。

 ………宇宙は、

「宇宙はあまり好きじゃありませんね。だって空が、青い空が無いんですもん」


 不意に朔夜が放ったその言葉は、俺が思っている事と同じだった為、一瞬驚き微笑した。

 すると朔夜は、俺が微笑した事に気付いたのか、困った表情を見せた。


「ど、どうして笑ったんですか!?」

「いや、同じ事を考えてたんだなって思ってな」


 吐息を一つし、話を変える。


「さ、早く弁当を食い終えるか」


 言って割り箸を動かし、残った物を食べるのを再開する。

 すると他の二人も、釣られて再開した。

 腕時計を見れば、時刻は午後一時。昼休みの終わりは近い。











「おかえりなさい、りょーちゃんっ」


 俺は今、目の前の光景に困惑し、唖然としている。

 何故か自宅の玄関で、和葉が出迎えているのだ。


「……どうしてお前がここにいる?」


 とりあえず問う。すると和葉は、微笑みながら小首を傾げた。


「もちろん、許婚だからよ? ほんとは乗り気じゃなかったんだけどね、りょーちゃんが良いのならって思って……も、もちろん夢月ちゃんもだけどね」


 途中、小声で呟き、最後は慌てて両手を振りながら言った。


「そうか……まぁ、もちろん駄目だ」

「えぇ! 何でよ!?」

「冗談だ」


 再度慌てた和葉を見て、俺は笑いながら答えると、彼女は驚いた表情をし、そして笑った。

 冗談だった事に安堵した、苦笑混じりの笑い声だ。


「許可してもいいんだが、二、三聞きたい事があるんだが、いいか?」

「もちろんいいわよ。とりあえず、リビングでね」


 言って和葉はリビングへと向かった為、俺もその後に続いてリビングへと向かう。

 するとキッチンの方から、いつもの声が聞こえた。


「お帰り、お兄ちゃん!」


 それは最愛の妹、夢月の声だ。


「あぁ、ただいま。何か変わった事はあったか?」

「カズちゃんが突然来た事以外、何の変わりもないよ」

「そうか、それはよかった」


 そう言い残し、リビングにあるソファに座って、テレビを見ながら待っている和葉の下へと向かう。

 そして、彼女の前にあるテーブルを挟んだ先に座って彼女と向かい合った。


「……さて、さっき二、三と言ったが、四つ聞かせてもらう」

「えぇ、いいわよ」


 和葉の了承を得て、吐息を一つ。


「それじゃ、聞かせてもらうかな。最初は――」


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