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本物の殺し合い

「ニンゲンノマチヲセメオトセー!!」


 その言葉がオーク集団の一番後ろから放たれた直後、数十体のオーク達がいっせいにマルシアの街に向かって走り出した。

 ただ一体を除いて。


「あいつは動かないな。ちなみに戦えるのか?」

「一応戦える。多分今こっちに向かって走ってくるオークくらいなら、1人で勝てる。それでもあれに挑めばまず間違いなく私は死ぬ」

「そうか。ならあいつは俺がやる。セナはあのオーク達を」

「分かった」


 あいつとはオーク集団の一番後ろにいるであろう者である。

 まだ姿は見えないが恐らく化け物だ。こいつだけ魔力の質が全く違う。

 なんというか、鬼神に似たものを感じる。もちろんそれとはかなり差があるのだか。

 それにしてもなぜ今こんな事が起こっているのか分からない。

 そんな事を考えていると、この街にいた兵士たちがぞろぞろとオーク集団に向かって走り出し、数十秒後、その両者がぶつかった。

 鎧と棍棒を装備した2メートルはあるオーク一体に、3人で対応している。

 それでも数が足りない。オークの数が以上に多いのだ。

 そこでついにやつの姿が見えた。周りのオークがかなり街の近くに来たからだ。

 そいつは街から20メートル程先の平原に佇んでいる。

 色が他のオークの少し茶色がかった色とは違い真っ黒い。そして装備が鎧ではなく皮のようなものを腰に巻いているだけ。

 そして棍棒は持っておらず、デカすぎる刀が地面に突き刺さっている。


「よし、行くか」

「うん。死にそうになったら絶対逃げてね」

「うん。そう出来たら」


 そんな短い言葉を交わし、アルスとセナは戦いに参加した。

 アルスは黒いオーク。セナは兵士たちへの加勢だ。


「やっぱり、遠くから見るよりもでかいな……」


 黒いオークの目の前に立ってみて思う。

 他のオークは2メートル程だろう。それでもこいつは恐らく3メートルくらいある。

 アルスは息を飲んだ。

 正直手も足も震えて、汗も出ている。

 こんなやつと戦うのは初めてかもしれない。

 そう思い手に魔力を込めたその時。

 地面に刺さっていた刀と黒いオークが消え、一瞬で魔力の位置が前から後ろへと移動する。

 振り返った瞬間、オークが刀を横に一閃。

 アルスはそれを後ろに飛んで躱す。が、右の横腹にそれが当たっていたのだ。


「ぐっ」


 血が出てきて焼けるように痛い。

 こんな苦しい痛みは初めてだ。

 それを急いで火魔法で焼き、止血する。


「オマエ、ヨケタナ」

「あ?」

「オレノナハ、ドーハ。オマエハ」

「……俺はアルス」

「ソウカ、デハイクゾ」


 その言葉と同時に黒いオーク、ドーハからはおぞましさが増した。

 そしてアルスはこの瞬間理解した。これはただの戦いではなく。本物の殺し合いなのだと。

 アルスは自分の魔力を半径10メートル付近まで張り巡らせ、魔力で結界のようなものを作る。


「後ろ!」


 アルスの張り巡らせた魔力の中に別の魔力が入ってくることでドーハの位置を把握。

 同じ刀の一閃を風魔法でジャンプして避ける。

 焦ったのか魔力を放出しすぎて頭と足の位置が逆になっているが問題ない。

 アルスはドーハの顔に火魔法をぶつけた。


「どうだ。直接当たった」


 ドーハの顔に直接当たった。それでもそいつにはダメージがあまり通っていないように見える。

 やっぱりか。

 これは予想していた。今の魔力出力では傷をつけられないだろうと。

 それなら魔力出力をあげるだけだ。

 それらの考えを一瞬でまとめる。

 ドーハはアルスの目の前に詰め、5連撃を繰り出す。

 それをアルスは風魔法を4連撃まで風魔法で弾き避けた。

 一撃事に加速するその技は5連撃でアルスの防御を破り、魔力で作った結界を破壊した。

 それを見たドーハがすぐさま中に浮かぶアルスを肩で突き飛ばす。

 アルスは飛ばされながらも風魔法で受け身の準備とと、片手で空中に炎の槍のようなものを作り出しドーハに向かって飛ばす。

 そしてアルスが地に着地する瞬間、ドーハが走りながら炎の槍を切り、跳んで首目掛けて刀を振ってきた。

 それを風魔法で身体を無理やり飛ばして避ける。


「ハァ、ハァ、ハァ……これじゃ、いつ魔力が無くなるか分かったもんじゃない……」


 ここまでドーハの攻撃を避けられているのはほとんど風魔法と魔力の結界、魔力を張り巡らせているからだ。


「ナカナカシナナイナ」

「ハァ、死んで、たまるか……」


 長期戦はこっちが圧倒的不利になる。ならば短期戦に持ち込まなければならない。

 それでも、こっちから攻撃する機会が無さすぎる。

 言ってしまえば、実力に差がありすぎるのだ。

 そもそもこっちの攻撃は効くのかどうなのか。

 魔力出力をあげて打った炎の槍は切られてしまった。

 いや、これはまだ戦闘中に魔力が切れるのにびびって抑えているだけだ。

 まだ魔力は残っている。

 これを全て使い切る覚悟で挑まなければ勝つことは出来ない。

 なんでもいいから隙が欲しい。

 そんな事を考えた途端、


「ア?」


 ドーハの右腕にナイフが刺さった。


「いまだぁぁぁぁぁぁ!!」


 セナの声だ。セナがナイフを投げつけ、一瞬の隙を作った。

 アルスはこの一瞬を見逃さず、両手に大量の魔力を込める。

 どうなるかは分からない。それでもやらなければいけない。

 右手に炎。左手に闇。

 このふたつを混ぜる。

 すると、先程まで赤く燃えていた炎が黒い炎に変化していく。

 それをすぐさま炎の槍に変えていく。


「ヤミ!? オマエマジンカ!!」


 それに気づいたドーハがすごい勢いでこちらに向かってくるが、もう遅い。


「俺はお前を殺す」


 黒い炎の槍は全部で10本。

 それらをこちらに向かってくるドーハに向かって放つ。

 ドーハはそれを切ろうとしたが、避ける判断に変える。

 しかし10本中7本の槍が避けられてしまったものの、3本は直撃。

 黒い巨体は後ろに吹っ飛ばされる。

 しかし致命傷にはならない。確実に殺すためには至近距離で魔法をぶつける必要がある。

 そう判断したアルスは風魔法で追う。


「オマエゴトキガーーー!!!」


 そう言いドーハは飛んできたアルスに刀を振り上げる。

 それはアルスのお腹から肩までを切った。

 切られた箇所から血が吹き出てくる。

 死ぬほど痛い。熱い。苦しい。

 それでもここでこれを使わなければ死ぬ。

 アルスは魔力の結界も、張り巡らせた魔力も解き、全魔力を右手に込める。

 使う魔法はさっきと同じ。


「黒炎槍!!!」

「オマエゴトキ、アノオカタガカナラズクイコロス!!!」


 その言葉を最後に、ドーハはこれ以上何かを話すことはなかった。

 アルスの放った魔法はドーハの心臓を貫き、でかい風穴を開けたのだ。


「怖かったーーー」

「やったーー!」

「痛って!」


 草原に倒れたアルスを泣きそうな笑顔でセナが抱きしめる。

 正直痛すぎてキツかった。

 だが黒い巨大なオーク、ドーハにアルスは勝った。

 つまり生き残ったのだ。格上との殺し合いで。

 これは本当に嬉しい。

 周りを見てみると、戦いを終えて何やら楽しげに話している兵士たちが見える。

 どうやら勝ったらしい。セナの影響だろうか。押されていたように見えたが。


「あーやべ」

「どうしたの? あ、もしかして、女の子に抱きしめられて嬉しかった?」


 ニヤニヤしながら言っているがそんなことじゃない。

 いや、それもあるかもしれないが、魔力切れである。


「え、ちょ、ちょっと!?」


 アルスはセナに抱かれたまま意識を失った。





























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