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旅の準備と戦闘開始

 金髪の盗賊少女セナと共に旅をすることとなった。

 こんな国から指名手配されるようなやつと一緒には絶対に嫌だったが、そういえば今一応自分も同じ状況だったとアルスは思い出す。

 なぜこうなったのか……。こうなってしまえば国に入ることは難しいだろう。それに周辺の村や街にもだ。

 そんな落ち込んで頭を抱えているいるアルスを見てセナが一言。


「まぁまぁそんな考え込まずに。バレないようにすればいいんだよ」


 バレないようにすればいいなどと簡単に言っているこの状況を作り出した彼女。

 そんな彼女をアルスは睨みつつ、これからの事を話し合おと思い口を開く。


「これからのことだが。自分が何者なのかを知るためには、やっぱり魔人の国に行くべきかな?」

「それもそうだけど、歩きだとかなりかかっちゃうね。2、3年くらいかな?」


 2、3年か……。それならとりあえず、近くの街や村に行って食料、衣服などを調達するべきか。いやそれよりも両親に聞いてみるか。と、ここまで考え思い出す。今自分たちは指名手配されていることに。

 それでまた頭を抱えるアルス。ここでふと気がついた。セナの盗んだ箱の中身はなんだったのか。


「そういえばその箱の中身はなんなんだ?」


 セナの手に握られている箱を指さし言う。

 国の衛兵があんな数を集めて取り返そうとしたのだ。それはそれはたいそうなものが入っているのだろう。

 例えば、宝石とかね。


「なんだろ。開けてみよう」


 そう言い小さな箱を開けようとするセナだが、ガチャガチャという音がして開かない。

 鍵がかかっているのだ。


「鍵か。よし、衛兵のリーダーみたいな人は箱思いっきり壊してたし、風魔法で切っちまおう」

「よしじゃあお願いしまーす」


 短いやり取りで鍵のかかった小さい箱を破壊することを決め、セナがそれを上へ投げた。

 それをアルスが風魔法で中身を壊さないように気をつけながら破壊する。

 そして、中身とバラバラになった欠片が地面に落ちた。

 それをセナが拾い上げ少し落ち込んだような表情をする。


「私、お金がなくて盗人やってるんだけど……これはお金になると思う?」


 そう言って見せられたのは一つの鍵。持ち手の上に犬の顔にようなものが付いているが、かなり古く、ボロっとした感じだ。


「鍵か? これがそんなに重要なのか?」

「私これいらない。あげる」


 落ち込んだセナに鍵を渡される。

 正直これから先これを使うことがなさそうなため、今すぐ国に返したいところである。

 たが返したところで許して貰える訳ではないのだろう。

 それなら貰ってしまおう。

 アルスはそれを受け取り、絶対に捕まらないようにしようと決心する。


「てかこれどこに向かってるんだ?」

「私も分からない」


 今現在森を出て、国とは反対方向の道に沿って歩いているだけである。

 セナは龍の里を出てたまたま行き着いたのがこの国だったらしい。

 そのため2人ともここら辺土地については、全くの無知である。

 ただ地図を買おうにも近くに街や村など見当たらないため、しばらくはこの道に沿って歩こうと決めた。

 6日ほど歩いただろうか。アルスがログダースと出会った街に戻ってきた。

 ここに来る途中ブラックパンサーなどを主な食料としてきた。寝る時はもちろん野宿である。初めて地面で寝た時は固くキツかったが、数日するとすぐに慣れてしまった。

 それにしてもこの街は王都に近いだけあって人が多いなぁ。

 でも近いってことは情報は回ってるんだろうなぁ。

 そんなことを考えて街に入ることを躊躇っているアルスを見て、


「バレなきゃいいんだよ!」


 背中をバシっ! と叩きそんなことを言い、何かを手渡す。

 ボロボロの布である。これは偽の小さな箱と同時にセナがアルスにかけたものだ。


「これを頭に巻いて行けばバレないって。あ、半分ちぎって分けて頂戴。ひとつしかないから」

「まぁそうだよな。バレても逃げるしかないよな」


 アルスは布をちぎりながら言葉を返す。

 もしバレたら全力で逃げよう。捕まるのはなんかヤダし。

 街に入る決心をし、一歩を踏み出した。




 街に入っても案外バレることは無かった。

 アルスとセナの特徴が書かれた紙はちょくちょく見かけるが、そもそもこの二人の顔を知っている者がいないのかもしれない。

 アルスはログダースから貰った銀貨を使い、まず真っ黒い全身を覆えるローブを二着購入した。

 これは人が多いところで自分たちの顔を隠すためである。

 その次に地図を購入した。

 これには人の住む土地しか書かれてはいないが、それでもとても役に立つだろう。

 これら以外にも食料などの物資を購入した。

 やることを一通り終えたアルスとセナは、いつかログダースに声をかけられたベンチに腰掛け、地図を眺めていた。

 そしてセナが言った。


「中央大陸には三つ国があるんだ。それも見事に三角形に別れて」

「確かに、そう言われればそうか。その真ん中に獄炎の神殿っていうのがあるのか」


 人が暮らす土地である中央大陸ほぼ四角形の大陸だ。その中で三つの国が三角形となっており、その中心に獄炎の神殿というものがある。

 アルス達がいた国はケルベウス王国。ここは南西の国だ。

 北にはケルヘウス王国。南東にはケルペウス王国。

 どれも似た名前の国である。


「目的地を北のケルヘウス王国にしないか? 魔人の国に行くために多分近くを通るだろうし」

「確かに。それなら一度獄炎の神殿ってとこに行ってみない? 私龍の里から出たことなくてさー。いろいろ見てみたくて」


 いいかもしれない。実はアルス自身も村から出たことがあまりないため、こういう所はぜひ一度行ってみたいとどっていたところである。


「よし。行ってみるか」


 やった! と小さく喜ぶセナ。


「それじゃあそろそろ暗くなるし、今日は宿でも取って寝るかー」

「お? 一緒にかい?」


 セナが口に手を当てニヤニヤしながら聞いてくる。

 それにもちろんアルスは、


「なわけないだろーが」

「いで」


 頭にチョップを食らわして否定した。

 当たり前である。出会ってまだ1週間程度なのだから。

 そんなやり取りをして、二人は宿に向かうべく立ち上がった。

 途端事件が起きた。


「魔物だー!! 魔物が攻めてきたぞー!!」


 街の塔に登り、大声をあげる男。

 その男が向いている方向はこちらである。いや、正確にはこちらの少し後ろの方か。

 それを見てアルスとセナは後ろを振り返る。

 振り返るとそこには数十体のオークがいた。

 オーク達は皆大きめの棍棒を持っており、傷だらけでボコボコの鎧をまとっている。

 その集団の一番後ろに明らかに強さが段違いの個体がいることにアルスは気づいた。

 おそらくセナも様子からして気づいているのだろう。少し震えているように見える。

 姿はまだ見えないが、魔力の質が違う。おそらくそいつがこのオーク集団のリーダーだろう。

 そいつがいる以上逃げられないと悟ったアルスは、すぐに臨戦態勢に入る。

 そしてその直後、


「ニンゲンノマチヲセメオトセーー!!!」


 そんな声が集団の一番後ろから放たれた。












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