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盗賊セナ

 日が昇り始める頃。ケルベウス王国から逃亡して、現在は森の中にある小屋に隠れていた。

 王都から10キロ程離れた所にあり、木々に囲まれているため追ってくることは難しいだろう。

 それにしても、王都で指名手配されてしまった。このことは、別にの街や国にもすぐに知れるだろう。そう考え落ち込むアルスをよそに、ロープを解くのに一生懸命な一人の金髪盗賊がいる。


「ちょっとこれ取れないかも」

「いや、どうなったらこうなるん?」

「いやねー……少し特別なものだからね」


 しょうがないしょうがないと小さくつぶやき解く作業を続ける金髪盗賊。

 確か龍の素材で作られている的なんならことを言っていた気がする。が、それでも意味の分からない絡まり方をしているため、今でも行動をともにしている。


「そういえば、名前はなんて言うんだい?」

「俺はアルス。そっちは?」

「私はセナ。ところでアルス君は魔人? それにしては魔人の特徴である黒い羽がないし、肌も人間と同じ」


 人間は普通魔法を使えない。魔法を使える種族は限られている。

 その中でもそれを得意とするのは魔人だとエリサがいつか言っていた。


「俺は人。名前もない村で生まれたただの人だと思う」


 アルスの人という発言にセナは困惑した顔をする。

 そしてすぐに落ち込んだような顔をして下を向いてしまう。


「私実は龍人と人のハーフなんだよ。もしかしたら君は魔人と人のハーフなんじゃないかと期待してたんだ」


 アルスは魔法を使えるが、両親は人、今さっきセナの言った魔人の特徴とは一切合致しない。

 それにしても、龍人と人のハーフ。だから龍の素材で作られたロープなんて持っているのか。

 納得だ。


「そうだ! 闇の魔法使える? 魔人しか使えないって聞く」

「闇?」


 セナは落ち込んでいた表情から一変、キラキラした目でこちらを見ている。

 どうやらまだ魔人と人のハーフ説を諦めていないらしい。

 闇の魔法という単語を初めて聞き、若干戸惑いながらもそれを試すべく手のひらを出す。

 しかし、どういうイメージで闇魔法を使えばいいのか分からないため、とりあえず目をつぶり考える。

 闇、暗い、影……。

 まぁよく分からないけどやってみるか、と、手のひらに魔力を込める。

 俺はどうせ出来ないと思っていた。

 だが、手に魔力を込めた瞬間に丸くて真っ黒い闇の塊が浮かんだ。

 それを見たセナが、


「やぁぁぱりぃぃ、魔人じゃないかー!」


 すごい嬉しそうな表情でこちらを指指して言う。

 アルスは闇魔法を使うことができたことの驚き、自分が何者なのか分からなくなっていた。

 人なのか魔人なのか。


「魔人……おれが?」

「まぁよく分からないけど、取れましたであります!」


 そう言い、どうだー、と、ロープを見せて自慢してくる。

 自分で巻き付けたのにも関わらず。

 それを完全に無視してアルスは考える。

 今、旅の目的という物がない。

 ただエリサが一度魔人の国に帰ると言い出し、すぐに村に帰ってしまうのは自分のプライドが許さなかっただけである。

 この際自分が何者なのかを突き詰める。

 これを旅の目的としよう。


「よし、決めた」


 未だにロープを解いたことを自慢しているセナを置いて立ち上がる。

 彼女は慌てて立ち上がり、聞いてくる。


「何を?」

「旅の目的、自分が何者なのかをはっきりさせようと思う。てかそれ自慢してるけど、巻き付けたのに自分だから」

「いやこれしないと一人で逃げてたよね? 私を置いて」


 もちろんと返し扉から外に出ようとする。すると、後ろから呼び止められて振り返る。


「ちょと、あのーですね。私もついて行ってもいいでしょうか」

「なんで?」

「私……龍の里を出てからずっと一人なもので……」


 急に声を小さくしてそんなことを言う。

 これにアルスは一つやり返してやろうと考え、


「もしかして、友達ゼロ?」

「ぐふっっ」


 セナは膝から崩れ落ちていく。

 これでかなりのダメージが入っただろうか。正直本当にいないとは考えていなかったアルスではあるが、これは指名手配された腹いせだ! と思い、セナの肩にてを置き、めちゃくちゃにウザイ感じで、


「ドンマイ」


 一言言ってやると、


「あ、あんただった一人じゃない!!」

「ぐふっっ」


 セナの言い返した言葉で立場が逆転。まさに特大ブーメランである。

 アルスには同年代の友達がいない。

 村にいた時も、一人で畑の手伝いや、家で遊んでいた。

 膝から崩れ落ちたアルスの肩に手が置かれ、


「ドンマイ」


 少しフッと、笑われ全く同じ言葉をかけられた。


「しょ、しょ、しょうがない。一緒に旅するか」

「あ、あ、ありがとう。私は友達いるないけどね」

「俺も友達いるないけどな」


 震え声で会話を済ませ、扉を開ける。

 外に出た時にはもう太陽は昇っていた。そして二人は森を抜けるべく歩き出した。

 ちなみに、友達いるないけどという会話は森を出る頃まで続いた。
















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