表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

王都と盗賊少女

 王都に到着した。

 ここに来るまで10日程歩いた。その道中、アルスを雇った獣人の行商人ログダースが言っていた危険な魔物は現れなかった。

 ブラックパンサーを見かけることはあったが、戦闘になることはなかった。それとは別に数回、泥にまみれた人間のような魔物と戦うことがあった。

 これらはそれほど強い訳ではなく、水の魔法で泥を流し、風の魔法で切った。

 そういうわけで、特に何か起こるでもなく王都に着いた。

 王都に入るにはでかい門の前で入国検査を受けなければならず、アルス達はそれらを終え、少し中に入った所にいる。


「王都までありがとうございました。これは報酬です」


 そう言われ、アルスはログダースから少し重量のある小袋を受け取る。


「それにしてもお強いのですね。ブラックパンサーが一度も襲ってこないとは。実はブラックパンサーという魔物は、己より強いと感じたものには襲ってこないのです」

「なるほど、通りで」

「それに、あれはCランクの魔物になりますからね」


 モンスターにはランクがある。もっともそれは人が勝手につけたものであるため、人の国以外ではあまり使われないらしい。

 そもそもランクとは、魔物を狩ることを職業とし、それらを売って生計を立てている人達がいる。その人たちが数人でチームを作って一緒に仕事をする。そしてチームの強さでランクが与えられ、狩れる魔物決まる。ちなみに、一つランクが上がるだけで魔物の強さは倍以上に跳ね上がるらしい。そして犯罪集団のチームもある。


「では、行かなければならない所があるので私は失礼します」


 そう言ってログダースは人混みに消えていった。


「一人になってしまった」


 一人になってしまったアルスは、前の所持金ゼロの時とは違い、金がある。

 アルスは受け取った小袋を開け中身を確認する。

 おぉ……まじか。

 小袋の中には多くの銀貨が詰まっていたのだ。

 これで当分の間食事に困ることはないだろう。

 もちろん使いすぎるのは良くない。そう思い、アルスは王都の人混みに向かってルンルンとスキップをしながら歩き出した。

 周りの人からの変な人を見る目に気づかずに。



 しばらく王都を散策したアルスは現在迷子になっていた。

 場所は路地。周りに人は見当たらない。

 王都に到着したのは昼頃、いまは夕方である。

 かなりの大金が手に入って調子が上がっていたアルスは、この広すぎる王都を探検しようと路地に入ると、それから何度も何度も角を曲がりついには迷子と言える状況になってしまった。

 それだけ歩いて手に入れたものと言えば、ここがケルベウス王国と言うことだけ。

 もう出られないのでは……。そんなことを考えていると急に目の前が暗くなった。

 何かを被せられたそれはボロボロの布のコートだった。

 それをどけると、目の前には金髪の女の子が立っていた。

 身長はアルスと同じくらいで少し低い。ダイヤモンドのような透明で青く輝く瞳。髪は腰に届く程長く綺麗な金髪で、頭には桃色の花の髪飾りを着けている。服装は少しボロっとした印象だが、とても可愛らしい。年は同じくらいだろうか。

 そんなことを考えながら彼女に見とれていると、小さな箱を手渡された。

 これが何かを聞くより先に、


「これ、よろしく」

「え?」


 よろしくと手を合わせ、壁を蹴って屋根の上に上がって行った。

 急な出来事にアルスは、なんだったんだ……とつぶやき、そして、


「待てーー! そこのお前! そのまま止まってろ!」


 そんな声がしてアルスは後ろを振り向くと、すごい勢いでこちらに向かって来る男3人がいた。

 腰に剣を携え、鎧を身にまとっている。

 雰囲気的にやばい……。

 そう感じたアルスは反射的に逃げ出してしまった。

 金髪の女の子から受け取った小さな箱と共に。



 風の魔法を使い何とか逃げ切ったアルスは逃げたことを後悔していた。

 鎧をまとった男達3人に顔を見られたおかげで今国中で指名手配されているのだ。

 おそらくこの箱のせいだが、開けて中を確認しようにも鍵がないため開けることが出来ない。

 今は夜のため暗く、こちらを探すのは困難だろう。


「王都を抜け出すなら今か……いや俺何もしてないんだけど!」


 小さな声でそんなことを言って動き出す。

 赤い瓦屋根の上に隠れていたアルスは慎重に一歩を踏み出したはずだった。それなのにアルスの足は屋根を貫いた。

 バキバキバキッという音と共にアルスのああぁぁぁというマヌケな声が混ざって下に落ちていく。

 落ちた先には若い男女が二人。どこにいるとかは言わないが、まずい状況のようだ。

 やべぇ……。そう感じたアルスは四つん這いでバレないようにドアに向かう。

 しかしそれは、バレていないはずはなく、男女は大声をあげた。

 その声と屋根を突き破った音で、アルスを探す鎧をまとった衛兵達が寄ってきた。その数は最初の3人だけでなく10人程増えていた。

 ドアを開けて固まるアルスはしょうがないと決心して、目の前の衛兵3人を風魔法で吹き飛ばし、道を開け、もう一度それを使い勢いに乗る。

 そのまま走り続けると、昼頃にログダースといた大通りに出た。

 そこから王都から出られると思ったのもつかの間。アルスの足が止まる。

 門の前に何人もの衛兵が待機していたのだ。数は30人程。

 この箱の中身はなんなんだよ。そう思い、聞いてみることにした。


「これは、そんなに大事なものなんですか?」

「当たり前だろう」


 衛兵の強面のリーダーらしき人物に聞いてみるとそんな返事が返ってきた。

 やはりこの箱には何かある。

 あの金髪、何渡してくれてんだ! 頭の中で金髪の女の子にキレながらどうするか考える。

 魔法で攻撃したら完全に犯罪者だよな。今さっきのやってしまったが……。いやこれを素直に渡せばいいのでは? そうだ! そうじゃないか! なにを今まで逃げてきたんだ。


「これを渡します」

「あ?」


 箱を投げて渡すと。強面リーダーは中を確認するべく開けようとすると、チッ、舌打ちをした。

 そういえば鍵かかってたなとアルスは思い出した。

 手で開けられなかったため剣を使い無理やり開ける。

 アルスは少し引いていたが、強面リーダーは箱の中身を見て怒りの表情に変わっていく。


「空っぽじゃねえか……」


 はァァァ、あのアマ! 絶対見つけてこいつらに突き出してやる!あ、そうだ、


「金髪の女がそれを渡してきたんです! 俺は何もしてない!」

「何意味わからんことを! そいつを捕らえろ!」


 その言葉で強面リーダーの周りにいた衛兵と、いつの間にか後ろから追いついて来ていた衛兵が迫ってきた。

 アルスは風魔法を使い上に飛ぶ。

 すると一人の女の子と目があった。

 それは金髪で頭に桃色の髪飾りを着けた女の子、つまり俺に濡れ衣をきせた人物である。

 彼女の手には小さな箱が握られている。おそらくあれが本物だろう。

 よし、コイツも巻き込もう。

 何故かこう考えたアルスは風の魔法で彼女を屋根から衛兵達のいる大通りに落とした。


「え、ちょ、ちょま! くそっ、おりゃ」

「よっしゃ! て、おいおい待て待て待て」


 ガッツポーズをしているアルスを金髪は、腰辺りに隠してあったロープを投げて巻き付け落とした。


「どうだ」

「どうだじゃねーよ! そのドヤ顔やめて! てかこのロープちぎれないだけどぉぉぉ」


 アルスは必死に巻き付いたロープをちぎろうと試みる。が、それは出来ない。


「それは特別な素材でできてるから仕方ない。ちなみに龍の素材さ」


 ドヤ顔がとてもウザイ。

 これでは一人で逃げることは出来ないだろう。仕方ないと諦める。

 二人が落ちた場所は衛兵に囲まれているど真ん中。どうにかして逃げたい。何もしてないけど。


「どうする? まずいよ?」

「なんで俺がこんな目に……、クソっ、もうどうにでもなれ!」


 アルスは風魔法で衛兵を左右に吹き飛ばし、火魔法で門までの炎の壁を作った。

 しかし一人の男が立ち塞がる。

 強面リーダーである。


「ここは通さない!」

「いや通らせてもらいます!」


 強面リーダーが立っている地面が急に崩れる。

 土魔法である。


「行くぞ! 今のうちに。てかロープ離して」

「無理無理。絡まりすぎた」


 そんなやり取りをしながら門を走り抜ける。すると後ろから、


「お前達、覚えておけ! 必ず捕まえてやるからな!」

「「捕まらないよーだ」」

「「ハモるな」」


 振り向きあっかんべーをしてから王都から逃げ出した。

 こうしてアルスは国中で指名手配されることとなった。































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ