特訓開始
魔法の特訓。
まずは魔力量を増やすところからである。
エリサによると俺の魔力はありえないくらいに少ないらしいが、それでも増やす方法があるらしい。
それは魔力が尽きるまで魔法を使うことだ。それだけ聞けば簡単に思えるかもしれないが、魔力を限界まで使うと発熱、頭痛や半日程目が覚めなくなってしまうのだ。
俺は今3日程それを続けている。
「あの……魔力量が増えている気がしないんですけど……」
「まだ3日だよ?」
俺の後ろにいるエリサが笑いながら言ってくる。
彼女は俺が魔力を使い果たした時に、塔に運び入れてくれる。
それはありがたいが、起き上がってすぐ魔力が回復した途端にまた限界まで使わせられる。
「大丈夫だよ。しばらく続けていれば伸びてくるよ」
「……頑張ります」
ここで少しエリサのことを話そう。
彼女は人ではなく魔人で、元々魔力の量が多かったらしい。
それに魔人とは魔法を使うのが一番上手い種族らしい。
それに比べ俺は人。普通人は魔法を使うことが出来ないらしい。俺はなぜか使えるが、その事もあってか魔力量が少ないのかもしれない。
さらにもう4日がたった。もう合計1週間ここにいることになる。
魔力量が少し増えたと思う。
それでもやることは変わらない。ひたすら魔法を使いまくるだけである。
ちなみに使っている魔法は水を出す魔法。今使える火の魔法はここが森の中ってこともあって使えなかった。
「魔法って詠唱とかいらないんですね」
「うん、まぁ時間の無駄だからね。強い魔物と戦う時に詠唱してる暇なんてないし」
気になったことを聞いてみた。
幼い頃に読んだ絵本に出てくる魔法使いは詠唱をしていたのだ。
でもそうだよなぁ。よくよく考えれば詠唱なんて時間の無駄である。1VS1の時なんてそんなことする暇ないか。
「あ、でも詠唱が必要な魔法もあるね。でもそれは絶大な魔力を消費して行うものだよ。確か黒龍を倒すために使われたと言われてるね」
黒龍。
それは俺でも知っている程有名な魔物である。それが一体いるだけで国が滅ぶとかなんとか。
確か本では、龍の民が飼いきれなくなり適当に逃がしたら大変なことになったとか。
今考えたら最悪なことだ。
それにしても詠唱魔法かぁ。
「……1回使ってみたいな……」
思わず声に出てしまった。
普通なら聞こえないくらいよ音だが、ここには2人いない。
「いや! だめだから! ていうか私でも使えないから!」
彼女がダメって言っても使いたいものは使いたいのだ。男のロマンってやつ。
いつか詠唱が必要な魔法が使えるくらい魔力量を増やそうと思った。
もう2週間がたった。つまり1ヶ月である。
魔力の量がかなり増えた。
3日くらい前から急激に伸び始めたのだ。
まだエリサと比べれば全然少ないが、最初と比べれば天と地程の差である。魔力を使い切るのも大変だ。
するといつの間に作ったのか塔の前のベンチに腰掛けているエリサが言った。
「両手で魔法を出してみようか。あともう少し魔力の出力を上げて」
今までこの1ヶ月間は片手で水を作り続けていた。それを両手で?任せなさいよ。
俺は軽い気持ちで両手に魔力を込めいつもより出力を上げて水を出した。
気が付けばベットの上にいた。魔力を使い果たしたのだ。頭が痛い。
「お! 気がついたね。左手の魔力が全く安定していなかったよ」
いつも右手で魔法を使っていたせいなのか、左手の魔力が安定しなかったようだ。そのせいで魔力が一気に放出されたのか。
こんなに頭痛が激しいのは久しぶりだ。久しぶりって言ってもつい最近の事だけども。
これはまだまだだなぁ。まだ1ヶ月だ。伸び代はまだまだあるだろう。てかないとやばい。
そんなことを考えていると、エリサに回復魔法をかけられる。
これは魔力が回復する訳では無いが頭痛、熱、怪我などを治すことが出来る。
自分でもやってみたが出来ずに終わった。そのうち教えてくれるとのこと。
それから1週間がたった。左手での魔力放出が安定してきた。
たった1週間で、と思う者もいるかもしれないが一日中魔法を使っているのだ。
右手では水、左手では風の魔法を常に出している。それのおかげか魔力量も着々と増えてきている。
あ、ちなみに魔法は詠唱とか普通はないけど、技名とか自分で付けるといいらしい。なんか気分が乗るとか。とりあえずかっこいいの考えます。
ふと、ズシン……ズシン……。そんな音が聞こえ初め、だんだん近ずいてくる。
エリサも気づいているようだ。
しばらくして森の中にでかい影が見え始める。
そしてでかい熊が出てきた。そいつは鋭く長い爪と2メートルはあろうかというどでかい図体をしている。
なんかヨダレ垂らして睨んでるし……。よし! エリサがどうにかしてくれるだろ! そう思い後ろを振り返ると彼女は笑顔で言った。
「実践演習だ! さぁ頑張れ!」
「えっ!!」
俺は実践なんて初めてだ。
ましてやそれがこんなでかい熊なんて……。よし、切るか……。
俺はかなり焦っていたのだろう。かなり多くの魔力を右手に込め、鋭い風の刃を放つ。
魔力で作られた風は刃は熊の首、胴体、足など様々な部位を切断した。言ってしまえバラバラである。
魔力の量がどっと減ったのが分かる。
魔法の威力は魔力を込めるほど上がる。やりすぎたのだ。
「ちょっとやりすぎかなー」
「……すみません……焦りすぎました」
エリサが苦笑している。まさかこんなにも焦り、バラバラに切断してしまうとは思ってもみなかったのだろう。
「いや初めてだししょうがない。今度からは実践演習も入れてやっていこう」
「はい、よろしくお願いします」
魔力の量が増えただけでは意味が無いのだ。
あれ? てかなんで俺って魔法の特訓してるんだっけ。 まぁいつか魔法を使う理由が見つかるだろう。
今は実践で冷静でいるために立ち回り方を考えたり、イメージトレーニングをしたりしよう。
「今日のご飯はあの熊の肉の丸焼きだよー!」
後ろを振り向いてみると、いつの間にか運ばれた熊の肉たちがすでに焼かれ始めていた。




