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鬼たちの村

「こちらです」


 アルスとセナは現在、黒い鬼人に村まで案内されていた。

 と言っても明かりがある方に歩いているだけだ。

 恐らくあそこが鬼人達の住む村だろう。

 あたりは真っ暗。

 たまに遠くの方でなにか音がすることがあるが何も見えない。


「あの、この音はなんなのでしょうか」

「地底で暮らしている魔物ですね。ここら辺だとサソリの魔物がよく取れます」


 今この鬼は取れると言った。

 もしかして食べられるのだろうか。

 それと恐らくこのサソリが俺の村で死んでいた正体だ。


「なんだ? 食いたいのか? それなら村で沢山ご馳走してやるぞ!」


 鬼神姉にべっとりとくっついている妹が言った。

 見ているとすぐにわかるが、コイツはお姉ちゃん大好きっ子だ。

 地底に着いて姉と会った時からずっとくっついている。


「それって美味しいの?」


 セナは地底の食べ物が珍しいためだろうか、目を輝かせている。

 それとは対照的にアルスの表情は険しい。

 正直初めて食べるものは怖い。

 ましてやそれが地底のものだ。


「美味しいぞ! それはもうほっぺたが落ちちゃうくらいに!」

「そんなに!?」


 ほっぺたを触りながら二人が目を輝かせている。

 そんな会話を聞きながら歩いていると、


「着きましたよ。ここが今現在、鬼人の暮らしている村です。おふたりは最奥の屋敷にお連れします」


 十分くらい歩いただろうか、思ったよりも近くにあった。

 村は石の壁がここを守るように囲まれていて、木で作られた家々が並んでいる。

 そしてその一番奥にその家たちよりも大きいものがあった。

 それが屋敷だろう。


「こんな陽の光が届かないところにも木があるんですね」

「はい。私達も最初は驚きましたよ」


 苦笑しながら黒い鬼人が返してくれる。

 この人は本当にいい人だと思う。

 だが最初というのはどういうことなのだろうか。

 それを聞こうとしたところで、


「では、屋敷に向かいましょう」


 アルスとセナは村の最奥にある屋敷に招き入れられた。




 屋敷に入ると客間に案内された。

 椅子などは特になく、床に正座をする。

 隣にはセナ、目の前に鬼神、その少し後ろに黒い鬼人と妹がいる。


「私の名前はマナと言います。こちらの黒い鬼人がエドマル。妹はマオという名です」


 鬼神が自分を含めた三人の紹介をし、こちらも同じように返す。


「アルスと言います」

「セナです」


 セナは少し緊張しているのか動きが固くなっている気がする。


「妹がすいませんでした。お詫びと言ってはなんですが、この地底で取れる食べ物をご馳走致します」

「ありがとうございます」


 ご飯が食べられると聞いて隣の金髪がソワソワし始めた。

 しかし俺には気になっていることがある。

 それはエドマルがもともと地底には住んでいなかったような言い方をしたことだ。

 そもそもなぜこんなところに住んでいるのか。


「ところで、なぜ鬼人は地底で暮らしているのでしょうか」


 その疑問の言葉に目の前の二人は目を見開く。

 妹のマオはご飯のことで頭がいっぱいなのか、あまりこちらの話を聞いていない。

 驚いた様子の二人はこちらに聞こえない程の声で何かを話しているが、少しして元の体勢に戻った。


「私達鬼人はもともと地上で暮らしていたのです」


 口を開いたのは鬼神ではなくエドマルの方だ。


「ですが、そこを追い出されてしまい今は地底に……」

「あの、追い出されたとは」


 暗い話になるような気がするが、これを聞かずにはいられない。


「鬼神様がまだ生まれていなかった頃の話です。およそ200年程前のことでしょうか。魔人達が鬼人の国を襲ったのです。もちろん私たちは抵抗しました。ですが神のいる国といない国では力の差がどうしても出てしまいます……」

「ですが今は私がいます!」


 エドマルの話を遮るように鬼神が言った。

 はっきりと、強い意志を持って。

 神のいる国といない国では力の差が出てしまうとエドマルは言った。

 だが今は鬼神であるマナがいる。

 ということは、


「私たちは、魔人の国に戦争を仕掛けます!」


 やはりそうか。

 この鬼人達は自分達のもといた土地を奪い返そうとしている。

 だが魔人の国にはかなりの数の兵がいるだろう。

 それと比べ、恐らくここは200年前よりもはるかに人口が減っているのだと思う。

 つまり、戦力差がありすぎるのだ。

 そして魔人かもしれない俺は敵になってしまうのだろうか。

 それは勘弁だ。

 鬼神なんて相手にして勝てる気がしない。

 それなら自分で敵意がないことを証明せねばと思い、


「あの一応言っておきます。俺は魔人かもしれません」

「はい。分かっております 」

「え?」


 エドマルの分かっているという言葉に他の全員が驚く、


「ああ、すみません。魔神と魔力が似ていたのでそうではないかなと。ですが問題ありません。魔人の国は純魔人でないと入れませんので。でもなぜ魔神のような魔力が……」


 ひとまず鬼人と争うことはなさそうなので安心だ。

 しかし、また気になることができた。

 魔神と似た魔力か。


「もしかして魔神の子なんじゃないの?」


 横にいるセナがすごいことを言ってきた。

 俺には人である両親がいる。

 アルスはセナの言葉をすぐに否定した。


「そんなわけないだろう」

「いや、あるかもですよ。アイツはクズですし」


 そしてそれをエドマルがすぐに否定する。

 彼の口からクズなんて言葉が出てきてしまった。

 それに彼があるかもしれないと言った。

 さっきまでの話を聞いていると、絶対に違って欲しいことだ。

 いや、そもそも俺には小さな村に両親がいるではないか。

 落ち着こう。


「そうだ! アルス達にもこの戦争に参加してもらえばいいのではないか! 姉様!」


 急に何かに気づいたようにはっとして鬼神妹のマオが言った。

 それに周りは皆驚く。二人を除いて。


「いや、でも」

「鬼神様。私もそれに賛成です。戦力も足りていませんし」


 横を見ると全力で首左右に振って否定するセナがいるが、俺はこれに参加する。

 なぜなら純魔人しか国に入れないからだ。

 魔神が俺の親であるならば戦争でしか会うことは難しいだろう。

 強行突破という選択肢はあるが、それをしたらまた国から指名手配犯として扱われてしまう。

 あとは魔人にイラついてしまったことか。

 悪い点で言うと、魔法の師匠であるエリサと敵対していまうことだ。

 そもそもエリサは純魔人なのだろうか。

 いや、そんなことはいい。


「俺も参加します!」


 力強くそう宣言した。

 セナの否定をかき消すように。


「いいんですか?」

「もちろんです。こちらも色々思うところがありまして」


 どうせこれしか魔人の国に入る方法はない。

 これではもしかすると入ることは無いかもしれないが。

 セナが頭を抱えているのは置いておいて、聞いておかなければならないことがある。


「いつ攻めるのでしょうか」


 鬼神達は嬉しそうな顔を変えて真剣な表情に変わえる。


「まだ先です。準備することが沢山あるので」

「分かりました、所で何か連絡が取れるものが欲しいですね」

「それは心配ありません魔石があるので」


 魔石とはなんだろうか。

 その説明を聞こうとしたところで、


「お料理を持ってまいりました」


 女性の鬼人達が食事を持ってきた。

 セナとマオがヨダレを垂らして目の前に置かれたものを見ている。


「これを食べてから魔石をお見せしますので」

「分かりました」


 そう言われ、持ってこられた食べ物を見る。

 それは何かの足だ。

 サソリだろうとは思うが、そう思えないほど太い。

 真ん中を割ってみると中にプリップリッの身が入っている。

 口の中に入れてみるとまるで溶けていくような感覚だ。


「おいしい……」


 地底の食べ物はものすごく美味しかった。

 横を見ても涙を流していること以外は同じような反応だ。

 ただ思っていたよりも量が多すぎる。

 これは食べるのに時間がかかりそうだな。

 俺は今この瞬間食べることだけに集中し、この絶品を味わった。
























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